朝吹真理子さんの初文庫が登場です。西村賢太さんの『苦役列車』とともに芥川賞を同時受賞した『きことわ』、いよいよ文庫刊行となりました。
文庫化を記念して、8月20日(火)には、ジュンク堂池袋本店にて漫画家・しりあがり寿さんとのトークショー「世界の理の『ほんとう』が顕れる瞬間を書く、ということ。」が開かれます!
小説家と漫画家。普段は交わることのない二人が織り成す「書く」ことにまつわる越境トーク。トークショーは、後日、動画にもアップされますので、みなさんお見逃しなきよう!
『きことわ』という不思議な音感をタイトルに持つ本作。
主人公は二人の女性、貴子(きこ)と永遠子(とわこ)です。葉山の別荘で同じ時間を過した二人の少女は、25年の時を経て再会します。久しぶりの邂逅。語られる思い出。
しかし、そこには微妙な食い違いが生じます。語り合ううちに、二人の中では何が「現在」で、何が「過去」なのか、どんどん怪しくなっていく。そもそも、これは誰の記憶なのか。貴子か、永遠子か。語られる思い出は、いつ起きたことなのか。あの時か、それとも、未来か。
言葉と言葉が交わる果てに、やがてすべては曖昧になり、現在、過去、未来、夢、何もかもが混ざり合っていく――。
小説を読むことの楽しさ。文章を読むことの悦び。そんな唯一絶対の読書体験に溢れているのが、この『きことわ』です。
ほかでは決して味わえない、言の葉を味わう愉悦。神業のような綱渡りで、言葉と小説を繋いでいく本作を読むうち、これは「小説の奇蹟」なのではないか、と担当編集は思いました。
みなさんに、この幸せな「読書」が届くことを、祈るばかりです。