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決定版 三島由紀夫全集 第32巻

三島由紀夫/著

6,380円(税込)

発売日:2003/07/10

書誌情報

読み仮名 ケッテイバンミシマユキオゼンシュウ32
シリーズ名 全集・著作集
全集双書名 決定版 三島由紀夫全集
発行形態 書籍
判型 四六判
頁数 730ページ
ISBN 978-4-10-642572-1
C-CODE 0395
ジャンル 全集・選書
定価 6,380円

新発見、未発表作品を完全収録する決定版全集! 

若い女性のための分析的・実際的男性講座「第一の性」、著者十七歳から二十六歳までの青春の十年間の文学的体験を回顧した「私の遍歴時代」など、昭和37年~39年の評論・エッセイ148編を収録。

目次


細江英公氏のリリシズム――撮られた立場より
無題 (第八回「新潮」同人雑誌賞選後評)
社交について――世界を旅し、日本を顧みる
終末観と文学
剣、春風を切る――ただいま修業中
わが室内装飾br> 「夏」と「海」を見に出かける――「獣の戯れ」取材紀行
初心に帰らう (読売文学賞受賞のことば)
初芝居
明治と官僚
カブキはどうなるか
青春の荒廃――中村光夫「佐藤春夫論」
「黒蜥蜴」について (「『黒蜥蜴』は……」)
近代能楽集について
春先の突風
関係者の言葉 (「黒蜥蜴」)
若尾文子讃
「百万円煎餅」の背景――浅草新世界
ギュスターヴ・モロオの「雅歌」――わが愛する女性像
「ブリタニキュス」のこと
現代偏奇館――澁澤龍彦「犬狼都市」「神聖受胎」
ジャン・コクトオの遺言劇――映画「オルフェの遺言」
「綾の鼓」について
ALBEEとのつかのまの出会
谷崎文学の最高峯 (「瘋癲老人日記」推薦文)
「純文学とは?」その他
無題 (安部公房著「砂の女」推薦文)
俳句と孤絶
作家と女優――深夜に遊ぶ三島由紀夫氏と水谷八重子氏
弱者の快楽
私の消夏法
私の健康
Four Rooms
ダリ「磔刑の基督」
爽快な知的腕力――大岡昇平「現代小説作法」
この十七年の“無戦争”
最近の川端さん
「黒の悲劇」の悲劇性
自動車と私
デカダンスの聖書――ユイスマン著澁澤龍彦訳「さかしま」
現代史としての小説
私の宝物
谷崎潤一郎論
大岡さんの優雅
堀江青年について
美しき鹿鳴館時代――再演「鹿鳴館」について
季節はづれの猟人――堂本正樹氏のこと
軽金属の天使
川端康成読本序説
魔的なものの力
早田雄二氏とヌード
こども部屋の三島由紀夫――ジャックと豆の木の壁画の下で
第一の性
冷血熱血 (小坂・オルチス戦観戦記)
無題 (第九回「新潮」同人雑誌賞選評)
小説のモデルにできない人――上村嘉枝子さん
赤ちやん時代私のアルバム
贋作東京二十不孝――井原西鶴
踊り
私の遍歴時代
無題 (「小沢さん、……」)
小沢征爾の音楽会をきいて
森光子さんにバトンタッチの弁
無題 (庭のアポローンの像について)
