新潮新書

今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

岩波新書の話

 少し前に岩波書店の方から、PR誌「図書」の増刊のためのアンケートに答えてほしいという依頼を受けました。岩波新書創刊80年記念号で、各社の新書編集長に「編集長がすすめる『はじめての新書』5冊」ということで尋ねているとのことでした。
 もちろん喜んでお答えしました。岩波書店の刊行物に名前が載るなんてことは滅多にないことです。
 その記念号が先日送られてきました。カットされることもなく、私の回答もきちんと載っています。他の版元の編集長へのアンケート以外に、いろいろな筆者のすすめる3冊という企画も掲載されていました。
 ちょっとだけ悔しいのは、そんなにたくさん新潮新書の書名が挙げられていなかったことですが、しかし歴史の違いを考えれば当然でしょう。まだ新潮新書は創刊して14年ちょっと。岩波、中公、講談社あたりとは歴史が違います。
 先方がどう思っているのかは知りませんが、ライバル、あるいは商売敵であっても、こんな風に協力しあえるのはいいことだなあと思いました。もっとも、本音を言えば新刊が出るたびに自分のところが他社よりも売れることを切望しているのですが。

 そんなわけで10月の新刊4点をご紹介します。

受験と進学の新常識―いま変わりつつある12の現実―』(おおたとしまさ・著)は、お子さんをお持ちの方なら必ず読みたくなるはずの1冊です。学校選びはもちろん、塾選びにも予備知識が必要になっているうえ、その状況は変化し続けています。いま、たとえ「お受験なんかさせるつもりはない」と思っていても、お子さんのために知っておいて損はない情報が満載です。

米韓同盟消滅』(鈴置高史・著)は、韓国外交の危うさの本質を説きながら、これからの東アジア情勢を見通した論考。南北融和でよかったよかった、なんて簡単な話ではないことがよくわかります。

墓が語る江戸の真実』(岡崎守恭・著)は、歴史上の人物の墓を巡り、その大きさや、隣の人との位置などを見て、その人間関係や背景を探った歴史読み物。著名人の墓巡りが好きな方にも歴史好きにも満足いただける内容です。

払ってはいけない―資産を減らす50の悪習慣―』(荻原博子・著)は、経済ジャーナリストである著者が、「やってはいけない」投資から「やってもムダ」な節約、「入ってはいけない」保険まであらゆる分野について遠慮忖度なく「NO」をつきつけた資産防衛入門。個人的には「スーパーは野菜売り場から回ってはダメ」という指摘に、最初は「何でだよ」と反発しながら最後は反省、納得させられました。

 あたりまえですが、岩波はじめ他社の新書では読めない内容ばかりなので、今月も新潮新書をよろしくお願い申し上げます。
2018/10