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偉人先賢先哲の行跡名言から要諦を伝授。 昭和のベストセラーを注釈付で新装復刊。


 河盛好蔵(1902-2000)といえば、小林秀雄(1902-1983)、河上徹太郎(1902-1980)らと並ぶ大教養人で、特に河盛は、フランスに特徴的なモラリスト(非連続の短文で人生の哲理を表現した教養人)の紹介や評論で名をはせました。
 その河盛の空前のベストセラーとなった本書『人とつき合う法』は昭和33(1958)年、に刊行されました。「週刊朝日」連載開始時、編集部は読者について高校生を念頭においてほしいとの注文だったようですが、本書「あとがき」によれば、「そういうことには全くこだわらず」一般の社会人に向けて書いたといいます。もっといえば、「貧しい人生経験のすべてを投じて、いわば体当りになって」書いた、河盛自身の「内的自叙伝」とあります。
 本書冒頭「イヤなやつ」の章には、「他人の幸福よりも不幸を喜ぶ根性の悪さ」があり、「自分はできるだけ怠けて、人を働かせ、その功を自分だけでひとり占めしたいというズルさと欲の深さ」があり、「権力者にはなるべく逆らわないで、時としては進んでその権力に媚びようとするいやしさ」があり、「絶えず世のなかの動きを眺めていて、できるだけバスに乗りおくれまいとする、こすっからいところ」があり、「他人にはきびしくて、自分には寛大な、エゴイストの部分が非常に多」く、「ケチで、勘定高くて、他人の不幸にはそ知らぬ顔をし、自分の不幸は十倍ぐらい誇張して、いつも不平不満でいる」という「イヤなやつ」の条件をことごとく具えているのが自分自身であり、「こんなことを、あけすけに書いた方が、かえって得になるとひそかに計算している」という自己省察の披瀝があります。
 この自己規定から出発して、「人とつき合う」ことの難しさ、楽しさ、失敗、感動を紹介したのが本書です。河盛自身の経験に加えて博覧強記の教養から、漱石荷風鏡花太宰らをはじめ、キケロ、ゲーテ、モンテーニュ、ヴォルテール、ベルグソン、ヴァレリー、モーリヤック、チェーホフドストエフスキートルストイらの行跡名言をとりまぜて、易しく、わかりやすく、人づき合いの要諦を書き留めています。
 新装復刊に際し、編集部で注釈を施しました。
 解説は、哲学者で『嫌われる勇気』の著者であるアドラー心理学の大家、岸見一郎。本書の本質的な意義、位置づけを明解に解説しています。
 入学、入社、転職、結婚、転居......、人生の新しい局面で必ず助けとなる言葉に出会えます。是非、ご一読を。

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2020年04月15日   今月の1冊
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