新潮新書
現役の話
キングカズこと三浦知良選手(横浜FC)が、今年はJ1に帰ってきます。13年ぶりです。2月26日には53歳になるのだから驚異としか言いようがありません。
その肉体を支えているのは日頃の鍛錬です。三浦選手自身が著者である2月新刊『カズのまま死にたい』にはこうあります。
「未明に起床して朝走りに出るのが、おっくうに感じるときもある。気が乗らないときも。でもそこで多少苦しくとも、やらないといい思いはできないぞと体のどこかで分かっている。つまり世の中、苦しみも楽しみも紙一重ということだね」
時にコーチに「やり過ぎだ」と注意されても、全力でやりきる。その姿勢があるからこそ、今なお現役でいられるのでしょう。
同じような年代なのに、スマホの歩数計を見て1万歩超えている程度で、「今日は俺、よく歩いたな」と自分を褒めている私とは途方もないレベルの違い。
『カズのまま死にたい』を読むと、同世代として自らを恥ずかしく思いながらも、励まされます。J1での活躍も心からお祈りしています。
他の新刊3点もご紹介します。
『心臓によい運動、悪い運動』(古川哲史・著)は、三浦選手ではなくて私のような人間のためにお医者さんが最新の知見も踏まえてアドバイスをしてくれる1冊。階段は1段飛ばしではなく1段ずつ上ったほうが心臓には良いのだそうです(ヒップアップを目指すのなら別)。また、格別な運動をしなくても家事で意識して動くだけで結構な運動になることもわかり、励まされました。
三浦選手がオープニングセレモニーに登場して、最初にピッチに足を踏み入れたアスリートとなった新しい国立競技場の設計を担当したのが隈研吾さん。
『ひとの住処―1964-2020―』は、隈さんの半自伝的な建築論にして文明論です。前回の東京五輪の頃に少年だった隈さんは、東京につくられる斬新で巨大な建物に魅了されます。建築家を志したのは代々木体育館(丹下健三設計)の斬新さに触れたことがきっかけでした。その隈さんが、今回の国立競技場を手掛けるようになるまでの半生を振り返りながら、人間にとって建築とは何かを語ります。
成長物語として、また成功物語としても楽しめます。
『210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ―ペット探偵の奮闘記―』(藤原博史・著)も、物語として楽しめる当事者ノンフィクション。著者の藤原さんは、いなくなったペットを探すペット探偵で、その仕事ぶりはたびたびメディアでも取り上げられているのでご覧になった方も多いかと思います。
「家族」がいなくなって慌て、悲しみ、途方にくれる人たちから丁寧に話を聞き、手掛かりを探り、迷子を見つけるまでの物語はミステリータッチでもありますが実に感動的です。また、実際に探す際のコツも公開しているので、ペットを飼っている方にはとても役に立つでしょう。
『カズのまま死にたい』にはこんな言葉もありました。
「何事も、僕は常に、物足りない。もっとやりたい」
爪の垢を煎じて飲みながら、今年も新刊を出していきます。
今月もよろしくお願いします。
その肉体を支えているのは日頃の鍛錬です。三浦選手自身が著者である2月新刊『カズのまま死にたい』にはこうあります。
「未明に起床して朝走りに出るのが、おっくうに感じるときもある。気が乗らないときも。でもそこで多少苦しくとも、やらないといい思いはできないぞと体のどこかで分かっている。つまり世の中、苦しみも楽しみも紙一重ということだね」
時にコーチに「やり過ぎだ」と注意されても、全力でやりきる。その姿勢があるからこそ、今なお現役でいられるのでしょう。
同じような年代なのに、スマホの歩数計を見て1万歩超えている程度で、「今日は俺、よく歩いたな」と自分を褒めている私とは途方もないレベルの違い。
『カズのまま死にたい』を読むと、同世代として自らを恥ずかしく思いながらも、励まされます。J1での活躍も心からお祈りしています。
他の新刊3点もご紹介します。
『心臓によい運動、悪い運動』(古川哲史・著)は、三浦選手ではなくて私のような人間のためにお医者さんが最新の知見も踏まえてアドバイスをしてくれる1冊。階段は1段飛ばしではなく1段ずつ上ったほうが心臓には良いのだそうです(ヒップアップを目指すのなら別)。また、格別な運動をしなくても家事で意識して動くだけで結構な運動になることもわかり、励まされました。
三浦選手がオープニングセレモニーに登場して、最初にピッチに足を踏み入れたアスリートとなった新しい国立競技場の設計を担当したのが隈研吾さん。
『ひとの住処―1964-2020―』は、隈さんの半自伝的な建築論にして文明論です。前回の東京五輪の頃に少年だった隈さんは、東京につくられる斬新で巨大な建物に魅了されます。建築家を志したのは代々木体育館(丹下健三設計)の斬新さに触れたことがきっかけでした。その隈さんが、今回の国立競技場を手掛けるようになるまでの半生を振り返りながら、人間にとって建築とは何かを語ります。
成長物語として、また成功物語としても楽しめます。
『210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ―ペット探偵の奮闘記―』(藤原博史・著)も、物語として楽しめる当事者ノンフィクション。著者の藤原さんは、いなくなったペットを探すペット探偵で、その仕事ぶりはたびたびメディアでも取り上げられているのでご覧になった方も多いかと思います。
「家族」がいなくなって慌て、悲しみ、途方にくれる人たちから丁寧に話を聞き、手掛かりを探り、迷子を見つけるまでの物語はミステリータッチでもありますが実に感動的です。また、実際に探す際のコツも公開しているので、ペットを飼っている方にはとても役に立つでしょう。
『カズのまま死にたい』にはこんな言葉もありました。
「何事も、僕は常に、物足りない。もっとやりたい」
爪の垢を煎じて飲みながら、今年も新刊を出していきます。
今月もよろしくお願いします。
2020/02