ホーム > 新潮新書 > 新書・今月の編集長便り > 嫌がらせはやめよう

新潮新書

今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

嫌がらせはやめよう

 最近お目にかかった知人がこんなことを言っていました。「新聞に自分のコメントが載ったら、その後で内容が気に入らないという人から執拗な嫌がらせを受けて、本当に困った」
 このところ、こういう話を耳にすることが何度かありました。比較的話題になるのは「ネトウヨ」的な人が過激な攻撃をしたケースなのですが、実際には左右関係なく、こういうことをしている人がいるようです。問題は思想的立場ではなく、人間としての常識があるかないかなのです。

 新潮新書に関しても、書店に「こんな本を置くな」と抗議するお客さんがいたということを最近、何度か耳にしました。
 本を読む意味の一つは、自分とはまったく異なる立場の考えを知ることではないかと思うのですが、そう考えない人も結構いるようです。そういう人は、毎日自分の日記を読み直せばいいのでは、と思いました。

 10月の新刊をご紹介いたします。

西田幾多郎―無私の思想と日本人―』(佐伯啓思・著)は、『善の研究』などで知られる西田幾多郎の思想を佐伯氏が柔らかく読み解いた一冊。「日本一難解」と評されることもある西田哲学への入門書としても楽しめますが、一方で佐伯氏による時事的な社会批評としても読めるつくりになっています。「西田の名前は聞いたことがあるが、どうも難しそうで」「哲学の道の由来なのは知っているけど、それ以上は……」と食わず嫌いの方もぜひ手に取ってみてください。日本を代表する哲学者に、現代を代表する知性が挑んだ意欲作です。

営業部はバカなのか』(北澤孝太郎・著)は、リクルートやソフトバンクテレコム等で活躍してきた営業のエキスパートによる初めての著書。営業部の仕事というのは、他部署にとっては往々にしてブラックボックスになりがちです。そのため「何をやっているのかよくわからない」というのはまだ良い方で、「何だか汗臭くてうっとうしい」「頭が固い」「やり方が古い」といったネガティブな評価も珍しくないようです。なぜそういうことになるのか、どうすれば全社でまとまることができるのかを考えていきます。著者自身のエピソードはまるで「半沢直樹」や企業小説のようでもあり、それだけでも読む価値があると思います。

会話のきっかけ』(梶原しげる・著)は、しゃべりのプロである著者が、あちこちで取材したり、勝手に聞き耳を立てたりして考えた「人づきあいのコツ」。初対面の人と2人きりになって、気まずい沈黙が続く……さて、こんな時にどうするのか。無難かつ有効な解決策がいくつも示されています。他にも「部下には弁当を買いに行かせろ」「ど忘れには実況中継で対抗せよ」等、面白くて役に立つアドバイスが満載です。

見えない世界戦争―「サイバー戦」最新報告―』(木村正人・著)は、「陸」「海」「空」「宇宙」に続く「第5の戦場」とされる「サイバー」を巡る攻防の最新事情のレポートです。この分野でも中国の台頭は凄まじいものがあり、一説によると中国軍のサイバー部隊は約40万人とか。それ以外にも民間人ではあるものの、国家の意向で動く「五毛党」という人たちが100万人はいるそうです。この人たちが、ある時は一斉に「反日」的なコメントをネットに書き込むわけです。
 これでは日本はとても太刀打ちできません。

 他人のコメントに嫌がらせをしたり、書店に抗議をしたりするような人は、「五毛党」に入ると活躍できる人材なのかもしれません。
 今月も新潮新書をよろしくお願いいたします。

2014/10