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決定版 三島由紀夫全集 第30巻

三島由紀夫/著

6,380円(税込)

発売日:2003/05/09

  • 書籍

新発見、未発表作品を完全収録する決定版全集! 

芸術や文明に関する随想から日常のプライヴェートなことまで、文壇の寵児の超人的生活の表と裏を綴った「裸体と衣裳」。他に、逆説と揶揄満杯のパロディ「不道徳教育講座」等、昭和33年の作品51編。

目次

三島由紀夫渡米みやげ話「朝の訪問」から
あとがき (「橋づくし」)
INFLUENCES IN MODERN JAPANESE LITERATURE
豪奢な哀愁
無題 (中村光夫著「人と狼」推薦文)
心中論
カブキ・新劇・アメリカ演劇
無 題 (石原慎太郎著「完全な遊戯」推薦文)
外遊日記
美食と文学
裸体と衣裳日記
近松ばやり私観
薔薇と海賊について
あとがき (「薔薇と海賊」)
ニューヨークの溜息
ニューヨークぶらつ記
ディーンとブロードウェイ
紐育レストラン案内
日光浴
「花ざかりの森」出版のころ
「アルマンス」について
中村八大氏
「女優志願」をめぐつて
僕の理想の女性
作家と結婚
私の見合結婚
「薔薇と海賊」について (「世界は虚妄だ、……」)
文章読本について
不道徳教育講座
三谷君の写真によせて
にはか編集者の文学熱
本物の「舞台の人」
「イエルマ」礼讃
武田泰淳氏の「媒酌人は帰らない」について
大岡昇平著「作家の日記」
母を語る私の最上の読者
同人雑記 (「声」)
スポーツ讃歌
芳春院
月に祈る
魔女の厨の火
「子供つぽい悪趣味」讃知友交歓
蝶の理論
作者の言葉 (「むすめごのみ帯取池」)
人間理性と悪マルキ・ド・サド著澁澤龍彦訳「悲惨物語」
芥川比呂志の「マクベス」
清潔で意地悪く同人誌からの発言
出るべきものが出たといふ感推薦の言葉
「告白的女性論」を推す
無題 (「むすめごのみ帯取池」注記)
受賞のことば (週刊読売新劇賞「薔薇と海賊」)

 解題・校訂

書誌情報

読み仮名 ケッテイバンミシマユキオゼンシュウ30
シリーズ名 全集・著作集
全集双書名 決定版 三島由紀夫全集
発行形態 書籍
判型 四六判
頁数 726ページ
ISBN 978-4-10-642570-7
C-CODE 0395
ジャンル 全集・選書
定価 6,380円

