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今月の表紙の筆蹟は、浅田次郎さん。

波 2022年2月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2022/01/27

発売日 2022/01/27
JANコード 4910068230225
定価 100円(税込)
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【遠藤周作 新発見戯曲】
遠藤周作/切支丹大名・小西行長『鉄の首枷』戯曲版(前篇)
[解説]加藤宗哉/小説・評伝とは一味違う行長劇――その“内なる声”と、舞台の華やかさ
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第53回
【浅田次郎『母の待つ里』刊行記念特集】
[対談]浅田次郎×川本三郎/東京人はふるさとの夢を見る
[最速レビュー]『母の待つ里』はこんな小説!
【ジェフリー・ケイン、濱野大道 訳『AI監獄ウイグル』刊行記念特集】
池上 彰/悪魔の技術が実現させた恐るべきディストピア
安田峰俊/大陸最深部で繰り広げられる悲劇の実態をつかむ
今野 敏『探花―隠蔽捜査9―』
村木厚子/私の理想のリーダー

東山彰良『怪物』
吉野 仁/『流』につらなる半自伝的エンターテインメント

マリアンヌ・クローニン、村松 潔 訳『レニーとマーゴで100歳』(新潮クレスト・ブックス)
梨木香歩/レニーは百年を生きた

ジル・ハイナース、村井理子 訳『イントゥ・ザ・プラネット―ありえないほど美しく、とてつもなく恐ろしい水中洞窟への旅―』
高野秀行/対立するスパイラルが生む圧倒的な探検ノンフィクション

風間賢二『怪異猟奇ミステリー全史』(新潮選書)
東えりか/老後の楽しみとなる永久保存版ブックガイド
山舩晃太郎『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』
[対談]山舩晃太郎×丸山ゴンザレス/ロマンは現場で待っている!
【短篇小説】
北村 薫/札 前篇

【私の好きな新潮文庫】
川津幸子/本物を知ること
 山本周五郎『柳橋物語・むかしも今も
 伊丹十三『女たちよ!
 水上 勉『土を喰う日々―わが精進十二ヵ月―
【今月の新潮文庫】
稲垣栄洋『一晩置いたカレーはなぜおいしいのか―食材と料理のサイエンス―』
小島よしお/科学も歴史も文学も! 食材が好奇心を刺激する
瀬戸内寂聴『瀬戸内寂聴全集 第二十一巻―秘花・月の輪草子・爛―』
瀬戸内寂聴全集[第二期]全五巻 刊行スタート!
【コラム】
野口憲一『「やりがい搾取」の農業論』(新潮新書)
野口憲一/カイワレ大根の長さが揃っているのはなぜか?

三枝昴之・小澤 實/掌のうた

[とんぼの本]編集室だより

【連載】
ジェーン・スー/マイ・フェア・ダディ! 介護未満の父に娘ができること 第17回
南沢奈央 イラスト・黒田硫黄/今日も寄席に行きたくなって 第26回
伊与原 新/翠雨の人 第2回
二宮敦人/ぼくらは人間修行中 第15回
春画ール/春画の穴 第4回
内田 樹/カミュ論 第11回
川本三郎/荷風の昭和 第45回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、浅田次郎さん。

◎文筆家の佐藤隆介さんが亡くなりました。昔、唐津くんちの宴席で僕が池波正太郎さんとの関係を根掘り葉掘り質問していたら、同席の旅行雑誌の編集者が顔を顰めて「随分無遠慮に訊くね」。でも隆介さんはあれこれ巨匠の秘話を語ってくれたものです。
◎無遠慮の是非はともかく、この時は訊くための知識が少しはあっただけマシで、無学のせいで「あれを伺っておけばよかった!」と後で臍を噛むことは多々あります。例えば邱永漢さんの担当だったのに、台湾独立運動について尋ねたことがなかった。〈台湾民主共和国準備政府〉の大統領が副主人公の丸谷才一『裏声で歌へ君が代』は邱さんが取材源だと思われる節があって、作中に出てくる国旗も、邱青年が独立運動を共にした寥文毅の夢見た〈台湾民主国〉の国旗を明らかに基にしています。映画「悲情城市」を観て感動したくせに、二・二八事件をきっかけに亡命した邱さんに何も訊かなかったのは全く豚に真珠でしたねえ。
◎映画の現場での意地悪について、最近見つけた和田誠さんの証言(吉行淳之介『特別恐怖対談』より)。「実力のある新鋭監督がいつもとは別の撮影所で映画を撮っていた。戦後すぐという設定の映画で、おもちゃ屋のシーンなんです。本番になって、実はテストの時にはそこになかったものが置いてある。パンダの縫いぐるみなんですけれど、それを気がつかないで撮っちゃって」。これは「仁義なき戦い」(東映京都撮影所作品)で松方弘樹が殺られる場面のことで、パンダの玩具が散乱していました。雑な時代考証だぜと苦笑したものですが、あれは深作欣二監督(東映東京撮影所出身)への嫌がらせだった! これも『シネマの極道―映画プロデューサー一代―』取材の時、故日下部五朗プロデューサーに内情を訊いておけばよかったなあ。
▽次号の刊行は二月二十八日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。