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ころころろ

畠中恵/著

693円(税込)

発売日:2011/11/29

  • 文庫
  • 電子書籍あり

《祝》10周年&累計500万部突破! 若だんな、今度は神様に祟られた!? 長崎屋を揺るがす災厄に妖たちは――急展開のシリーズ第八弾!

ある朝突然、若だんなの目が見えなくなってしまったからさあ大変。お武家から困ったお願いごとを持ち込まれていた長崎屋は、さらなる受難にてんやわんやの大騒ぎ。目を治すための手がかりを求め奔走する仁吉は、思わぬ面倒に巻き込まれる。一方で佐助は、こんな時に可愛い女房をもらっただって!? 幼き日の一太郎が経験する淡い初恋物語も収録された、「しゃばけ」シリーズ第八弾。

  • 受賞
    第1回 吉川英治文庫賞
  • 舞台化
    ミュージカルしゃばけ(2017年1月公演)
目次
はじめての
ほねぬすびと
ころころろ
けじあり
物語のつづき
〈スペシャル対談〉萩尾望都×畠中恵

書誌情報

読み仮名 コロコロロ
シリーズ名 新潮文庫
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
頁数 352ページ
ISBN 978-4-10-146128-1
C-CODE 0193
整理番号 は-37-8
ジャンル 歴史・時代小説
定価 693円
電子書籍 価格 649円
電子書籍 配信開始日 2020/04/03

インタビュー/対談/エッセイ

来年の初夢は、みんなで楽しく遊びましょう

畠中恵

累計360万部を突破し、巻を重ねるたびに新たなファンを増やし続けている「しゃばけ」シリーズ。最新刊『ころころろ』を書くにあたっては、はじめての経験をしたという畠中恵さんに、話を伺いました。

はじめての経験

――「しゃばけ」シリーズ最新刊『ころころろ』が、七月三十一日に発売になります。早く夏にならないかなあと、首を長くして待っている全国の熱烈な「しゃばけ」ファンの姿が目に浮かぶようですが。

畠中 デビュー作の『しゃばけ』からシリーズ第二弾『ぬしさまへ』までは一年半ほど間があきましたが、三作目の『ねこのばば』以降、毎年ほぼこの時期に新作を刊行というペースで書いてきました。以前のインタビューで言ったかと思うのですが、「しゃばけ」の世界を書き始めるとホームグラウンドに戻ってきたような気がして、いつもほっとします。

――これまでも一冊分を書き終えると、一編一編はばらばらなのに不思議と全編を通じて潜在的な部分でのつながりが出てくるとおっしゃっていましたが、今作はまさに「長編」といってもいいような印象を受けました。

畠中 『ころころろ』は長編テイストの濃い連作短編集といえばよいのでしょうか。収録された五本の作品それぞれが独立した短編であると同時に、一編目の「はじめての」から最後の「物語のつづき」までの背景には、一太郎の目から奪われた光りを取り戻すという物語がありますので。

――最初からそういった構想があったのですか?

畠中 書き始める前からあったわけではありません。「はじめての」を書きながら、第八弾はどういう形に話を広げていこうかと考えているときに、ふっと全体の流れが見えてきたのです。ただ、今回は書きづらい部分もあって、とても苦労したんですよ。

――どういったところが難しかったのでしょうか?

畠中 若だんなを中心とした語りでお話を進める場面では、これまでだったら「仁吉がにやっと笑った」とか「鳴家がぽてぽて歩いている」など一太郎が目で見たものを文章で表現することができました。それが、今回はできなかったのです。若だんなは、自分の周りの状況を視覚的に把握することが不可能なのですから。耳から情報を得て、それではじめて何が起こっているかがわかるようにしなければいけませんでした。具体的には、こういうことです。誰かの声が聞こえ、その音から若だんなが推測できること、たとえば「そこにいるのは屏風のぞきかい?」と実際に口に出して尋ねる。そうやって問いかけを重ねることで、シーンを説明していかなければいけなかったのです。そういうやり方をしたことがこれまでなかったので、非常に面白くもあったけど、大変でした。

――小説ならではの困難といってもいいかもしれませんね。

畠中 確かに映像作品ではなく、小説だからこその難しさだったのかもしれません。映像であれば若だんなを中心にわいわい騒いでいる妖たちがいる、というシーンを映せばそれで状況が分かるわけですから。逆に映像では決してできないちょっとしたサプライズも……。

――ネタバレになるのでどの作品かは、ご勘弁を。

畠中 わかりました(笑)。あの部分は、読んでくださる方に全体像が見えない状態から、情報を少しずつ明らかにすることで「はっ」という驚きが生まれるという、小説にしかできない方法ですね、確かに。

二人の手代が困ってます

――若だんなが「はじめての」で、大人への階段を上ったり、『ちんぷんかん』所収の「鬼と小鬼」で火事になって以来の危機に長崎屋が瀕したりと、ファンにとっては、どきどきのエピソードが盛りだくさんですが、なんといっても一番気になるのは佐助に妻ができたということではないでしょうか。

畠中 困ってましたね佐助さん。困っているけど、大丈夫そうな感じがするから不思議ですねえ。でも、やっぱり困ってるんですけど(笑)。どんな女房なのかは装幀にも顔を出して、いや姿が描かれておりますので、みなさま書店にてお確かめくださいませ。帯をめくると、ひどい目にあった屏風のぞきも見られます。