書評

波 2003年12月号より 三島由紀夫全集の現在 決定版 三島由紀夫全集

田中美代子

 さしも広大な三島由紀夫の世界も、この十一月に、第三十六巻(評論十一)までまとめられて、一段落。平成十二年十一月の刊行開始からまる三年、私たちは山坂を越え、息もつかずにここまで登りつめた、という感慨が深い。
 今回の決定版全集は、没後の第一回全集を経て三十年、山中湖村に開設された三島由紀夫文学館の協力を得て、少年時代の習作、草稿、創作ノートなど、久しく待たれていた未公開資料が収録できたのは、何よりもうれしいことである。
 当時に比べて研究が充実深化するのは当然としても、三島文学には、これを取り巻く一種魔的な磁界があって、絶えずマニヤックな研究家、コレクターをひきよせるかのようであり、佐藤秀明、井上隆史、山中剛史氏をはじめ、編集協力の諸氏は、いずれも“考古学者の執念をもつ”資料発掘の鬼であり、時には古代文字解読のアクロバット的努力をも要して、全体像は雲間から徐々にその威容を現しつつある。
「全集には断簡零墨まで収録すべし」というのが、そもそも旧全集からの著者の遺言だが、無論これは“三島由紀夫ならでは”の自負の言と読める。四方に飛び散った飛沫の一粒々々が、ことごとく小さな光を宿して燦めくように、呪術にかかった言葉たちは読者の魂を痺れさせ、誰しも一滴まで、その醍醐味を追求せずにはいられないのだ。
 さて因縁の十一月、無事「檄」までを収め終って一息いれ、次の巻からはいよいよ第二段階に入る。
 詩歌(第三十七巻)、書簡(第三十八巻)、対談・鼎談・座談(第三十九・四十巻)、音声(CD)(第四十一巻)、作品年表、著書目録、被翻訳作品目録、上演・上映・放送目録、年譜(第四十二巻)、さらに、当初の予定にはなかった補巻を追加する予定で、補遺(小説、戯曲、評論、翻訳、創作ノートなど、刊行途中で発見されたもの)、参考文献一覧、索引などが収録される。いずれも新しい収録編纂で、完璧を期するため、今後は、原則として隔月刊の予定である(旧全集では不可能だったCDによる自作朗読なども、時満ちての収録である)。
 第三十七巻の詩歌では、今回初収録のものが四八六篇(旧全集一七二篇)で、これは主に幼・少年時代に書かれたものであり、手づくりの詩集やノート十六冊から収録された(三島由紀夫文学館蔵の二冊以外は、あとで三島家から発見されたもの)。
 これらは、あの短篇小説「詩を書く少年」の背景をなすもので、作中の「一週間詩集」なども実際に存在したことが確認される。十代後半には殆ど終息してしまうその旺盛な詩作活動は、たしかに三島文学形成期の秘密の鍵であることはまちがいがない。
 第三十八巻の書簡。戦時中、勤労動員先の工場から両親宛に出された二十七通、「花ざかりの森」刊行時、世話になった富士正晴宛の十九通、戦中戦後の文学活動の一端が知られる中河与一宛八通、中村光夫宛二十八通は、心安い先輩への打あけ話。眷恋の「サロメ」上演のため、台本の使用許可依頼から公演まで一連の経過がわかる日夏耿之介宛の六通。幸福な同時代者・澁澤龍彦宛三十六通、だが友情にヒビの入りそうなモデル問題(「暁の寺」の独文学者)にはいち早く弁解の一通。神風連取材にまつわる荒木精之宛九通など、大半は未公開の書簡であり、その時々の生活や執筆の背景があざやかに浮かびあがってくる。
 北杜夫宛十通の内の一通などはいかにも微笑ましく、公表すれば悪口となるべき書評が、雑誌にはあえて別のものと差し替え、そのまま友情溢れる私信に化けてしまうという経緯が分かる。
 第三十九・四十巻。対談・鼎談・座談は、全体で三百篇以上もある。大方は評論と遜色のない充実したもので、旧版では割愛せざるをえなかった単行本、たとえば林房雄との「対話・日本人論」、中村光夫との「対談・人間と文学」、伝説の「討論 三島由紀夫vs.東大全共闘」、さらに、対談集「尚武のこころ」「源泉の感情」。また文壇のみならず、演劇界、映画界、政財界などにわたる、当時の華やかな交友関係が偲ばれる。
 補巻は拾遺集で、三島由紀夫の潤色・NLT公演「リュイ・ブラス」台本、また三島由紀夫文学館蔵の新発見の作品では、中等科四年時代の作文「神官」「冬山」、さらに「梅枝」「菊薫る環物語」「二令嬢」、幻の作「模倣の恋」創作ノートなど解読すべき作品が山積しており、当分資料探索の旅が続きそうである。「僕は鯨と同じで、骨も筋も皮も無駄に捨てられるものは何もないんだ」という三島由紀夫の言葉を噛みしめている現場である。

著者プロフィール

三島由紀夫

ミシマ・ユキオ

(1925-1970)東京生れ。本名、平岡公威(きみたけ)。1947(昭和22)年東大法学部を卒業後、大蔵省に勤務するも9ヶ月で退職、執筆生活に入る。1949年、最初の書き下ろし長編『仮面の告白』を刊行、作家としての地位を確立。主な著書に、1954年『潮騒』(新潮社文学賞)、1956年『金閣寺』(読売文学賞)、1965年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)等。1970年11月25日、『豊饒の海』第四巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。ミシマ文学は諸外国語に翻訳され、全世界で愛読される。

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