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決定版 三島由紀夫全集 第27巻

三島由紀夫/著

6,380円(税込)

発売日:2003/02/10

  • 書籍

新発見、未発表作品を完全収録する決定版全集!

初の海外旅行の沸き立つような感動を綴った長編紀行「アポロの杯」、敬愛するラディゲへのオマージュ、精妙な川端康成論やワイルド論等、昭和23年~27年にかけての、初収録作品22編を含む166編。

目次

相聞歌の源流
文芸時評
重症者の兇器
私の文学
感情の古典美
師弟
ジャン・コクトオへの手紙――「悲恋」について
邪教
ドルヂェル伯の舞踏会
ツタンカーメンの結婚
野性を持て新聞に望む
美しき時代
インダストリー――柏原君への手紙
反時代的な芸術家
没落する貴族たち
画家の犯罪――Pen, Pencil and Poisonの再現
猫、「テューレの王」、映画
盗賊はしがき
跋 (「盗賊」)
情死について――やゝ矯激な議論
そぞろあるき――作家の日記
宗十郎の「蘭蝶」
四つの処女作
「序曲」編輯後記
クナアベンリーベ
「夜のさいころ」などについて
川端康成論の一方法――「作品」について
某月某日
跋 (坊城俊民著「末裔」)
中村芝翫論
俳優座に望む
戦後観客的随想――「あゝ荒野」について
戸板康二氏の「歌舞伎の周囲」
「火宅」について――作者の言葉
“芸術の女神”にいひ分あり――50点主義
小説の技巧について
作者の言葉 (「仮面の告白」)
「火宅」について
反抗と冒険――自画像
歌舞伎と馬
プチ・プロポ
好きな女優
悲劇の在処
「仮面の告白」ノート
序文 (「仮面の告白」用)
一青年の道徳的判断
「刺青」と「少年」のこと
これはへどである (「仮面の告白」)
ダンス時代
近代劇「速水女塾」――三越文学座評
無題 (六代目菊五郎について)
雨月物語について
現代作家寸描集――川端康成
美について
戯曲を書きたがる小説書きのノート
「速水女塾」について
作者の言葉 (「灯台」初演について)
面識のない大岡昇平氏
極く短かい小説の効用
作者の言葉 (「灯台」試演について)
文化議員に一票――演舞場・俳優座
文芸時評
武田泰淳氏の近作
世界のどこかの隅に――私の描きたい女性
熱烈な愉しさをもつ誘惑の書――戸板康二著「歌舞伎への招待」
歌舞伎評
無題 (「灯台」の演出について)
「クレエヴ公爵夫人」――梅田晴夫訳
作家の日記
オスカア・ワイルド論
アメリカの世話場――「ガラスの動物園」評
伏字
大阪の連込宿――「愛の渇き」の調査旅行の一夜
女学生よ白いエプロンの如くあれ
はしがき (「ハムレット」)
「伊豆の踊子」「温泉宿」「抒情歌」「禽獣」について
ジイドの「背徳者」
「元帥」について
雨の日の講演
私の好きな顔――川辺るみ子
天の接近――八月十五日に寄す
渋谷――東京の顔
「おぼろ夜」について
作家を志す人々の為に
九月号の文芸雑誌
独りは愉し
雲の会報告
虚栄について
映画評「シーザーとクレオパトラ」など
私の朝ご飯
久門祐夫君のこと
ユラニストの倫理――「コリドン」の問題
声と言葉遣ひ――男性の求める理想の女性
夜の占
言ひがかり
選者評 (「財政別冊」)
檀一雄の悲哀
「晩菊」などについて
完本獄中記ワイルド作
源氏物語紀行――「舟橋源氏」のことなど
作者の言葉――邯鄲覚書
あとがき (「聖女」)
文学に於ける春のめざめ
女の友情について
芝翫
新歌右衛門のこと
無題 (大岡昇平著「新しき俘虜と古き俘虜」推薦文)
僕に託した“娘時代の夢”母を語る
目くじら立てるに及ばぬの弁
顔さまざま連合展をみて
「異邦人」――カミュ作
高原ホテル
批評家に小説がわかるか
無題 (ワイルド著吉田健一訳「芸術論」推薦文)
新古典派4
当世腑に落ちぬ話
中国服
祇園祭を見て
作者の言葉 (「夏子の冒険」)
作者の言葉 (「純白の夜」
谷崎潤一郎
革命の詩
流行おくれ
改訂公告 (「禁色」)
唯美主義と日本
七彩の几帳のかげに (「姫君と鏡」)
無題 (「禁色」第一部)
新しい冒険の試み――自作のねらひを語る
演劇の本質
「禁色」は廿代の総決算
若い二人の会話――といふよりも・口説について
歌右衛門丈のこと
ラディゲ病
創作選評 (「財政」)
顔・福田恆存
髭とロタサン
旧教安楽――サン・パウロにて
リオの謝肉祭――リオ・デ・ジャネイロにて
アポロの杯
パリの芝居見物――パリにて
パリにほれず
遠視眼の旅人
エゴイストの恋文――コクトオ著「ジャン・マレエ」
清少納言「枕草子」
「班女」拝見
趣味的の酒
母の料理
ペトローニウス作「サテュリコン」
一読者として (吉田満著「戦艦大和の最期」)
映画「輪舞」のこと
「過去世」について
ジャン・ロッシイ作青柳瑞穂訳「不幸な出発」
谷崎潤一郎「刺青」について
映画「処女オリヴィア」
リファール待望
作者の言葉 (「につぽん製」)
芥川比呂志氏のこと
卒塔婆小町覚書
武田泰淳の「風媒花」について
肉体の悪魔
最高の偽善者として――皇太子殿下への手紙
岸田今日子さん
「新人特集」の皮相な新しがり
矢代君と「狐憑」
私の好きな作中人物――希臘から現代までの中に

