新潮新書
編集長交代のごあいさつ
私が編集長になったのは2008年のことでした。毎月の編成(要するに何を出すか、どうやって月4点を揃えるか)に追われているうちに、気づけばもう13年も経っていました。就任時は福田康夫総理です。そのあと麻生鳩山菅野田安倍菅です。菅の字は2回も出てきます。
さすがにこれでは長すぎるので、今月いっぱいで編集長を降りることとなりました。長い間、大変お世話になりました。会社をクビになったわけではないので、いろいろな形で新書には今後も関わってまいります。
そんなわけで私がこのメルマガに書くのも最後になります。
3月の新刊をご紹介します。
『小説家になって億を稼ごう』(松岡圭祐・著)は、現役の大ベストセラー作家による前代未聞の「入門書」です。
作家による文章読本などは数多くありましたが、「稼げる小説の書き方」をここまで懇切丁寧に書いた本は無かったでしょう。小説の書き方のみならず、出版社や編集者との付き合い方など、「ここまで書くのか」と担当編集者が驚いたほどです。昨今ではユーチューバーで一攫千金を狙う人も多いようですが、出版業界にもまだまだ夢がある、という気がしてきます。
『中国が宇宙を支配する日―宇宙安保の現代史―』(青木節子・著)。
中国軍の実力については「スゴイ」から「張子の虎」まで諸説あるのですが、少なくとも宇宙での実力は相当なもので、すでにアメリカを抜いている面もあります。宇宙を舞台にした各国の激しい歴史から今後までを解説したレポートです。
『毒親の日本史』の著者、大塚ひかりさんは最近では『くそじじいとくそばばあの日本史』というすごいタイトルの新書(ポプラ新書)が話題になっていました。今回のテーマは「毒親」。古代の天皇から小林一茶までさまざまな毒親やその被害者の話が並びます。個人的には実家に苛められつづける一茶にとても同情しました。
編集長をやっていると、毎月4冊は新潮新書(のタネみたいな原稿)を読むことになります。個人的に興味のないテーマでも読まなくてはなりません。
しかしそのおかげで、本来ならば知りえなかった知識や考え方を脳に入れることができました。結果として13年、ずっと勉強会に通っていたような感じです。おそらくこの勉強会に参加していなければ、脳の中はいま以上にお笑いや音楽のことで占められてしまっていた気がします。中国の宇宙進出も、小林一茶の苦悩も知らないままでいた可能性が高いでしょう。
かつて新書創刊時に在籍していたベテラン編集者が、
「編集の仕事は本を読んで勉強してお金が貰えるのだからよい仕事だ」と語っていたのを思い出します。
編集長はそれを4倍濃縮で経験するような仕事だったように思います。
こんな経験ができたのも、読者の方々が支えてくださったからです。
改めて御礼を申し上げます。
そして今月も、来月以降も新潮新書をよろしくお願い申し上げます。
さすがにこれでは長すぎるので、今月いっぱいで編集長を降りることとなりました。長い間、大変お世話になりました。会社をクビになったわけではないので、いろいろな形で新書には今後も関わってまいります。
そんなわけで私がこのメルマガに書くのも最後になります。
3月の新刊をご紹介します。
『小説家になって億を稼ごう』(松岡圭祐・著)は、現役の大ベストセラー作家による前代未聞の「入門書」です。
作家による文章読本などは数多くありましたが、「稼げる小説の書き方」をここまで懇切丁寧に書いた本は無かったでしょう。小説の書き方のみならず、出版社や編集者との付き合い方など、「ここまで書くのか」と担当編集者が驚いたほどです。昨今ではユーチューバーで一攫千金を狙う人も多いようですが、出版業界にもまだまだ夢がある、という気がしてきます。
『中国が宇宙を支配する日―宇宙安保の現代史―』(青木節子・著)。
中国軍の実力については「スゴイ」から「張子の虎」まで諸説あるのですが、少なくとも宇宙での実力は相当なもので、すでにアメリカを抜いている面もあります。宇宙を舞台にした各国の激しい歴史から今後までを解説したレポートです。
『毒親の日本史』の著者、大塚ひかりさんは最近では『くそじじいとくそばばあの日本史』というすごいタイトルの新書(ポプラ新書)が話題になっていました。今回のテーマは「毒親」。古代の天皇から小林一茶までさまざまな毒親やその被害者の話が並びます。個人的には実家に苛められつづける一茶にとても同情しました。
編集長をやっていると、毎月4冊は新潮新書(のタネみたいな原稿)を読むことになります。個人的に興味のないテーマでも読まなくてはなりません。
しかしそのおかげで、本来ならば知りえなかった知識や考え方を脳に入れることができました。結果として13年、ずっと勉強会に通っていたような感じです。おそらくこの勉強会に参加していなければ、脳の中はいま以上にお笑いや音楽のことで占められてしまっていた気がします。中国の宇宙進出も、小林一茶の苦悩も知らないままでいた可能性が高いでしょう。
かつて新書創刊時に在籍していたベテラン編集者が、
「編集の仕事は本を読んで勉強してお金が貰えるのだからよい仕事だ」と語っていたのを思い出します。
編集長はそれを4倍濃縮で経験するような仕事だったように思います。
こんな経験ができたのも、読者の方々が支えてくださったからです。
改めて御礼を申し上げます。
そして今月も、来月以降も新潮新書をよろしくお願い申し上げます。
2021/03
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