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今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

ようやく光が射してくる頃

 

 先日、約半年ぶりにさる著名な作家とリアルでの打合せをしました。お互い、マスクできっちり顎まで蔽いながら、飛沫が飛ばないようにボソボソヒソヒソ、何だが悪いことでもしているようで妙な気分でした。
 先月に引き続いての緊急事態宣言下、欧米諸国にはだいぶ遅れたものの、日本でもワクチンの本格接種が始まり、長い巣ごもり生活にもようやく先の光が射してきた頃合いでしょうか。
 6月新刊のイチ推し、『ビジネス戦略から読む美術史』(西岡文彦・著)は、美術にまつわる「イノベーション」を論じた一冊。名画・名作が今日そう評されるのは、作品を売りたい画家や画商、そして芸術を利用しようとした政治家や商人たちの「作為」の結果ですが、美術史はその作為(=イノベーション)の宝庫。読めば教養とビジネスノウハウの「二重取り」ができるお得な一冊です。
 何はともあれ当分は病院に行きたくない、そんな人も多いと思いますが、『その病気、市販薬で治せます』(久里建人・著)は、風邪や花粉症などポピュラーな日常薬から、育毛剤や精力剤のような人にはちょっと言いにくい薬剤まで、国が進めるセルフメディケーション政策のもと、急速の進化を遂げている市販薬について薬剤師がやさしく解説。一家に一冊の保存版です。
陶芸は生きがいになる』(林寧彦・著)は、寄る辺ない定年後の趣味とは違い、バリバリ働いていた広告マンがふとしたことで陶芸にハマり、ついにはプロとなるまでの日々を実体験とユーモアを交えて綴った一冊。ドキュメントとしても実用書としてもオススメです。
森林で日本は蘇る―林業の瓦解を食い止めよ―』(白井裕子・著)では、前著『森林の崩壊―国土をめぐる負の連鎖―』で注目された著者が、農業や漁業など他の一次産業と比べても衰退著しい林業の問題をさらに掘り下げ、世界に誇るべき日本の森林資源の活用について熱く提言。コロナショックがもたらした、時ならぬ木材不足(第三次ウッドショック)に揺れる現場からの報告です。
2021/06