 解題・校訂

書誌情報

読み仮名 ケッテイバンミシマユキオゼンシュウ27
シリーズ名 全集・著作集
全集双書名 決定版 三島由紀夫全集
発行形態 書籍
判型 四六判
頁数 740ページ
ISBN 978-4-10-642567-7
C-CODE 0395
ジャンル 全集・選書
定価 6,380円

書評

波 2003年12月号より 三島由紀夫全集の現在 決定版 三島由紀夫全集

田中美代子

 さしも広大な三島由紀夫の世界も、この十一月に、第三十六巻(評論十一)までまとめられて、一段落。平成十二年十一月の刊行開始からまる三年、私たちは山坂を越え、息もつかずにここまで登りつめた、という感慨が深い。
 今回の決定版全集は、没後の第一回全集を経て三十年、山中湖村に開設された三島由紀夫文学館の協力を得て、少年時代の習作、草稿、創作ノートなど、久しく待たれていた未公開資料が収録できたのは、何よりもうれしいことである。
 当時に比べて研究が充実深化するのは当然としても、三島文学には、これを取り巻く一種魔的な磁界があって、絶えずマニヤックな研究家、コレクターをひきよせるかのようであり、佐藤秀明、井上隆史、山中剛史氏をはじめ、編集協力の諸氏は、いずれも“考古学者の執念をもつ”資料発掘の鬼であり、時には古代文字解読のアクロバット的努力をも要して、全体像は雲間から徐々にその威容を現しつつある。
「全集には断簡零墨まで収録すべし」というのが、そもそも旧全集からの著者の遺言だが、無論これは“三島由紀夫ならでは”の自負の言と読める。四方に飛び散った飛沫の一粒々々が、ことごとく小さな光を宿して燦めくように、呪術にかかった言葉たちは読者の魂を痺れさせ、誰しも一滴まで、その醍醐味を追求せずにはいられないのだ。
 さて因縁の十一月、無事「檄」までを収め終って一息いれ、次の巻からはいよいよ第二段階に入る。
 詩歌(第三十七巻)、書簡(第三十八巻)、対談・鼎談・座談(第三十九・四十巻)、音声(CD)(第四十一巻)、作品年表、著書目録、被翻訳作品目録、上演・上映・放送目録、年譜(第四十二巻)、さらに、当初の予定にはなかった補巻を追加する予定で、補遺(小説、戯曲、評論、翻訳、創作ノートなど、刊行途中で発見されたもの)、参考文献一覧、索引などが収録される。いずれも新しい収録編纂で、完璧を期するため、今後は、原則として隔月刊の予定である(旧全集では不可能だったCDによる自作朗読なども、時満ちての収録である)。
 第三十七巻の詩歌では、今回初収録のものが四八六篇(旧全集一七二篇)で、これは主に幼・少年時代に書かれたものであり、手づくりの詩集やノート十六冊から収録された(三島由紀夫文学館蔵の二冊以外は、あとで三島家から発見されたもの)。
 これらは、あの短篇小説「詩を書く少年」の背景をなすもので、作中の「一週間詩集」なども実際に存在したことが確認される。十代後半には殆ど終息してしまうその旺盛な詩作活動は、たしかに三島文学形成期の秘密の鍵であることはまちがいがない。
