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お知らせ

 安東能明が改めて注目される契機となったのが、『撃てない警官』。 日本推理作家協会賞に輝く「随監」を含むこの警察小説集で、94年デビューのベテラン作家は新たなステージに立ちました。 以降、安東氏は、柴崎警部シリーズをコンスタントに上梓し続けています。
 シリーズの魅力は、"地味に凄い"柴崎令司警部に加え、さまざまな個性の警察官たちが次々と加わってゆくところ。柴崎の上司である坂元真紀・綾瀬署署長は生真面目に正義を追い求め、解決のためなら先輩キャリアに直談判することも辞さない女性です。
 警察手帳紛失で躓いてしまった、盗犯第二係・高野朋美巡査は、持ち前の勘と粘り強さで次第に先輩刑事たちに認められる存在に――。
 そして今作では、上河内博人警部が刑事課長代理として着任しました。本庁捜査二課から来た彼は、軽口ばかり叩く、綾瀬署にこれまでいなかった陽性のキャラクターですが、実は、事件が起きるととことんのめり込む、根っからの刑事です。
 そんな彼に相棒として指名されたのが、内勤のプロである警務課長代理の柴崎。上河内はどうも、柴崎には捜査員としての才能があると考えているようなのです。
 新たな血を加え、さらにパワーアップした綾瀬署。本作で警察小説の醍醐味をたっぷり味わってください。

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2018年01月15日   お知らせ / 今月の1冊

 空也といえば、京都・六波羅蜜寺の空也上人像が有名ですが、実際の生涯はほとんど知られていません。歴史作家の梓澤要さんは、有名な親鸞や法然ではなく、なぜ謎めいた僧、空也を描いたのか。
「空也上人は、親鸞の250年以上も前に登場し、踊り念仏の一遍に大きな影響を与え、浄土教の先駆けと言われる人なのです。教団を作らず、生涯市井の民と生きた異色の人ですが、醍醐天皇の血筋をひくともいわれます。高僧が庶民のために祈るなど考えられない時代でした。生き方として非常にドラマティックなのですね」
 虐待を受け左肘に治らぬ傷を負った少年時代、東国への修行遍歴、平将門との出会い。のちに将門の獄門首に念仏を捧げる姿は、念仏を唱えれば大悪人でも救われるはずだと説いた空也の真骨頂です。
 なぜ、空也は辻に立ち念仏を唱え続けたのか。なぜ、すべてを捨てて、庶民のために生涯を捧げることができたのか。欲も恨みも、絶望さえも、すべて認めてすべて捨てよと説いた空也。まさに『捨ててこそ 空也』の面目躍如たる言葉がちりばめられた本書は、大きな感動を誘わずにはおかない歴史小説です。
 

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2017年12月15日   お知らせ / 今月の1冊

 佐々木譲さんの「警官の血」二部作、今野敏さん「隠蔽捜査」シリーズ安東能明さん「撃てない警官」シリーズ......。精鋭揃いの新潮文庫に、また強力な警察小説が加わりました。『ドッグ・メーカー―警視庁人事一課監察係 黒滝誠治―』。
 著者の深町秋生さんは、 「このミステリーがすごい!」大賞を受賞して、2005年作家デビュー。 2011年スタートの「組織犯罪対策課八神瑛子」シリーズは40万部超のベストセラーとなっています。 キャラクター造形とアクション・シーンに定評のある、いま最も注目されている、ミステリ作家です。

 今作の主人公は、事件関係者の首に縄をつけ情報収集を行わせるという強引な手法から、 ドッグ・メーカーと呼ばれる男、黒滝誠治。刑事ではなく、「警察の中の警察」として警察官の犯罪に目を光らせる、 監察です。希代の"寝業師"白幡警務部長、美しくも根性のすわったキャリア相馬美貴警視と共に、 黒滝は警視庁内に巣食う凶悪な人物と対決します。600頁を超える大作ながら、 一気読み必至。ダーク・ヒーロー・黒滝誠治が巻き起こす物語の激流に身を任せてください。

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2017年08月15日   お知らせ / 今月の1冊

 最近、この人の文庫を書店でよく目にしませんか?
江上剛さん。『怪物商人』『家電の神様』『庶務行員 多加賀主水が許さない』などなど、ビジネスマンの胸を熱くする小説でヒットを連発しています。

 新潮文庫6月の新刊『特命金融捜査官』も絶好調で、発売後すぐに増刷となりました。

 江上さんは、早稲田大学政治経済学部を卒業した後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行しました。広報部次長だった1997年、第一勧銀の総会屋への利益供与が発覚します。逮捕者は11人に及び、元会長が自殺するという、衝撃的な金融事件を覚えている方も多いでしょう。このとき混乱収拾の最前線に立ち、行内改革を訴えた「改革4人組」のひとりが江上さんでした。未曾有の経済疑獄の真っ只中にいたのです。

 事件後、支店長に昇進した江上さんは『非情銀行』で作家デビュー。作家と支店長の「二足の草鞋」を経て、2003年に作家専業になりました。数多くの作品を世に送り出し、最近はフジテレビ「みんなのニュース」のレギュラーコメンテーターとしてもお馴染みです。

 江上さんの文庫最新長編『特命金融捜査官』は、ひとりの男が失踪するところから始まります。その男は、主人公の伊地知耕介がマークしているベンチャー銀行の専務でした。不正の証拠を握って消えた男を追って、銀行幹部、闇の暴力組織、そして伊地知は沖縄の離島に飛びます。

 伊地知耕介は、金融庁長官の特命を受けて、金融事件の捜査権限を持ち、拳銃の所持も認められた「特命金融捜査官」。現実には存在しない架空の役職です。このキャラクターを作り出した意図を江上さんはこう説明しています。

「これだけ金融にまつわる事件が多発している今、麻薬取締官のように潜入捜査をしたり、大きな事件の発生を未然に防ぐために、組織の枠を超えて動くスーパーパワーを持った人がいてもいいんじゃないか。そんな思いで描いてみました」
江上 剛/人を再生させる島 「波」2015年6月号より →全文へ

 金融の世界の裏も表も知り尽くした経済小説の名手、江上剛が生み出したニューヒーロー伊地知耕介が活躍するエンターテインメント小説『特命金融捜査官』をお楽しみください。

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2017年06月15日   お知らせ / 今月の1冊

 時代小説といえば、剣の達人や武士道の世界というのがお決まりのイメージ。でも、 本当に「侍らしい侍」なんていたのでしょうか? じつは江戸の中期は、剣に生きる 人生など過去の価値観となっていました。「武士の一分」よりも、藩政改革や財政立 て直しを要求され、武士の筋目を通さんとすれば、組織に縛られ裏切られ、挙句に身 をやつして用心棒で生計を立てる侍も出てきます。

 直木賞作家・青山文平さんは、 そんな時代を「型通りの生き方が通用しなくなった時代」と捉えています。 「侍らしさ」など全く頼りにならない時代に、侍たちはいかに、自身の人生を掴み取ったか。 青山さんは、「正解」などない人生の岐路と、それぞれの決断を描いていきます。

 友を斬れという重い藩命を受けた男を描く表題作をはじめ、 行き倒れの侍を介抱したことから劇的な結末を迎える「三筋界隈」や、 城内の苛めで出仕できなくなった若侍が再生する「夏の日」など、いまの私たちの隣にいても 不思議でない侍たちの息づかいが伝わる傑作六篇です。

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2017年05月15日   お知らせ / 今月の1冊