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今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

あらゆる「秘密」を解き明かす

 野球世界一を競い合う4年に一度のイベント、WBCが近づいてきました。5回目となる今大会は大谷翔平やダルビッシュ有らメジャーリーガーをはじめ、村上宗隆や佐々木朗希などケタ外れのタレントがともに戦うとあってチケットはすでに完売(出遅れました、残念!)、かつてないほど注目度が高まっています。
 2月新刊『山本由伸 常識を変える投球術』(中島大輔・著)は、その侍ジャパンの投の柱として期待される、現在のプロ野球界最高の投手・オリックスの山本由伸に迫ります。投手の常識を一変させる独自の方法で圧倒的成績をたたき出している山本ですが、そのベースであるBCエクササイズというトレーニング理論、ブリッジ、やり投げなど野球選手には縁遠いメニューの効用からピッチング技術、体力や思考法まで劇的バージョンアップの秘密を野球に精通した著者が解き明かします。
「NHKは公平性を保つために受信料で支えなくてはならない」――日本人の多くは長らくこんなリクツを信じ込まされています。『NHK受信料の研究』(有馬哲夫・著)では、世界を見れば広告収入を得ている公共放送が数多くあり、そもそも戦後GHQは受信料の強制徴収など求めていなかった史実を明らかにします。なぜこんないびつな制度が生まれ、いまだ生きながらえているのか。なぜNHKだけが競争もないまま多額の資金を徴収し、プールすることが許されるのか。巨大メディアのタブーに斬りこむ刺激的論考です。
ボブ・ディラン』(北中正和・著)は、「風に吹かれて」「ライク・ア・ローリング・ストーン」など多くの傑作を生む一方、ピュリッツァー賞やノーベル文学賞などミュージシャンの枠を超えて評価され続けるのはなぜなのか、ポピュラー音楽と世界の民族音楽に造詣が深いベテラン音楽評論家がデビュー以来60年の足跡をたどり、80歳を超えた今もツアーを続ける"伝説の巨人"の凄みと秘密を、21世紀の新たな視点から探りだします。
 2月1日に先行発売となった『脳の闇』(中野信子・著)が大反響です。社会集団の中で、人は誰もが承認欲求と無縁ではいられません。いつも周りを気にしながら無意識の情動に流されていて、そのくせあいまいで不安な状態を嫌い、他者を批判し自らを正義に置くことで安心を得たがる――そうした病理を浮き彫りにするとともに、自身の人生と脳科学の知見を通してヒトの脳の秘められた作用を解き明かします。連載5年にわたった思考の軌跡を凝縮した、衝撃の論考です。
2023/02