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今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

セカチューの話

 新刊のタイトル、内容などの情報は大体発売の1か月くらい前から、ネット書店などに流れるようになっています。固定読者、ファンの多い著者の作品の場合、その段階で話題になることも珍しくありません。
 7月新刊『世界の中心でAIをさけぶ』(片山恭一・著)も、6月半ばすぎあたりから、一部ネット上では話題になっていたようです。その理由は、著者があの大ベストセラー『世界の中心で、愛をさけぶ』と同一だからでしょう。「セカチュー」は流行語にもなり、さまざまなパロディも当時作られたはず。空港で叫ぶシーンを模したコントなんかもあった気がします。大抵、平井堅さんの名曲が同時に流れる。
 それでも、まさか本家本元からこういうタイトルが飛び出るとは......というのはきわめてノーマルな反応です。
 しかし、内容は決して小説のパロディでもありませんし、ふざけたものでもありません。担当者が書いた内容紹介を読めばよくわかるはずです。
「世界に新しい宗教が生まれつつある。その名は『シンギュラリティ』。急速に進化する人工知能がやがて人間知を超えたとき、人間存在の意味はどこに見いだせるのか。
ビッグデータとアルゴリズム、AIが支配するデジタルテクノロジーの中心地アメリカ西海岸を旅しながら、変わりゆく人々の思考様式、労働と民主主義の価値、国家と企業の未来像を見つめる。ベストセラー作家が深く問う、AI時代の人間の意味論」
 アメリカというまさに「世界の中心」で「AI」について考えぬいた斬新な論考。そう考えるとタイトルがふざけたものではないことはご理解いただけるのではないでしょうか。

 他の3点もご紹介します。

2019/07