――屏風のぞきは、本当にかわいそうでした(笑)。佐助に負けず劣らず仁吉も困ってましたね。人がいいというか、妖がいいというか。困る理由も仁吉らしいといえばその通りなんですが。

畠中 責任感が強いからこそどんどんどつぼにはまっていっちゃう。困らせてみたかった戯作者がどこかにいたんでしょうねきっと、と言ったら仁吉さんに怒られてしまうかもしれませんけど(笑)。ですが、本当に久しぶりに、手代の二人がメインとなる話がそれぞれ一編ずつ入っていますので、仁吉さんと佐助さんの困りっぷりを比べてみるのも楽しいかもしれません。いつもより多めに兄やたちを困らせてみましたので(笑)。

――『ころころろ』というタイトルも、音の響きがかわいらしくて、素敵ですね。お話をうかがっていると、仁吉と佐助が、困りながらころころ転げまわっている絵が浮かんできました。

畠中 ありがとうございます。そう言っていただけると困らせた甲斐がありました(笑)。実際は、三編目の「ころころろ」にこの音が聞こえてくるシーンがあります。語感はかわいらしいんですけど実はちょっと切ない音、怖い音でもあるのです。

――そういえば、「ころころろ」にはむかし出てきたあれが再登場し、重要な役割を担うことにもなりますね。

畠中 まさかこういう形で出てくることになるとは、私も思っていませんでした。

ますます盛り上がる「しゃばけ」ワールド

――「しゃばけ」シリーズは、夏に単行本、秋から冬に文庫本という刊行スケジュールが毎年続いていますが、今年はそれに加えて、絵師の柴田ゆうさん描き下ろしのカレンダーが発売になります!

畠中 本当に素敵なカレンダーですね。読者の皆様にも早く手にとっていただきたいです。カレンダーを買ってくださったみんなと、一緒にやりたいこともありますので。

――どういったことを?

畠中 カレンダーの一月がしゃばけオールスターの宝船の絵になっています。一月一日の夜にはその絵をカラーコピーしたものを枕の下に入れていただく。「ながきよの とをのねぶりの みなめざめ なみのりふねの おとのよきかな(長き夜の 遠の眠りの 皆目覚め 波乗り船の 音の良きかな)」と書き付けた紙も一緒に。昔から一月一日に、枕の下に宝船の絵とこの回文の歌を入れて眠るといい初夢がみられるといわれています。その宝船に、「しゃばけ」シリーズの仲間たちが乗っているわけですから、素敵な絵の力を借りて、オンラインのロール・プレイング・ゲームではないですが、夢の世界で若だんなや妖たちと楽しく遊びましょう!

――夢の中で、鳴家に饅頭や玉子焼きを食べさせたり、若だんなとはしゃぎすぎて、仁吉にじろっとにらまれたりできたら、本当に楽しいでしょうね。さらに、『ころころろ』の発売にあわせて「しゃばけ」川柳を大募集することにもなりました。

畠中 どういう作品を送ってくださるのか、わくわくしています。おもしろいですよね。ペットボトルのお茶のラベルなどに載っている感じでどうでしょう。川柳、好きです。

――好きという言葉をうかがったので、突然で申し訳ないのですが、ぜひ、ここで川柳を。

畠中 いきなりですか(笑)。ちょっとお時間をください…………。はい、できました。

――ありがとうございます!

畠中 ころころろ 俺が主役だと 屏風のぞき。あっ、字余りだ。もうひとつ、仁吉兄や あなたを一度 困らせたい。ん、また余った。皆様、一字、二字の字余りは気にしないで、どしどしご応募くださいませ(笑)。最後にもうひとつ、鳴家たち みんなでそろって ころころろ。

――川柳大募集だけでなく、恒例の「しゃばけ祭り」も開催されます。今回のプレゼントは「江戸うちわ」です。

畠中 「祭り」のときに読者の方からいただく葉書を読むのが、楽しみなんです。励みになるメッセージやイラストを見ると、本当に一生懸命描いてくださっているのがわかって。

――では最後に、読者へのメッセージをお願いします。

畠中 「江戸うちわ」は、太田屋さんという老舗の工房が作ってくださるそうで、デザインも江戸の粋が伝わってくる格好いいものです。競争率は高いかもしれませんが、みなさまどしどしご応募ください。そして、来年の初夢。みんなで楽しく遊びましょう。若だんなも鳴家たちも、もちろん戯作者も楽しみにしています。

(はたけなか・めぐみ 作家)
波 2009年8月号より
単行本刊行時掲載

著者プロフィール

畠中恵

ハタケナカ・メグミ

高知県生れ、名古屋育ち。名古屋造形芸術短期大学卒。漫画家アシスタント、書店員を経て漫画家デビュー。その後、都筑道夫の小説講座に通って作家を目指し、『しゃばけ』で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞。また2016(平成28)年、「しゃばけ」シリーズで第1回吉川英治文庫賞を受賞する。他に「まんまこと」シリーズ、「若様組」シリーズ、「つくもがみ」シリーズ、『アコギなのかリッパなのか』『ちょちょら』『けさくしゃ』『うずら大名』『まことの華姫』『わが殿』『猫君』『御坊日々』『忍びの副業』などの作品がある。また、エッセイ集に『つくも神さん、お茶ください』がある。

畠中恵「しゃばけ」新潮社公式サイト (外部リンク)

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