新潮新書

今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

創刊18年目の春

 

 桜の頃、例年なら歓迎会の季節ですが、このご時世、新入社員の研修で話をしていても、全員マスク着用で、表情も反応もさっぱりわからないのが困りものです(考えてみると、1年前の新入社員もいまだ顔と名前が一致していないのでした)。
 2003年の創刊から18年を迎える新潮新書・今月の新刊『マスクをするサル』(正高信男・著)では、「誰もが顔半分を隠す」という突如降ってわいた生活習慣が、ヒトの認知やコミュニケーション、性意識にどんな変化をもたらすのかを大胆推察します。

さらに注目作は『どうしても頑張れない人たち―ケーキの切れない非行少年たち2―』(宮口幸治・著)。70万部超の大ベストセラーとなった『ケーキの切れない非行少年たち』の続編とも言うべき本書では、「なまけているように見える人」の驚くべき真実に迫ります。彼らの姿は、「ケーキの切れない非行少年たち」が大人になった姿にも重なります。
自衛隊最高幹部が語る令和の国防』は、安倍官邸外交のキーマンだった元国家安全保障局次長を司会役に、「陸・海・空」自衛隊の名将たちが、台湾や尖閣に迫る中国の脅威や朝鮮半島情勢など、日本防衛のリアルな現実と課題について激論を交わします。建前を排した議論の中には、ショッキングな指摘もあるかも知れません。
古代史の正体―縄文から平安まで―』(関裕二・著)は、教科書的な定説とは一線を画した、想像力豊かな古代史通史。デビュー作で「聖徳太子非存在論」の口火を切ってから30年、権威主義的なアカデミズムに果敢に立ち向かう姿勢は今なお健在です。
 末尾ながらお知らせを一つ。今月から編集長が交代、新潮新書では3代目となりますが、今後とも読者の皆様のご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。
2021/04