新潮新書
書き下ろし信仰
昔から出版の世界では「書き下ろし」というと、連載をまとめたものや聞き書きよりも格上、みたいな感じがあります。しかし、ブッダもキリストも、孔子もソクラテスも、自分自身では何も書き残してはいません。経典の類いはいずれもその弟子たちが伝聞や対話をまとめたもので、当然ながら、後世には辻褄の合わないことも出てきます。
『言い訳するブッダ』(平岡聡・著)は、「眠らないはずのブッダはどうやって夢を見たのか」「禁止されたはずの仏像が作られたワケ」「肉食禁止の抜け道」「方便だらけの大乗仏教」――等など、仏教の教えにある数多くの「矛盾」を、ユーモアを交えてひもときます。矛盾を解消しようと、先人たちが懸命に積み重ねてきた「言い訳」。それらは布教のための涙ぐましい努力の跡であり、進化の足跡でもあるのです。
今、職場の悩みの8割は人間関係といわれます。そして、その多くは「ことば」に由来します。『聞いてはいけない―スルーしていい職場言葉―』(山本直人・著)は、会社でよく耳にする「職場言葉」が、実は揉めごとの原因になることを丹念に解き明かします。「評判悪いよ」「大丈夫か」「やればできる」......こうした困った言葉をどう聞き流すか、あるいは言い換えるのか、言葉のストレスから解放される方法を提示します。
『がんの消滅―天才医師が挑む光免疫療法―』(芹澤健介・著、小林久隆・医学監修)は、多くのサイエンティストを「エレガント」と唸らせ、楽天創業者・三木谷浩史氏をして「おもしろくねえほど簡単だな」と呟かせた「第五のがん治療法」について徹底取材。ノーベル賞級ともいわれる画期的発見はいかにして生まれたのか、天才医師の生い立ちから治療の現在地まで、全容を描き出す医療ノンフィクションです。
『ウクライナのサイバー戦争』(松原実穂子・著)は、この分野きっての専門家が、ウクライナ戦争をサイバーの面から徹底解説。もともと「サイバー意識低い系」だったウクライナが、政府機関データのクラウド化、米軍との連携やIT軍の結成など、いかにして短期間でサイバーディフェンスを強化し、戦闘を継続しているのか、その実状を描きます。予想される台湾有事への日本の「教訓」としても、この時代に読むべき好著です。
以上、今月の新刊4冊はいずれも「書き下ろし」作品です。
『言い訳するブッダ』(平岡聡・著)は、「眠らないはずのブッダはどうやって夢を見たのか」「禁止されたはずの仏像が作られたワケ」「肉食禁止の抜け道」「方便だらけの大乗仏教」――等など、仏教の教えにある数多くの「矛盾」を、ユーモアを交えてひもときます。矛盾を解消しようと、先人たちが懸命に積み重ねてきた「言い訳」。それらは布教のための涙ぐましい努力の跡であり、進化の足跡でもあるのです。
今、職場の悩みの8割は人間関係といわれます。そして、その多くは「ことば」に由来します。『聞いてはいけない―スルーしていい職場言葉―』(山本直人・著)は、会社でよく耳にする「職場言葉」が、実は揉めごとの原因になることを丹念に解き明かします。「評判悪いよ」「大丈夫か」「やればできる」......こうした困った言葉をどう聞き流すか、あるいは言い換えるのか、言葉のストレスから解放される方法を提示します。
『がんの消滅―天才医師が挑む光免疫療法―』(芹澤健介・著、小林久隆・医学監修)は、多くのサイエンティストを「エレガント」と唸らせ、楽天創業者・三木谷浩史氏をして「おもしろくねえほど簡単だな」と呟かせた「第五のがん治療法」について徹底取材。ノーベル賞級ともいわれる画期的発見はいかにして生まれたのか、天才医師の生い立ちから治療の現在地まで、全容を描き出す医療ノンフィクションです。
『ウクライナのサイバー戦争』(松原実穂子・著)は、この分野きっての専門家が、ウクライナ戦争をサイバーの面から徹底解説。もともと「サイバー意識低い系」だったウクライナが、政府機関データのクラウド化、米軍との連携やIT軍の結成など、いかにして短期間でサイバーディフェンスを強化し、戦闘を継続しているのか、その実状を描きます。予想される台湾有事への日本の「教訓」としても、この時代に読むべき好著です。
以上、今月の新刊4冊はいずれも「書き下ろし」作品です。
2023/08