松浦寿輝「名誉と恍惚」(新連載小説)
新潮 2014年5月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2014/04/07 |
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JANコード | 4910049010549 |
定価 | 947円(税込) |
【新連載】
[150枚]
[第二回・120枚]
第二十二回・熊本ズームイン/石川直樹
第一一八回・残像の色温度
・水泳と私/小笠原豊樹 ・景色だけが変わり、未来は過去になる 追悼・大瀧詠一/青山真治
・西武池袋線の耳人間/滝口悠生
・東京のタワーと沖縄のフェンス/ミヤギフトシ
・松浦寿輝『川の光2』/安藤礼二
・山下澄人『コルバトントリ』/澤西祐典
・ブライアン・エヴンソン(柴田元幸訳)『遁走状態』/神 慶太
・松波太郎『LIFE』/富岡幸一郎
・松田青子『英子の森』/内藤千珠子
編集長から
松浦寿輝「名誉と恍惚」

松浦寿輝氏の連載小説「名誉と恍惚」を開始する。舞台は一九三七年の魔都・上海。一人の日本人の男が橋を渡る。その橋は、帝国主義諸国の外国人が居留する共同租界(インターナショナル・セトルメント)と日本軍占領区域を結ぶ。だから、橋の上を歩く日本人は「国際」の場と「国粋」の場の中間にいて、今まさに後者へと歩んでいるのだ。彼は何者なのか? それは発表後の楽しみのために伏せておこう。冒頭の数頁を読んだだけで、このスリリングな歩みが、小説家としての氏の新境地を示すはずの本作の最後まで途切れないことを読者は予感するだろう。さらに読者はすでに自らが三つの「橋」の上にいることを実感するはずだ。支那事変から日中戦争へと進む歴史=物語の橋。世界のそこここで緊張状態が高じ日々激動する現在の橋(私たちは当事者だ)。そして、禍々しい予兆を否認しがたい私たちの未来への橋……。はたして橋の向こう側に何が待っているのか? その冒険を読者と共有できることが楽しみでならない。

バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。