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しゃばけ

畠中恵/著

693円(税込)

発売日:2004/04/01

書誌情報

読み仮名 シャバケ
シリーズ名 新潮文庫
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-146121-2
C-CODE 0193
整理番号 は-37-1
ジャンル 文芸作品、歴史・時代小説
定価 693円
電子書籍 価格 693円
電子書籍 配信開始日 2020/04/03

えっ、虚弱な若だんなと妖怪コンビが猟奇事件を解決!? 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。

江戸有数の薬種問屋の一粒種・一太郎は、めっぽう体が弱く外出もままならない。ところが目を盗んで出かけた夜に人殺しを目撃。以来、猟奇的殺人事件が続き、一太郎は家族同様の妖怪と解決に乗り出すことに。若だんなの周囲は、なぜか犬神、白沢、鳴家など妖怪だらけなのだ。その矢先、犯人の刃が一太郎を襲う……。愉快で不思議な大江戸人情推理帖。日本ファンタジーノベル大賞優秀賞。

  • 受賞
    第1回 吉川英治文庫賞
  • 受賞
    第13回 日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞
  • 舞台化
    ミュージカルしゃばけ(2017年1月公演)
  • 舞台化
    しゃばけ(2013年4月公演)
  • テレビ化
    しゃばけ(2007年11月24日(土)放映)

インタビュー/対談/エッセイ

大好評配信中のしゃばけアニメについて、伊藤監督と主演の榎木氏が語る!

伊藤秀樹榎木淳弥

「若だんな」というキャラクター

伊藤 若だんなは複雑なキャラだから、演じるのは難しかったでしょう。

榎木 そうですね。最初のテイクではちょっと元気が良過ぎたのですが、監督のアドバイスで病弱な部分はより病弱に、対決場面ではより力強く、とメリハリが出るようにしました。

伊藤 一太郎はたおやかな印象を与えるけれど、芯にはものすごく熱く強いものがある。その相反する要素を表現しなければならないんですよね。

榎木 3分という短いアニメなので、普通は30分のアニメで表現するものをなるべく凝縮して伝えようと心がけました。

伊藤 とても陰影のある芝居をしていただき、榎木さんの「一太郎」になっていました。本当に良かったです。

榎木 ありがとうございます。監督は「しゃばけ」シリーズはもともとご存じだったのですか?

伊藤 自分でも意外ですが、実は全然知らなかったのです。20年も続く有名なシリーズなのに。

榎木 僕は同じ畠中恵先生原作の『つくもがみ貸します』のアニメ化でも主人公の清次を演じていたので、作品のことは知っていたのですが、読むのははじめてで。とても親しみやすいお話ですよね。

伊藤 そうですね。でも、アニメ化のお話をいただいてから絵コンテを描くまで時間の余裕がなかったので、楽しみつつも必死で読んでいました。

榎木 今回は第一作『しゃばけ』だけではなく、シリーズの様々な作品の名場面が入ったアニメになっていますよね。相当読み込まれましたか?

伊藤 原作を読みながら「これは映像化するのは楽しそうだ」と思いつつ、気になった場面にどんどん付箋をつけて構成案を考えていきましたが、取捨選択に悩みました。

榎木 監督が一番力を入れたシーンはどこでしたか?

伊藤 「おまけのこ」で鳴家が川の主の鯉に出会う場面ですね。あそこは一生懸命描きました。それと、『うそうそ』の弁財船の場面も描いていて本当に楽しかった。江戸時代の船の構造って面白いんですよ。実は昔、大工をやっていたこともあって、船大工になりたいなあ、と思いながら描いていました(笑)。

榎木 それは意外でした(笑)。どれもほんの一瞬の場面でしたよね。

伊藤 いまは無くなってしまった江戸の風景、というものに憧れがあるんですよね。本当はトキの群れなんかが飛んでいたんじゃないかな、などと想像しながら描くのは楽しかったです。

アニメーションと時代もの

榎木 アニメで時代劇って、実は珍しい。時代考証などは相当苦労されたのではないですか?

伊藤 歴史時代ものを手がけるときは、資料に当たるのが楽しくもあり大変でもあり。特に江戸時代は資料が山ほどあるので。だから時間との勝負で、どこかで踏ん切りをつけなくてはならないんです。『しゃばけ』では、以前『四谷怪談』のアニメをやったときの蓄積がものを言いましたが、はじめてだったら大変だったと思います。

榎木 なるほど。でもアニメには自由さもありますよね。『つくもがみ貸します』は江戸時代が舞台ですが、清次の髪型はざんぎり頭で、他にも現代風のアレンジが加えられていました。

伊藤 畠中先生も何かのインタビューでおっしゃっていたと思うのですが、きちんと時代考証をしつつ、どこまで現代的な要素を入れるか、というバランスが本当に難しい。というのも、本気で江戸時代を再現しようとすると、現代の読者には理解できない、違和感のある作品になってしまうんですよ。

榎木 そのバランスが、今回のアニメーションでは原作に忠実になっていると思いました。

伊藤 原作の柴田ゆうさんの装画は、柔らかく簡素に描かれていますが、裏にしっかりとした考証と意志があります。僕も当時の衣装や鳥山石燕の画など資料にいろいろ当たりましたが、柴田さんの絵がそうしたものを踏まえていたので、「結局これでいいのか」と(笑)。演じる側としては時代を意識されたことはありますか?

