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今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

2023年の始まりに

 新しい年が始まりました。あらゆる作業が前倒しになる年末進行と、その後の正月休みでボケた頭を再び通常モードに切り替えるこの時期は、受験や就活シーズンの始まりでもあります。もう30年以上前になりますが、新潮社の入社試験で作文を書かされました。お題は「毒」。中身は忘れてしまいましたが、人も世間も正しいことばかりではない、毒には毒の意味があるのでは、みたいなことを書いた記憶があります。


 1月新刊『正義の味方が苦手です』(古市憲寿・著)は、『誰の味方でもありません』『楽観論』に続く、「週刊新潮」人気連載から生まれた第3弾。昨年は大きな戦争が起こり、元総理が暗殺され、コロナ禍が続きました。変化の大きい時代、事あるごとに語られる正論や糾弾は、正直言ってあまり心地いいものではありません。感情論にばかり振り回される前に、現実を前に自ら立ち止まって考えるヒントが盛りだくさんです。
悪さをしない子は悪人になります』(廣井亮一・著)は、長年、家裁調査官をつとめた著者(現在、立命館大学教授)が少年非行とリアルに向き合ってきた経験から、成育の過程で「悪」を排除されすぎると、かえって善悪を判断する能力が育たなくなるというメカニズム=「悪理学」を解説。「司法による矯正」と「個々の少年の事情に即した臨床」のバランスで、非行から更生に導く様々な方法を紹介します。
患者が知らない開業医の本音』(松永正訓・著)は、異色の医療ドキュメント。小児難病が専門だった大病院の医師がある時、脳動脈瘤という難病と判明します。激務の勤務医から転身を余儀なくされて小児科クリニックを開業、鼻血から難病にクレーマーまで幅広い患者に対応しながら、スタッフを抱える経営者として苦労の連続です。患者にはうかがい知れない開業医のリアルと本音をすべて明かします。

 2023年は新潮新書の創刊からちょうど20年。これまでのご愛顧に感謝するとともに、今後ともよろしくお願いいたします。
2023/01