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今月の表紙の筆蹟は、宮本輝さん。

波 2018年10月号

(毎月27日発売)

102円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2018/09/27

発売日 2018/09/27
JANコード 4910068231086
定価 102円(税込)

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編輯後記 新潮社の新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、宮本輝さん。

◎他愛のない連想ですが、完結した宮本輝さんの大河小説「流転の海」全九冊を積み上げて、第一部からタイトルを眺めていると、まるで交響曲全集だなあと思えてきます。九つというのがベートーベンやブルックナーなどの交響曲の数と同じだし、もう一つ、『仁義なき戦い』の脚本家笠原和夫さんの言葉を思い出したからでもあります。
◎「わたしは脚本というものをしばしば交響曲にたとえたくなる。(略)部分部分にさまざまなメロディがありながら、通して聞き終わった時に、細部のメロディを超越した何がしかの残響を聴衆の心に伝えるシンフォニーのような脚本がわたしの理想なのだ。(略)残響を響かせるためには、きっちり起承転結が整っては駄目で(起承転結が整うと「これでおしまい」にしかならず、残響が鳴り響かない)、結の部分がわずかに(美的に許される程度に)開かれていることが望ましい」(『映画はやくざなり』)。
◎これは脚本のみならず、長い小説についても当てめることができる名言ですが、「流転の海」第九部『野の春』を読み終えた時、まさに「物語の円をぎりぎり閉じきらないコーダ」(『映画は〜』)を聴き取ったように感じたのです。本を閉じても、登場人物たちが(作中で死を迎えた人物であろうと)今なお私たちのすぐ隣で息づいているような、私たちと一緒に先の見えぬ未来へ足をおずおずと(あるいは敢然と)踏み入れているような心持になりました。
◎「細部のメロディ」という意味では、とりわけ第二部『地の星』末尾の房江(主人公の妻)が川で鮒を手掴みでとる場面が忘れ難いのですが、あまりに印象深くて、それを損なうのが怖いので読み返せずにいます。
▽次号の発売は十月二十六日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。