榎木 ダミ声で巻舌風に「てやんでぃ」とか、いわゆる「江戸時代っぽさ」は出さず、作り込まないようにしました。

伊藤 確かに自然な喋り方でしたね。

榎木 YouTubeで100年前の人々の会話音声が聴けるんですが、言葉遣いこそ昔風だけど、発声の仕方は変わらない。だから江戸時代の人もそうだろう、と。勝新太郎の「座頭市」を見たことも大きかったですね。変に作らない演技が印象的でした。

伊藤 なるほど。勉強されているんですね。狭き門をくぐりぬけただけあって、最近の声優さんは皆さん本当に上手です。

榎木 皆、勉強熱心ではありますね。僕も役者仲間数人で、メソッド演技論など芝居に関する本を読んで意見交換をしたり、学んだことをトレーニングとして実践したりしてます。役に立つ立たないはありますけど(笑)。

伊藤 人気と実力があるのに常に努力していて、素晴らしいですね。

榎木 競争社会ですから(笑)。

(いとう・ひでき アニメーション監督)
(えのき・じゅんや 声優)
波 2021年12月号より

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コラム 新潮文庫で歩く日本の町

宮崎香蓮

 畠中恵先生原作の舞台「若様組まいる」(天王洲銀河劇場八月七日~十四日)に出演させて頂きます。明治二十年の東京で、旧旗本の若様たちが巡査になろうと思い立って教習所に入ってきます。そこには官軍だった薩摩組や、慶喜について行った静岡組、平民組などがいて軋轢も起きる中、ある事件が……。私は、主人公が恋ごころを寄せる大商家のお転婆お嬢様役。
 そんなご縁があって、手にしたことがなかった畠中さんの超人気作『しゃばけ』を読んでみたのですが見事にハマりました!
 シリーズ累計七百万部(!)を超えるという作品を今更紹介するのもアレですが――江戸の大きな廻船問屋兼薬種問屋・長崎屋の若だんな一太郎はめっぽう体が弱く、両親からは「大福餅の上に砂糖をてんこ盛りにして、その上から黒蜜をかけたみたい」に溺愛され、さらに手代たち(正体は犬神や白沢はくたくといったあやかしたち)に守られてもいる。ある夜、こっそり外出した一太郎は人殺しを目撃してしまうが……。
 なぜ一太郎は妖たちと喋ったりできるのか? そんな疑問の湧く間もなく(この謎は後で解かれます)、するすると作品世界へ入りこんでしまいます。時代はハッキリしないのですが、いかにも江戸らしい空気感や、今も残る地名がいくつも出てきて(物語の冒頭で一太郎は殺人を目撃した湯島聖堂前から坂を過ぎて昌平橋、筋違橋御門すじかいばしごもん前、須田町を通り、日本橋を渡って道なりに長崎屋まで帰っていく)、気分はファンタジーというよりリアルな時代小説そのものに見えます。江戸の人びとは妖(屏風のぞき、鳴家やなり、野寺坊など沢山登場します)の存在を信じていたかもしれず、そう考えるとこの小説は妙な具合にますますリアルな感じで迫ってきます。
 そして私は池波正太郎さんの『剣客商売』の時と同様、この柔らかな世界に浸っていたくなりました。〈ここ、好き〉という感覚。小兵衛やおはるがいる世界に住みたくなるように、一太郎や佐助(犬神)や仁吉(白沢)がいる家に泊りたくなります。この読者を巻き込み、もてなす力が凄い。
 そしてやはり池波さんと同じく、畠中さんも人生の苦いところを味わわせてくれます。長崎屋の北隣にある菓子屋・三春屋の跡取り息子栄吉は一太郎の親友ですが、菓子作りが苦手で、悩んでいます。決して仲違いをしたり返事を求めたりする口調でなく、栄吉は告げます。「(一太郎が)うらやましくてたまらないんだよ。(略)おじさんは、仕事をしないからってお前を叱ることはないんだろう?」。
 栄吉の悩みを理解しながらも、一太郎は「大笑いの発作を起こしそうになった。店ではたびたび小言が降ってくる。ただしそれは、張り切って仕事をしようとすると、言われるのだ。父が、母が、妖達が一太郎の指先から仕事を大急ぎで取り上げてゆく。(略)何もできない幼子のような気分になってたまらないと、そう目の前の幼馴染みに言えたらと思う。(略)贅沢な考えだと言われるのがおちだった。まったくそのとおりだと、一太郎自身、そう思っているのだから。/笑い出したいのか、泣き言を言いたいのか、喉の奥が震えて返す言葉が出ない」。こんな繊細な心を持った主人公(と親友たち)のいる世界だから、浸っていたいのです。


(みやざき・かれん 女優)
波 2016年7月号より

どういう本?

一行に出会う

今は一太郎が決めなければならない時なのだ。(本書286ぺージ)

著者プロフィール

畠中恵

ハタケナカ・メグミ

高知県生れ、名古屋育ち。名古屋造形芸術短期大学卒。漫画家アシスタント、書店員を経て漫画家デビュー。その後、都筑道夫の小説講座に通って作家を目指し、『しゃばけ』で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞。また2016(平成28)年、「しゃばけ」シリーズで第1回吉川英治文庫賞を受賞する。他に「まんまこと」シリーズ、「若様組」シリーズ、「つくもがみ」シリーズ、『アコギなのかリッパなのか』『ちょちょら』『けさくしゃ』『うずら大名』『まことの華姫』『わが殿』『猫君』『御坊日々』などの作品がある。また、エッセイ集に『つくも神さん、お茶ください』がある。

畠中恵「しゃばけ」新潮社公式サイト (外部リンク)

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