 第三十八巻の書簡。戦時中、勤労動員先の工場から両親宛に出された二十七通、「花ざかりの森」刊行時、世話になった富士正晴宛の十九通、戦中戦後の文学活動の一端が知られる中河与一宛八通、中村光夫宛二十八通は、心安い先輩への打あけ話。眷恋の「サロメ」上演のため、台本の使用許可依頼から公演まで一連の経過がわかる日夏耿之介宛の六通。幸福な同時代者・澁澤龍彦宛三十六通、だが友情にヒビの入りそうなモデル問題(「暁の寺」の独文学者)にはいち早く弁解の一通。神風連取材にまつわる荒木精之宛九通など、大半は未公開の書簡であり、その時々の生活や執筆の背景があざやかに浮かびあがってくる。
 北杜夫宛十通の内の一通などはいかにも微笑ましく、公表すれば悪口となるべき書評が、雑誌にはあえて別のものと差し替え、そのまま友情溢れる私信に化けてしまうという経緯が分かる。
 第三十九・四十巻。対談・鼎談・座談は、全体で三百篇以上もある。大方は評論と遜色のない充実したもので、旧版では割愛せざるをえなかった単行本、たとえば林房雄との「対話・日本人論」、中村光夫との「対談・人間と文学」、伝説の「討論 三島由紀夫vs.東大全共闘」、さらに、対談集「尚武のこころ」「源泉の感情」。また文壇のみならず、演劇界、映画界、政財界などにわたる、当時の華やかな交友関係が偲ばれる。
 補巻は拾遺集で、三島由紀夫の潤色・NLT公演「リュイ・ブラス」台本、また三島由紀夫文学館蔵の新発見の作品では、中等科四年時代の作文「神官」「冬山」、さらに「梅枝」「菊薫る環物語」「二令嬢」、幻の作「模倣の恋」創作ノートなど解読すべき作品が山積しており、当分資料探索の旅が続きそうである。「僕は鯨と同じで、骨も筋も皮も無駄に捨てられるものは何もないんだ」という三島由紀夫の言葉を噛みしめている現場である。

著者プロフィール

三島由紀夫

ミシマ・ユキオ

(1925-1970)東京生れ。本名、平岡公威(きみたけ)。1947(昭和22)年東大法学部を卒業後、大蔵省に勤務するも9ヶ月で退職、執筆生活に入る。1949年、最初の書き下ろし長編『仮面の告白』を刊行、作家としての地位を確立。主な著書に、1954年『潮騒』(新潮社文学賞)、1956年『金閣寺』(読売文学賞)、1965年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)等。1970年11月25日、『豊饒の海』第四巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。ミシマ文学は諸外国語に翻訳され、全世界で愛読される。

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