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今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

「決算!忠臣蔵」の話

 新潮文庫であれば毎年ドラマ、映画に何らかの作品がなっていますが、新潮新書はそういうことはそう多くありません。それでもありがたいことに過去『武士の家計簿―「加賀藩御算用者」の幕末維新―』『妻に捧げた1778話』が映画化されました。
 そして間もなく『「忠臣蔵」の決算書』(山本博文・著)を映画化した「決算!忠臣蔵」が公開されます(今月22日から)。
 邦画で忠臣蔵といえば、オールスターキャストが定番で、この映画もざっと俳優の名前を並べてみると、堤真一、岡村隆史、濱田岳、横山裕、妻夫木聡、桂文珍、竹内結子、西川きよし、石川さとみ......という具合で、とにかく有名な人がスクリーンにぎゅうぎゅうになっています。
 私も一応関係者ということで、先日試写会に行ってきました。感想はごく簡単にいえば「面白い」。決して身びいきではなく、よくこれだけのオールスターキャストを使いながら、ややこしいお金の話をここまで笑えるストーリーにできたなあ、と感心しました。徹底的にお金にこだわった、過去に例のない忠臣蔵です。

 11月新刊『偽善者たちへ』の著者、百田尚樹さんの作品は多数映像化されてきましたが、今回の新刊に限っては映像化はおそらく不可能でしょうし、それどころかテレビなどは恐れて扱わないかもしれません。タイトル通り、百田さんは次々「薄っぺらい正義」を振りかざす面々を批判していきます。その対象はテレビ、新聞、文化人、政治家、人権派、近隣国等々。その鋭さ、攻撃力には凄いものがあります。ただし、御本人もまえがきで述べているように、決して堅苦しい内容にはなっていないので、楽しく読める内容になっているのはさすがだと思いました。

 他の新刊3点もご紹介します。

ドル・人民元・リブラ―通貨でわかる世界経済―』(中條誠一・著)は、タイトルの通貨以外に、円、ユーロなど主要な通貨についての基本情報を解説しながら、現在の世界経済の状況を俯瞰した入門書。通貨の性質をおさえておくと、というか、おさえておかないと経済のことは理解できない、ということが理解できます。

「複業」で成功する』(元榮太一郎・著)の著者は、弁護士で「弁護士ドットコム」の創業者で、しかも参議院議員。提唱しているのは、「本業」以外に「副業」を持つことではなく、複数の「本業」を持つ、という生き方です。そんなのできるの? と思いながら読んでいくといつの間にか著者の熱に巻き込まれて、そうせねば、と思わされていきます。企業の総務、人事関係者には有益な副業に関連した法的な知識も満載なので、役に立つはず。

日本はすでに侵略されている』(平野秀樹・著)は、かなりおそろしいレポートです。中国など外資が日本の土地をどれだけ買収しているか、それに対して日本はどれだけ無防備なのか。また、土地のみならず日本のさまざまなものが狙われていて、大変なことになっていることがわかります。世界でもこんなに外国人が簡単に土地を買える国は珍しいようで、その状況を放置しているのは、偽善者あるいは馬鹿なのではないか、と思いました。

 今月も新潮新書をよろしくお願いします。
2019/11