新潮新書

今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

ケータイの話

 周囲に半ば呆れられながらも使い続けてきたガラケーに限界がきつつあります。スマホユーザーの方はもうお忘れでしょうが、ガラケーには「決定」ボタンがあります。
 そのボタンの表面が数か月前に取れたので慌てて接着剤で修理したら、その後、ものすごい力を加えないと「決定」ができなくなりました。決定の重みが激変したのです。
 さらにそんな風に渾身の力を加えていたら、今度はその表面が割れました。決定がより困難になってきました。
 結果として、電話をかけることと、メールの受信以外はあまりできない、ポケベルとケータイの中間みたいな機械になったのです。
 しかし慣れてみればこれでもさほど仕事や生活に支障がありません。傍から見れば何と不便なと思われるでしょうが、何とかなるものです。

 12月新刊の『考える障害者』の著者は「車椅子芸人」のホーキング青山さん。生まれつき手足が不自由なホーキングさんは、それを逆手に取った芸風で、もう20年以上活動しています。ここで「障害はハンデじゃない。個性だ」と言えば、とてもカッコよくて世間体はいいのですが、ホーキングさんはそんな通り一遍のことは決して言いません。障害の大変さも率直すぎるほど率直に伝えています。
 忖度も遠慮もぬき、前代未聞、本音度100%の障害者論です。

 他の新刊3点もご紹介します。

日本人と象徴天皇』(「NHKスペシャル」取材班)は、戦後、天皇陛下がどのように「象徴」としての地位を確立していったかを描いたドキュメント。さすが「NHKスペシャル」というクオリティです。元号が変わる前に国民全員が知っておくべき歴史がコンパクトにまとまっています。
「ポスト宮崎駿」論―日本アニメの天才たち―』(長山靖生・著)は、アニメファンはもちろんのこと、「君の名は。」の大ヒットに関心を持った方なら確実に楽しめる1冊。あの作品の何が新しかったのか、なぜヒットしたのか等々がとてもクリアーにわかりますし、それ以外の才能についても俯瞰できます。
血圧と心臓が気になる人のための本』(古川哲史・著)は、タイトル通りです。「薬は一度飲み始めたらやめられないのでしょうか」等、実際に診察室に行くと聞きづらいような素朴な疑問に、医師である著者が最新の研究成果を踏まえてとても丁寧に答えてくれています。

 そろそろスマホにしなければいけないけれども下手にいじって先輩に殴られるのは嫌だ。そんなことを考えている年末です。
 今年もお世話になりました。今月も新潮新書をよろしくお願いします。
2017/12