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今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

生きる姿勢のレッスン

 今、週刊誌を読んでいて健康に関する記事が載っていないことはまずありません。もちろん、健康法の歴史はとても古くて長いもので、日本でも古来さまざまな方法が伝えられてきました。中でも有名なのは江戸中期の貝原益軒「養生訓」ですが、医科学知識が限られた時代に、自身をある種の実験素材にした綿密なレッスンは、個々の実効性よりも、生命を最大限に生かそうとする姿勢において、現代人が学ぶべきものかもしれません。
名医・専門家に聞く すごい健康法』(週刊新潮・編)は、コロナ禍を挟んでこの数年間に掲載されてきた医療・健康記事のなかから、「これは」というものを厳選。がんや認知症、誤嚥性肺炎、不眠やフレイルなど重大な病気の予防や症状の改善について、13人の専門家が教えます。近年は平均寿命が延びる一方で、健康寿命との差=病気で生活の自由がきかない期間が延びています。できるだけ「健康に長生き」するにはどうしたらいいのか――最新の知見をふまえたさまざまなレッスンは、現代版・養生訓の趣きがあります。
引きこもりの7割は自立できる』(二神能基・著、久世芽亜里・著)は、この問題に長年、現場で取り組んできた著者らによる渾身の一冊。今や日本人の100人に1人が引きこもりとは衝撃的ですが、彼らを再び社会参加させるには一体どうすればいいのか――このままでは社会機能が維持できなくなる、とは少子化をめぐる総理の発言ですが、「8050問題」もまた、一刻の猶予もならないリアルな課題なのです(詳しくは「編集部便り」参照)
 そして今月のイチ推しは『男と女―恋愛の落とし前―』(唯川恵・著)。登場するのは36歳から74歳までの中高年女性12人。その多くが不倫関係ですが、それぞれの家庭事情と立場から、恋愛関係の始まりと経過と現在までを語ります。ときに身も蓋もない告白を聞きながら、恋愛小説の名手は「恋する女のメンタル」を冷徹に裁断していきます。「恋愛は成功と失敗があるんじゃない。成功と教訓があるだけ」――大人の恋に浮かれる人にも、不倫の愛に悩む人にも、人生を狂わせた人にも、珠玉の名言にあふれた「修羅場の恋愛学」の誕生です。
2023/10