女はしかし伝説みたいに……
ミュージカル病の療法
林房雄論
ドナルド・キーン「日本の文学」
アメリカ版大私小説――N・メイラー作山西英一訳「ぼく自身のための広告」
幸せな革命
双手をあげて賛成 (「世界の文学」推薦文)
細江英公序説
子供について
「演劇のよろこび」の復活
海外旅行と私――カイロ
剣道
無題 (「ポオ全集」推薦文)
「トスカ」について (「久保田万太郎先生から……」)
私の中の“男らしさ”の告白
能――その心に学ぶ
ジュネの「女中たち」
無題 (鈴木徳義個展推薦文)
論議をつくした全集――編集のことば
利用とあこがれ
三十すぎてのスポーツ
無題 (K・A・メニンジャー著草野栄三良訳「おのれに背くもの」推薦文)
私の尽きざる信頼――私と朝日新聞
顔この刻まれた魂にふれる
可憐なるトスカ
「トスカ」について (「『トスカ』は……」)
「トスカ」上演について
ロマンチック演劇の復興
久保田万太郎氏を悼む
芸術家部落――グリニッチ・ヴィレッジの午後
「薔薇刑」体験記
変質した優雅
小説家の息子
拷問と死のよろこび――映画「悪徳の栄え」をみて
身を正し心を正す (「日本の文学」編集委員のことば)
芸術断想
捨てきれぬ異常の美――女形は亡びるかどうか
残酷美について
跋 (「林房雄論」)
天下泰平の思想
一S・Fファンのわがままな希望
二人の抒情――佐久間良子さん
私の真夏の夜の夢――自作自演
私のスタミナ作戦
未知への挑戦 (海老原・ポーン戦観戦記)
新延若丈の洋々たる未来
女の業
西洋人の夫婦
コクトーの死
見えない絵本 (細江英公他作「オンディーヌ」評)
私はこれになりたかつた――それは白バイの警官です
オペラといふ怪物
「鹿鳴館」再演
私の言葉 (「いま流行のヒッチハイク……」)
宝石づくめの小密室
わが創作方法
見合ひ結婚のすすめ
文学座の諸君への「公開状」――「喜びの琴」の上演拒否について
夜の法律
作者のことば (「音楽」)
一冊の本――ラディゲ「ドルヂェル伯の舞踏会」
ウソのない世界ひきつける野性の魅力
俳優に徹すること――杉村春子さんへ
写真集「薔薇刑」のモデルをつとめて――ぷらす・まいなす'63
知性の断末魔――「ポオ全集」
極限とリアリティー
無題 (第十回「新潮」同人雑誌賞選評)
もうすぐそこです
「日本的な」お正月
「空飛ぶ円盤」の観測に失敗して――私の本「美しい星」
跋 (團伊玖磨著「不心得12楽章」)
雷蔵丈のこと
前書――ムジナの弁 (「喜びの琴」)
はじめての本――「花ざかりの森」
解説 (「日本の文学38川端康成集」)
血のやうに赤い落日――C・ウィルソン大竹勝訳「性の衝動」
狐の宿命 (関・ラモス戦観戦記)
現代女優論――賀原夏子
無題 (塔晶夫著「虚無への供物」広告文)
胸のすく林房雄氏の文芸時評
小説家志望の少年に (「世界古典文学全集」推薦文)
時宜を得た大事業 (「日本古典文学大系第二期」推薦文)
序 (久富志子著「食いしんぼうママ」)
舞楽礼讃

