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今月の表紙は保坂和志さん。

波 2018年8月号

(毎月27日発売)

102円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2018/07/27

発売日 2018/07/27
JANコード 4910068230881
定価 102円(税込)


阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第11回
保坂和志『ハレルヤ』
山下澄人/読むといいことが起こる

円城 塔『文字渦』
華雪/うつろう文字

【『ふたりぐらし』刊行記念インタビュー】
桜木紫乃/毎日出会って、毎日別れて

ジョゼ・ルイス・ペイショット、木下眞穂/訳『ガルヴェイアスの犬』
滝口悠生/幸福な悲しみ

柴崎友香『公園へ行かないか? 火曜日に』
藤野可織/特別な時間から新しい特別な時間へ

畠中 恵『むすびつき』
平野 良/僕たちの〈かえるとこ〉。

滝田愛美『この血の流れ着くところ』
吉田伸子/ただしいことと、ただしくないこと

加藤 廣『秘録 島原の乱』
末國善己/衝撃の展開が待つ遺作長篇

永井紗耶子『大奥づとめ』
東えりか/「上がり」はそれぞれ違う場所

五木寛之『七〇歳年下の君たちへ―こころが挫けそうになった日に―』
西尾慧吾/人そのものと向き合う力

細谷雄一『戦後史の解放II 自主独立とは何か 前編―敗戦から日本国憲法制定まで―』『戦後史の解放II 自主独立とは何か 後編―冷戦開始から講和条約まで―』
篠田英朗/「国際主義」に生きた日本人たち

廣末 登『ヤクザの幹部をやめて、うどん店はじめました。―極道歴30年中本サンのカタギ修行奮闘記―』
鈴木智彦/暴力団排除が進む社会のモザイク模様

益田ミリ『マリコ、うまくいくよ』
大久保佳代子/まるで私自身――愛おしい3人のマリコたち

[特別寄稿・東京滞在記]
バリー・ユアグロー、柴田元幸訳/コンビニ/新橋

[特別企画・映画評]
森 卓也/「毛虫のボロ」とボロギクと

[『高畠素之の亡霊―ある国家社会主義者の危険な思想―』刊行記念講演]
佐藤 優/マルクス・エンゲルス・そして高畠素之

[アンケート]わたしの選んだ「新潮文庫」5冊
角田光代
堀江敏幸
朝井リョウ
宮内悠介
平松洋子
野村 進『千年、働いてきました―老舗企業大国ニッポン―』(新潮文庫)
楡 周平/会社が生き残るのには理由がある
【コラム】
浦久俊彦『悪魔と呼ばれたヴァイオリニスト―パガニーニ伝―』
浦久俊彦/悪魔がスーパースターになった時代(新潮新書)

関根虎洸『遊廓に泊まる』
関根虎洸/元遊廓の転業旅館を訪ねて(とんぼの本)

とんぼの本編集室だより
【連載】
[新連載]大塚ひかり/女系図でみる日本争乱史
ブレイディみかこ/ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 第8回
伊藤比呂美/URASHIMA 第3回
末盛千枝子/根っこと翼・皇后美智子さまに見る喜びの源 第8回
堀部安嗣/ベーシックハウスを考える 第4回
津村記久子/やりなおし世界文学 第51回
山下洋輔/猛老猫の逆襲 山下洋輔旅日記 第29回
瀧井朝世/サイン、コサイン、偏愛レビュー 第101回
川本三郎/荷風の昭和 第3回

編輯後記 新潮社の新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙は保坂和志さん。

◎今年の川端康成文学賞(賞の規定は「審査の対象は短篇小説とし、その年度における最も完成度の高い作品に授賞します」)は、保坂和志さんの「こことよそ」におくられました。昨年は円城塔さんの「文字渦」。それぞれが収録された短篇集『ハレルヤ』と『文字渦』が揃って今月刊行です。
◎試みにこの受賞作ふたつを続けざまに読んでみると、独立して読むのとはまた違った面白さを感じたり、さまざまに考えるヒントを与えられたので、今度は『川端康成文学賞全作品Ⅰ』『同Ⅱ』(小社刊)を古本屋で買ってきました。1974年から98年までの受賞作三十三篇を纏めたもの。
◎第一回上林暁「ブロンズの首」、第二回永井龍男「秋」……と読み進めていき、富岡多恵子「立切れ」、和田芳恵「雪女」、開高健「玉、砕ける」、野口冨士男「なぎの葉考」のあたりの連打にはうっとりとなってきます。ここでまだ一冊目の前半。難を挙げれば、あの手この手の名作揃いで、いわばテンションが常に高く、読み続けると少し疲れてくること。吉行淳之介さんや大江健三郎さんなどの選評も、色川武大さんや筒井康隆さんたちの受賞の言葉も読みごたえあり。
◎川端賞を辞退したのが「みちのくの人形たち」の深沢七郎さん。これは名品中の名品ですが、お経のような折帖仕立の私家版が作られており、内容と相俟って抜群の効果をあげています。やはり深沢さんの名作「秘戯」(鈴木清順監督「陽炎座」に巧く嵌め込まれています)にも私家版があって、あちらがタナトスなら、こちらはエロスで……。
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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。