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今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

16周年のごあいさつ

 社会学者の古市憲寿さんは、テレビの人気コメンテーターでもあり、今では作家でもあります。前者についていえば、コメントの独自性や的確さが人気の一因でしょう。
 4月の「新潮新書創刊16周年フェア」に関連して、そのコメント力を改めて認識させられたことがありました。今回は新しい試みとして、古市さん推薦の既刊3点に、推薦コメントを入れたオビを巻くことにしたところ、どのコメントもとても良いのです。
戦略がすべて』(瀧本哲史・著)、『脳が壊れた』(鈴木大介・著)、『コンビニ外国人』(芹澤健介・著)に寄せられたコメントは、いずれも短いながらも、本の魅力を伝えていて、開いてみたくなるものばかり。文章のリズム感もよく、推薦文のお手本のようなクオリティで、部員一同うならされました。フェアは4月中旬以降、あちこちの本屋さんでやってくださっているはずなので、ご興味のあるかたは書店でご覧になってみてください。

 4月の新刊のうちの1冊は、その古市さんの『誰の味方でもありません』。
 このタイトルのようなスタンスも、人気の秘密のひとつでしょう。とかく特定の主義主張にこだわって、他人を激しく攻撃する人が目立つなか、古市さんは常にフェアであろうとしているように見えます。さまざまな社会事象を扱った本書を読むと、その貴重さがよくわかります。

 他の3点もご紹介します。
1本5000円のレンコンがバカ売れする理由』(野口憲一・著)は、本当にレンコン1本を5000円で売ることに成功した農家の話。著者の野口さんは、代々続くレンコン農家の跡取りにして民俗学者でもあるという異色の二刀流。そのマーケティングとブランディングの手腕には、ビジネスマンも大いに刺激を受けるはずです。

パスタぎらい』(ヤマザキマリ・著)は、人気漫画家が世界各地で食べてきた美味しいもの、変わったものについて縦横無尽に語ったエッセイ。イタリア在住ということで、勝手にパスタ大好きでしょ、と思われがちだけれども、「世の中にはパスタより美味しいものがいっぱいある!」というのがタイトルの由来。よくまあこんなに食べたものについて憶えていらっしゃるものだと感服しました。

総理の女』(福田和也・著)は、伊藤博文から東條英機まで、歴代総理の正妻や愛妾にまつわるエピソード集。惚れた遊女をさらって正妻に、という話など、教科書には絶対に載らない、しかし宰相たちの本質を知るのには格好のテキストです。

 おかげさまでなんとか16周年を迎えることができました。
 これからもどうかよろしくお願い申し上げます。
2019/04