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新潮新書

今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

祝・創刊10周年!

 新潮新書が創刊したのは2003年4月。おかげさまでこの4月で創刊10周年を迎えました。
 この間、いろいろなことがありました。震災は言うまでもありません。政権交代は2回ありました。芦田愛菜ちゃんや鈴木福くんも生まれました。
 今でも思い出すのは、創刊に際してメディアの方々をお招きして説明会を開いたときのことです。「いまさら新書創刊?」という反応はかなりありました。これは私自身、そういう不安もなかったわけではないので気になりませんでした。一方で、ちょっとムッとしたのは、表紙のデザインについて「ちょっとどうか」という新聞記事が出たこと。その会社のデザインセンスにはいささか日頃から疑問を持っていただけに、「お前に言われたくない」と思ったものです。
 その時の教訓は、これから新しいことをしようとしている人はただでさえ不安で一杯なのだから、あまり思いつきでネガティブなことを言わないほうがいい、ということでした。現に10年経ってもこうして執念深く憶えているのですから。

 10周年ということもあり、今月は例年以上に強力なラインナップが揃いました。以下、新刊5点をご紹介いたします。

無力 MURIKI』(五木寛之・著)。「無力」と書いて「むりき」と読みます。五木さんの造語です。「自力」でも「他力」でもなく、私たちは「無力」の中で生きているのではないか。それを知ることが、長い下り坂の時代を生きるうえで必要であると説きます。ちょっと疲れている方、「なんだか世間が力んでいる」という違和感を持つ方には特にお勧めします。「深化し続ける人間観の最終到達地を示す全十一章」というキャッチコピーに嘘偽りはありません。
経営センスの論理』(楠木建・著)。2010年に刊行した『ストーリーとしての競争戦略』が500頁超の経営書でありながら18万部のベストセラーとなった著者による新作。経営者のセンスがいい会社は成功する。そう言われても、センスなんて生まれつきのものじゃないの? そう思うかもしれませんが、そんなことはありません。本書ではタイトル通り、その「センス」を極めて論理的に分析しています。「経営ってこういうことなのか!」と目からウロコが落ちる、読んで面白く、しかも当然役に立つビジネス書です。
悪韓論』(室谷克実・著)。韓国については、韓流大好きとか韓国流のビジネスに学ぼうという好意的な人もいれば、あまり好意を持たない人もいます。本書の著者は前者ではないでしょう。本書では韓国の語られざる暗部について、これでもかとばかりに例を挙げながら論じていきます。特徴は、それらはすべて韓国メディア自身が報じた事例をもとにしているという点です。きわめて冷静に、しかし厳しく隣国の実像を描き出しています。「嫌韓」の人はもちろんですが、より深く知るという意味で韓流ファンにもお勧めします。
新しい日本の愛し方』(茂木健一郎・著)。まえがきがとても感動的なのでそこから引用します。

「新しい日本の愛し方。それは、日本という国を必要以上に大きく見せようとしたり、過去の栄光にすがろうとすることではない。また、自分たちが犯した過ちを否定したり、現状で抱えている問題を無視することでもない。
 そうではなくて、あくまでも等身大の日本を見つめて、そのありのままを抱きしめること。良いことも悪いことも、自分たちのかけがえのない母国のことを受け入れて、そしてそこから出発すること。それが、大切だ」
 この言葉通り、勇ましすぎず、それなのに読み終えると勇気がわいてくる日本論です。
人間関係』(曽野綾子・著)。つまるところ、私たちの悩みの何割かは、これでしょう。そんなものではまったく悩んだことがない、という幸福な人もいるのかもしれませんが、そういう人は周囲の人が何らかの形で悩んでいる可能性があるのではないかという気がします。この厄介なものとどう向きあえばいいのか。「うまく行かない関係なら諦める」「心は過不足なくは伝わらない」「人は誰でも『心変わり』がある」等々、著者ならではの珠玉の言葉が並ぶ人生論です。

 全国各地の書店では10周年記念フェアも開催中です。
 これからもよろしくお願いいたします。

2013/04