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今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

通常回帰していく世の中で

 4年ぶりの「ほぼ制限のない」大型連休が終わり、新型コロナも季節性インフルエンザと同じ「5類」移行が実施されました。厚労省などは次の流行に備えて、引き続き「新しい生活様式」を続けることが大事とは強調するものの、こうした呼びかけにこれまで通り反応する向きは相当少なくなりそうです。もっとも、平時であればこそ、大して興味や関心を抱かれることがないのが行政というものかもしれません。
 5月新刊『交通崩壊』(市川嘉一・著)は、専門ジャーナリストが「交通カオス」の原因を分析。儲からないローカル線が次々廃止される一方で路面電車の導入は進まない。道路の管轄権を警察が握るためまちづくりや地域活性化は二の次で、自転車道が確保されないままに自転車やキックボードの歩道乗り上げは野放し――など、交通政策の定見のなさを鋭く解き明かします。言われてみれば全くその通り、という指摘にあふれた熱い提言です。
幸福な退職―「その日」に向けた気持ちいい仕事術―』の著者は激務で知られる広告業界で働きながら音楽評論家として活動し、10冊を超える著作を発表してきたスージー鈴木氏。今回は、著者が考え、実践してきた会社員の極意を惜しみなく披露します。「2枚目の名刺」「65点主義」「ですよね力」――会議や企画書作成、プレゼンから組織内での理想的ふるまい方まで会社員として数々の「冴えた方法」、そしてすべての道は、55歳での楽しい早期退職へと至るのでした。
世界史の中のヤバい女たち』(黒澤はゆま・著)は新進の小説家による異色の歴史エッセイ。多くが権力者や功績ある男性目線で紡がれてきた歴史の中にも、男どもをも震撼させる強く激しい生きざまを貫き、世界を変えた女性たちがいました。アステカ王国を滅ぼした17歳、女戦士部族アマゾーン、ウクライナの聖人オリハ、冷徹な天使ナイチンゲール、非情冷徹を貫いた中国三大悪女・呂后など"女性ヒーロー"の10人の闘いの物語です。
失礼な一言』(石原壮一郎・著)は、家庭や職場、交友など人間関係において、悪気はなくてもふとしたことで湧きあがる「失礼」な発言や行為を次々俎上にあげ、平和で穏やかに過ごしていくための心得を授けます。年賀状や飲み会、メールや日常会話、志向や属性の問題......アナログ思考がもたらす妄言やポリコレ的にNGの失言など、世の中も対人コミュニケーションも通常回帰していくこの頃、あらためて知っておきたい40のレッスンです。
2023/05