新連作小説 高山羽根子「ローレライ」
新連載評論 森田真生「数学する惑星」
未発表原稿 ドナルド・キーン「三十七年後の日本」
新潮 2024年10月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2024/09/06 |
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JANコード | 4910049011041 |
定価 | 1,200円(税込) |
◆ローレライ[新連作小説]/高山羽根子
技術が発展しても、人は自らの足で山頂を目指すのか。崇高な問いに挑む、近未来登山SF。
◆七月三十一日晴れ/今村夏子
漁港のホテルで働くワケありの女たち。新参の藤野さんを巡る噂話から、物語が動き出す。
◆すべてを抱きしめる[二三〇枚]/鴻池留衣
「ラブリーの素」を飲んだら、世界の仕組みが見えてきた。教え子の死、彼女との関係。正気と狂気の間で思考する、令和のサイケ文学!
◆安いボート/SHUN
六歳の夏、「おしっこ見せて」と言われた少年は――歌舞伎町の歌人、鮮烈な文芸誌初登場。
■■ 連載小説 ■■
◆生活 第二部(十二・完)/町屋良平
◆Ifの総て(四)/島田雅彦
◆湾(五)/宮本 輝
◆荒れ野にて(七十八)/重松 清
【リレーコラム】街の気分と思考(32)
◆予言を聞く顔/マーサ・ナカムラ
◆京都へ行くつもりじゃなかった/ゆっきゅん
■■ 新潮 ■■
◆しゃべりを超えていくために/つやちゃん
◆安くなった国で/pha
◆なぜ『源氏物語』は読まれ続けるのか/三宅香帆
◆未知なる贈り物/八木詠美
◆日々プチ混乱/山中瑶子
第56回《新潮新人賞》予選通過作品発表
第57回《新潮新人賞》応募規定 [ウェブ応募受付中!]
【選考委員】上田岳弘/大澤信亮/小山田浩子/金原ひとみ/又吉直樹
◆数学する惑星[新連載評論]/森田真生
第一回 地球の言葉で考える
地球を統合システムと捉え、行動変容の可能性を探る。数学の力を借りた壮大なスケッチ。
◆【対談】旅のさびしさ、「私」の自画像/佐伯一麦 松浦寿輝
風景と時間、古井由吉と「老い」の認識――記憶の断片を繋ぎ、人生という旅を語り合う。
◆【未発表原稿】三十七年後の日本/ドナルド・キーン 訳・序説 角地幸男
遺品整理で発見された幻の随筆には、日本文学に生涯を捧げた男の孤立感が刻まれていた。
◆試練の予感――『つながる私』展マニフェスト/塩田千春
◆ゴヤは我らが同時代人――トロイアの詩人たちへ/今福龍太
◆独りの椅子 石垣りんのために[第九回]/梯 久美子
◆小林秀雄(一一〇)/大澤信亮
◆料理の人類学のかたわらで/藤田 周
第四回・御菓子丸、存在しないものを象る和菓子
◆地上に星座をつくる/石川直樹
第一二六回・ご先祖さまに会う
◆見えない音、聴こえない絵/大竹伸朗
第二三〇回・手ぬぐいとリュウグウノツカイ
【私の書棚の現在地】
◆青木 淳『くうきをつくる』/【書評委員】九段理江
◆古谷利裕『セザンヌの犬』/【書評委員】山下澄人
■■ 本 ■■
◆川上弘美『明日、晴れますように 続七夜物語』/金原瑞人
◆尾崎世界観『転の声』/高橋弘希
◆町屋良平『私の小説』/滝口悠生
◆辻原 登『陥穽』/田中和生
◆デルモア・シュワルツ(小澤身和子訳)『夢のなかで責任がはじまる』/豊崎由美
◆砂川文次『越境』/内藤千珠子
◆朝比奈秋『サンショウウオの四十九日』/永井玲衣
この号の誌面
立ち読み
編集長から
高山羽根子「ローレライ」
森田真生「数学する惑星」
◎7月末、K2の7000m地点でふたりの日本人が滑落した。ただ山頂からの景色を見るだけなら様々な手段を取り得る時代に、人はなぜ危険を冒し、原始的な生身での登頂にこだわるのか――高山羽根子氏の新連作は、そんな問いに貫かれている。舞台はボディなるアンドロイドが実用化された並行世界。主人公の嶋守恭介は山岳カメラマンで、これから高山での撮影を控えている。遭難時に姿を現すという女性の謎、ボディにどこまで任せるべきかという倫理。SF的アプローチで人間の存在に迫る、壮大な旅が始まった◎独立研究者の森田真生氏は数学と身体や情緒の関係を説く、唯一無二の文章を発表してきたが、最新プロジェクト「数学する惑星」が記述対象とするのは我々が生きる地球そのものだ。そよ風ひとつとっても、地球上の現象を予測するのは容易ではない。だが数学の発展により、複雑なメカニズムの計算が少しずつ可能になってきた。この連載もまた、旅路で驚くべき景色を見せてくれるだろう。
編集長・杉山達哉
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?
文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。