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生誕100年。池波正太郎の「真田もの」の原点となる長編小説が新潮文庫に


「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」シリーズなど、大人気時代小説を数々手がけ、旅や食、映画といった人生の楽しみを味わう名エッセイも多く残した、大作家・池波正太郎。今年2023年は、池波正太郎の生誕100年にあたります。
 100周年を記念してこのたび新潮文庫から刊行された作品が『まぼろしの城』です。新潮文庫には、激動の戦国時代を生き抜いた真田昌幸、幸村、信之の親子を描いた大河小説『真田太平記』全12巻をはじめ、直木賞を受賞した「錯乱」が収録された『真田騒動―恩田木工―』、『真田太平記』の後日譚に当たる『獅子』などの、いわゆる「真田もの」が集められていますが、この『まぼろしの城』は、実は『真田太平記』の前日譚とも呼べる作品です。

 舞台は上野国、沼田城。城主であり猛将と謳われた沼田万鬼斎は、我が子を跡取りにと目論む愛妾であるゆのみと、その父親である金子の奸計によって、一族に混乱を引き起こします。跡取り争いに巻き込まれた城はやがて、上杉謙信、武田信玄、そして真田昌幸らの狙うところとなり......。戦国時代の波にさらわれる一族の栄枯盛衰をドラマチックに描き、ラストでは『真田太平記』でも大いに発揮された真田昌幸のしたたかな存在感が強い印象を残します。
 池波にとってはライフワークでもあった「真田もの」の原点として、ファンは必読の戦国エンタテインメント作品。生誕100年を迎えた池波正太郎の世界にどっぷりはまるきっかけになる一冊です。

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2023年01月16日   今月の1冊
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