新潮新書
新聞はよく外すなあ
夏になってくると参加する予定のロック・フェスティバルの出演者やタイムテーブルを見て、その日の行動計画を考えるのが楽しみです。仕事の合間にそういうことをして現実逃避をしています。
いい年をこいてくだらない。遠足前の子供か。そう言われれば返す言葉もありません。
しかし、このところの新聞の政治記事を読んでいると、やっていることは私と大差ないのではという気がしてしまいます。
前日の朝刊で「東国原知事、入閣へ」と書いておいて、それが実現しないと「心変わりした」と首相のせいにする。実際のところがどうなのかは知りませんが、客観的に見れば「こうなると面白いな」と想像して遊んでいるのと大差ありません。他人に迷惑をかけるという点では、新聞のほうが性質が悪い。
この数ヶ月で何度となく新聞は「解散予想」をしては外してきました。そのたびに、誰か(主に首相)のせいにします。しかし仮に首相の特徴が「変心」や「ぶれ」だとすれば、それも織り込んだうえで予想するのがプロなんじゃないか。外れた予想を他人のせいにするな。そう思えてなりません。
どうせわからないことを予想して遊ぶよりは、政治関係でもっとやっておくべき議論はたくさんあるのではないかと思うのです。
7月の新刊、『民主の敵―政権交代に大義あり―』は、民主党の若手リーダーである野田佳彦氏の初の著書。
自民党はどこでおかしくなったのか。民主党は大丈夫なのか。政権交代のメリットとは何か。大きな問いに野田氏が正面から答えています。といっても、堅苦しい話ばかりではなく、意外な経歴についての話や、裏話も満載。小沢前代表が民主党に合流したときのことを「モーニング娘。に天童よしみが加入したみたいだった」と表現するなど、絶妙の語り口も魅力です。
他の3冊もご紹介します。
『徒然草inUSA―自滅するアメリカ 堕落する日本―』(島田雅彦・著)。オバマと同い年の作家である島田雅彦氏は金融危機の真っ只中にアメリカに長期滞在をしていました。「オバマは八方美人の現実主義者である」「アメリカは自滅を志向する」「希望の原理は歴史にある」等々、アメリカの本質、日本の行く末について、箴言とも言うべき言葉がぎっしりと詰まっています。
『日本の治安』(後藤啓二・著)は、元警察庁キャリアによる力のこもった提言。警察の能力の低下がよく指摘されていますが、その背景には何があるのか。加害者の権利を重視しすぎる人たちが、警察に圧力をかけることによって無力化してしまい、結果として一般市民が不利益を被っているのではないか。あまり語られることのない、警察側の本音が書かれています。
『寝取られた男たち』(堀江珠喜・著)は、おそらく過去に類書がないであろう一冊。自分の女房を他所の男に寝取られたとき、男はどう行動するか(もしくはしないか)。古今東西の名作や、実話から、その行動パターンを分類。いざその立場になったときの参考書になるかどうかは保証の限りではありませんが、面白さは保証いたします。