 解題・校訂

書評

波 2003年12月号より 三島由紀夫全集の現在 決定版 三島由紀夫全集

田中美代子

 さしも広大な三島由紀夫の世界も、この十一月に、第三十六巻(評論十一)までまとめられて、一段落。平成十二年十一月の刊行開始からまる三年、私たちは山坂を越え、息もつかずにここまで登りつめた、という感慨が深い。
 今回の決定版全集は、没後の第一回全集を経て三十年、山中湖村に開設された三島由紀夫文学館の協力を得て、少年時代の習作、草稿、創作ノートなど、久しく待たれていた未公開資料が収録できたのは、何よりもうれしいことである。
 当時に比べて研究が充実深化するのは当然としても、三島文学には、これを取り巻く一種魔的な磁界があって、絶えずマニヤックな研究家、コレクターをひきよせるかのようであり、佐藤秀明、井上隆史、山中剛史氏をはじめ、編集協力の諸氏は、いずれも“考古学者の執念をもつ”資料発掘の鬼であり、時には古代文字解読のアクロバット的努力をも要して、全体像は雲間から徐々にその威容を現しつつある。
「全集には断簡零墨まで収録すべし」というのが、そもそも旧全集からの著者の遺言だが、無論これは“三島由紀夫ならでは”の自負の言と読める。四方に飛び散った飛沫の一粒々々が、ことごとく小さな光を宿して燦めくように、呪術にかかった言葉たちは読者の魂を痺れさせ、誰しも一滴まで、その醍醐味を追求せずにはいられないのだ。
 さて因縁の十一月、無事「檄」までを収め終って一息いれ、次の巻からはいよいよ第二段階に入る。
 詩歌(第三十七巻)、書簡(第三十八巻)、対談・鼎談・座談(第三十九・四十巻)、音声(CD)(第四十一巻)、作品年表、著書目録、被翻訳作品目録、上演・上映・放送目録、年譜(第四十二巻)、さらに、当初の予定にはなかった補巻を追加する予定で、補遺(小説、戯曲、評論、翻訳、創作ノートなど、刊行途中で発見されたもの)、参考文献一覧、索引などが収録される。いずれも新しい収録編纂で、完璧を期するため、今後は、原則として隔月刊の予定である(旧全集では不可能だったCDによる自作朗読なども、時満ちての収録である)。
 第三十七巻の詩歌では、今回初収録のものが四八六篇(旧全集一七二篇)で、これは主に幼・少年時代に書かれたものであり、手づくりの詩集やノート十六冊から収録された(三島由紀夫文学館蔵の二冊以外は、あとで三島家から発見されたもの)。
 これらは、あの短篇小説「詩を書く少年」の背景をなすもので、作中の「一週間詩集」なども実際に存在したことが確認される。十代後半には殆ど終息してしまうその旺盛な詩作活動は、たしかに三島文学形成期の秘密の鍵であることはまちがいがない。
 第三十八巻の書簡。戦時中、勤労動員先の工場から両親宛に出された二十七通、「花ざかりの森」刊行時、世話になった富士正晴宛の十九通、戦中戦後の文学活動の一端が知られる中河与一宛八通、中村光夫宛二十八通は、心安い先輩への打あけ話。眷恋の「サロメ」上演のため、台本の使用許可依頼から公演まで一連の経過がわかる日夏耿之介宛の六通。幸福な同時代者・澁澤龍彦宛三十六通、だが友情にヒビの入りそうなモデル問題(「暁の寺」の独文学者)にはいち早く弁解の一通。神風連取材にまつわる荒木精之宛九通など、大半は未公開の書簡であり、その時々の生活や執筆の背景があざやかに浮かびあがってくる。
 北杜夫宛十通の内の一通などはいかにも微笑ましく、公表すれば悪口となるべき書評が、雑誌にはあえて別のものと差し替え、そのまま友情溢れる私信に化けてしまうという経緯が分かる。
 第三十九・四十巻。対談・鼎談・座談は、全体で三百篇以上もある。大方は評論と遜色のない充実したもので、旧版では割愛せざるをえなかった単行本、たとえば林房雄との「対話・日本人論」、中村光夫との「対談・人間と文学」、伝説の「討論 三島由紀夫vs.東大全共闘」、さらに、対談集「尚武のこころ」「源泉の感情」。また文壇のみならず、演劇界、映画界、政財界などにわたる、当時の華やかな交友関係が偲ばれる。
 補巻は拾遺集で、三島由紀夫の潤色・NLT公演「リュイ・ブラス」台本、また三島由紀夫文学館蔵の新発見の作品では、中等科四年時代の作文「神官」「冬山」、さらに「梅枝」「菊薫る環物語」「二令嬢」、幻の作「模倣の恋」創作ノートなど解読すべき作品が山積しており、当分資料探索の旅が続きそうである。「僕は鯨と同じで、骨も筋も皮も無駄に捨てられるものは何もないんだ」という三島由紀夫の言葉を噛みしめている現場である。

著者プロフィール

三島由紀夫

ミシマ・ユキオ

(1925-1970)東京生れ。本名、平岡公威(きみたけ)。1947(昭和22)年東大法学部を卒業後、大蔵省に勤務するも9ヶ月で退職、執筆生活に入る。1949年、最初の書き下ろし長編『仮面の告白』を刊行、作家としての地位を確立。主な著書に、1954年『潮騒』(新潮社文学賞)、1956年『金閣寺』(読売文学賞)、1965年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)等。1970年11月25日、『豊饒の海』第四巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。ミシマ文学は諸外国語に翻訳され、全世界で愛読される。

初めて出会う 新・三島由紀夫

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