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今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

たけしさんの話

 人生とか人格というほど立派なものは持ち合わせていないにせよ、現在の自分に大きな影響を与えた人の1人がビートたけしさんなのは間違いありません。
 喋り方、考え方などの何パーセントかは明らかに、たけしさんの影響下にあります。たまに口が悪いなどと言われることもありますが、それは私のせいではないのです。
 そのたけしさんは、70歳になった今年、ますます精力的に活動なさっています。
 この数か月を振り返っても、フジテレビの27時間テレビの総合司会をつとめ、「初の書下ろし純愛小説」である『アナログ』を刊行し、さらに監督・主演作の「アウトレイジ 最終章」が公開され、テレビ東京では朝の生番組に連日出演のはずがいきなり休み......とにかく大変なことになっているわけです。
 そしてさらに、今月には新潮新書から新刊『バカ論』も出ます。
 愛すべきバカから、本物のバカまで、たけしさんがありとあらゆる「バカ」について語り尽くした内容で、面白くないはずがありません。明石家さんまさんや、タモリさんといった「同業者」について語っているあたりは、マニア垂涎の内容でしょう。

 他の3点をご紹介します。

人生の持ち時間』(曽野綾子・著)は、著者の人生論、社会論がたっぷり味わえる1冊。ご主人である三浦朱門さんの死去に際して、朱門さんの名言をたっぷり紹介した章が特に身に沁みました。自分はこんなに周りの人に覚えてもらえる言葉を発しているだろうか、と思いました(もちろんしていない)。
料理は女の義務ですか』(阿古真理・著)は、一昨年の『小林カツ代と栗原はるみ―料理研究家とその時代―』が話題となった著者による、「料理本」の第2弾。家庭料理は女の仕事、という風潮に違和感を覚える著者が、その違和感を原動力に「料理と人類」の歴史をひもとく、という壮大な内容です。料理に関するウンチク満載です。
定年後の楽園の見つけ方―海外移住成功のヒント―』(太田尚樹・著)は、中高年に限らず、実は読み物として若い人でも楽しめるレポート。老後の楽園を求めてフィリピンなどに移住をした日本人の人生が描かれています。なかでも強烈なのは、現地で17歳の花嫁をめとってしまった男性。それだけ聞くと、眉をひそめる方が続出しそうですが、事情を知ると結構納得させられてしまい、微笑ましく思えるのではないかと思います。

 それにしても、子供の頃の自分に「君はおじさんになってから、たけしさんや曽野さんの本を作る仕事をやっているのだよ」と言ったら、衝撃を受けただろうなあと思います。

 今月も新潮新書をよろしくお願いします。
2017/10