大ヒットシリーズとなった『店長がバカすぎて』や新境地にして新たな代表作と絶賛された『八月の母』など、大躍進中の早見和真さん。そんな早見さんの飛躍作となったのが、2020年に山本周五郎賞、JRA賞馬事文化賞をダブル受賞した『ザ・ロイヤルファミリー』です。本作が今月文庫化され、早くも重版が決まりました。
父を亡くし、空虚な心を持て余す税理士の栗須栄治はビギナーズラックで当てた馬券がきっかけで、人材派遣会社「ロイヤルヒューマン」のワンマン社長・山王耕造の秘書として働くことに。競馬に熱中し、馬主として〈ロイヤル〉の名を冠した馬の勝利を求める山王の情熱に引きずられるようにして、栗須もまた有馬記念への夢を追いかけます。山王と栗須、そして彼らの家族の20年を描く、大河エンターテインメント長編です。
「おっ、競馬の話なのか!」と思った方はもちろん、「なんだ、競馬の話か(自分には関係ないな)」と思った方にも(もしかしたら、そんな方にこそ)、ぜひ読んでいただきたい小説です。なぜなら、本作は競馬を描くと同時に、競馬を通して「家族」という、最も親密で、最も難解な関係性を描いているからです。
強烈な個性と先見の明をもつ山王ですが、家庭人としては「いい夫」とは言えません。自分勝手で強情、だけど揺るぎない信念で突き進んでゆく。妻や部下ら、たくさんの人が彼から離れていきますが、山王のそんな生き方が、〈ロイヤル〉の名前を冠した馬に思わぬ奇跡をもたらす遠因となります。
山王とその息子、そして競走馬「ロイヤルホープ」とその息子「ロイヤルファミリー」、二組の息子のドラマに胸が熱くなり、最後の1ページまで興奮が高まりつづける極上の読書体験をお約束します。