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今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

近所のオバサンに興味はない

「先日の件です」といった大人しいタイトルのものから、「近所のオバサン」との出会いを斡旋してくるという、露骨にいかがわしいものまで、毎日毎日迷惑メールが届きます。
 タイトルを見て思うのは、圧倒的に男を対象にしているものが多いということです。送り手側はこちらの素性を知らずに送っているわけですから、男性対象のものと、女性対象のものとは同比率でもいいはずなのに、どう考えても前者が多い。
 これは普通に考えれば、男のほうが単純で助平だということでしょうし、多少善意で考えれば、男のほうが夢見がちだと言えるかもしれません。こういうメールは、何となく昔の少年雑誌の通販ページに似ている気がします。「洋服が透けて見えるX線メガネ」なんて、あるわけないのに、随分長い間、宣伝が出ていました。ごく一部に「ひょっとしたら……」と引っ掛かる人がいたのでしょう。
 なんにしても、近所のオバサンには興味がないので、もうこちらのことは放っておいてくれないか、と思います。

 10月刊の『迷惑メールは誰が出す?』では、迷惑メールの仕組み、歴史、対抗策まで実にわかりやすく解説しています。これまで見えない敵だった相手の素性、手口がわかるだけでも、かなりストレスは減るはずです。
 他の新刊3冊もご紹介します。
『源氏物語ものがたり』は、源氏の魅力にとり憑かれた男達のものがたりです。今日、私たちが読んでいる『源氏物語』は、実は紫式部一人で「完成」されたものではないことがよくわかります。現在の形となり、解釈が成立したのには、9人の「源氏オタク」とでも言うべき男達の努力がありました。
『だから混浴はやめられない』は、是非とも書店で手にとってみていただきたい一冊です。日本はもとより世界中の混浴を知り尽くした筆者(美人温泉ライター)のまさに体を張った写真が一際目を惹くはずです。
 最後の『手ごわい頭脳―アメリカン弁護士の思考法―』は、取り扱い注意の本かもしれません。何せ読み終えると、脳内の一部がアメリカの弁護士みたいになる危険性があります。つまり、ニュースや映画で目にする彼らのように、やたらと理屈に強くなり、タフな交渉力が身につくかもしれないからです。もちろん仕事には役立つのですが、友人や家族相手にこの力を使うと、まずいことも起こりえます。
 4冊ともタイトル、中味に偽りなしの作品です。

2008/10