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今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

「場当たり的」の話

 大ヒットしている映画『ボヘミアン・ラプソディ』については、いろんな人がいろんな分析をなさっています。私が感じたのは、ドラマチックな作品は、制作過程も往々にしてドラマチックで、その手の裏話には多くの人を惹きつける力がある、ということでした。自分がいい年をこいて、いまだに子供の頃と同じように音楽雑誌を一所懸命読んでいるのも、そういう話を知りたいからなのだろうと思います。

 2月の新刊『ドラマへの遺言』(倉本聰碓井広義・著)では、ドラマ界の生きる伝説である倉本さんが、自作やテレビ界の裏話をたっぷりと語っています。倉本さんの有名な逸話の一つがNHKの大河ドラマ「勝海舟」を途中降板した、というものです。そこで何があったのか、といった話もフランクに明かしていて、実にドラマチックです。「前略おふくろ様」「北の国から」から、最新作「やすらぎの刻~道」まで、本人しか語れない秘話満載。
 ファンが多いだけに、ゲラの時点で「読みたい」という声が社内各部署から上がり、読んだ人がみな「めちゃくちゃ面白かった」と言っています。

 他の新刊3点をご紹介します。

新冷戦時代の超克―「持たざる国」日本の流儀―』(片山杜秀・著)は、混沌とした世界の状況を俯瞰しつつ日本、日本人の選ぶべき道を示した1冊。アメリカも中国もロシアも勝手を言って、朝鮮半島もなんだかまったく落ち着かない。そんな様子を見て、頭を整理したい方のための羅針盤となるはずです。

日本共産党の正体』(福冨健一・著)は、「共産主義って何?」「日本共産党ってどういう党?」といういまさら聞きづらいような初歩的な問いに答えつつ、よりディープなところまで踏み込んだ入門書。実は日本以外ではほぼ共産党は死滅状態だということは、意外と知られていないのではないでしょうか。党員の方々が読んでハッピーな気持ちになるかどうかは保証の限りではない内容ではありますが。

「承認欲求」の呪縛』(太田肇・著)は、SNS関連の事件などで聞く機会が増えた「承認欲求」の持つ厄介な性質を解明し、その対処法まで示した1冊。厄介なのは、承認欲求を満たせば皆が満足できるかといえばそうでもない点、という指摘にはハッとさせられました。「叱るよりもほめて伸ばす」という方法が持てはやされています。その背景には相手の承認欲求を満たす、という考え方があるのです。
 しかし、著者によれば、場合によってはほめることが相手に過度なプレッシャーを与えることにもなるというのです。実際に、ある組織では表彰された人から辞めていったことがあったそうです。叱ってもダメ、ほめてもダメ。一体どうすりゃいいんだよ、という方こそ読んでみてください。

 ただ、基本的に私たち編集部はほめられて伸びるタイプですので、今月も新潮新書をよろしくお願いします。
2019/03