今月号の表紙は、佐藤優さん。
波 2017年8月号
(毎月27日発売)
発売日 | 2017/07/27 |
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JANコード | 4910068230874 |
定価 | 102円(税込) |
[ジョン・アーヴィング『神秘大通り』刊行記念インタビュー]
ジョン・アーヴィング/25年越しの小説が完成するまで
佐藤 優『学生を戦地へ送るには―田辺元「悪魔の京大講義」を読む―』
山折哲雄/田辺元の思想的転回と「懺悔道」
畠中 恵『とるとだす』
神楽澤小虎/愛される宿命
瀬尾まいこ『君が夏を走らせる』
あさのあつこ/大田君、逢いたかったよ。
上田岳弘『塔と重力』
倉本さおり/その名は、文学。
テジュ・コール、小磯洋光/訳『オープン・シティ』(新潮クレスト・ブックス)
柴崎友香/一人の声では語ることのできない現実
[特別寄稿]
黒柳徹子/ここに立つのは私ではなくて 永六輔さんへの弔辞
[特別企画]
平松洋子/銀の皿――新潮社社食の半世紀(上)
[神楽坂ブック倶楽部イベント詳報!]
[講座]鳥海 修/あなたは今、どんな書体で読んでいますか?【前編】
[『迷―まよう―』『惑―まどう―』刊行記念座談会]
乙一×近藤史恵×永嶋恵美/「恋愛」はダメで、「迷惑」がいい私たち
雛倉さりえ『ジゼルの叫び』
文月悠光/死の物語を生きる少女たち
雪舟えま『パラダイスィー8』
平野紗季子/そのまなざしにあやかることで。
佐藤 卓『塑する思考』
芦澤泰偉/間に入って繋ぐこと
玉置標本『捕まえて、食べる』
椎名 誠/どんどん捕って食ってほしい
白戸圭一『ボコ・ハラム―イスラーム国を超えた「史上最悪」のテロ組織―』
小倉孝保/世界で最も危険な組織
岡田秀之『かわいい こわい おもしろい 長沢芦雪』(とんぼの本)
井浦 新/品性と奇想のある画家
伊東ひとみ『地名の謎を解く―隠された「日本の古層」―』(新潮選書) 三浦佑之/地名に宿る呪性やことばの重みを知る
ドナ・タート、吉浦澄子/訳『黙約』上・下(新潮文庫)
吉野 仁/スパゲティーをゆでるどころではない
須賀しのぶ『夏の祈りは』(新潮文庫)
吉田伸子/野球を愛する全ての人へ
【コラム】
スージー鈴木『サザンオールスターズ 1978-1985』(新潮新書)
スージー鈴木/サザンを正しく語りたい
とんぼの本編集室だより
日下部五朗『シネマの極道―映画プロデューサー一代―』
宮崎香蓮/新潮文庫で歩く日本の町
谷口幸男『エッダとサガ―北欧古典への案内―』(新潮選書)
新城カズマ/神話と伝説の国へ誘う「古典」復刊
【連載】
ジェーン・スー/生きるとか死ぬとか父親とか 最終回
堀本裕樹、穂村 弘/俳句と短歌の待ち合わせ 第48回
野村 進/多幸感のくに 第9回
山下洋輔/猛老猫の逆襲 山下洋輔旅日記 第17回
津村記久子/やりなおし世界文学 第39回
谷川ゆに/境界紀行 たましいの行方をさがして 第5回
瀧井朝世/サイン、コサイン、偏愛レビュー 第89回
戌井昭人/煙たかろう、さのよいよい 第8回
佐藤賢一/遺訓 第20回
編集室だより 新潮社の新刊案内 編集長から
立ち読み
編集長から
今月号の表紙は、佐藤優さん。
◇今月号の表紙は佐藤優さん。神楽坂駅前に教室を持つ新潮講座でのヒトコマです。この新潮講座にはいろんな形があるのですが、佐藤さんの最新刊『学生を戦地へ送るには―田辺元「悪魔の京大講義」を読む―』は、箱根のホテルで三十数名の参加者を相手に2泊3日の集中合宿として行われた講義録。この9月頭には「危機研究の名著『失敗の本質』を読む」と銘打って、京都で2泊3日の講義合宿を行う予定です。
◇『学生を戦地へ送るには―田辺元「悪魔の京大講義」を読む―』は、昭和15年のベストセラー田辺元『歴史的現実』を一行一行読み解きながら、当時の若きインテリ層が熱烈に支持した田辺の論理的陥穽を暴き立てていきます。しかしそれは見るからにインチキなものでは決してなく、学生たちを納得させて戦地に赴かせるために、高いレベルの論理を日米開戦前にはすでに用意していた田辺の凄味も佐藤さんは指摘しています。これもまた夏に相応しい一冊。
◇ところで、アメリカの新しい大統領のおかげで反故になったTPPですが、その余波として、著作権の保護期間が作者の死後70年に延びなかった、ということがあります。つまり今まで同様、日本においては死後50年を過ぎれば著作権は消え、パブリック・ドメインとなります。
◇TPPで著作権保護期間の延長が議論になった理由の一つは、アメリカの大企業ディズニーの稼ぎ頭「くまのプーさん」の著作権がまさに切れそうだったからです。そしてミルンの著作権はこの5月に消失し、早速、森絵都さんの訳、村上勉さんの絵で『クマのプー』(角川文庫)が出ました。これより先に新潮社は「10年留保」によって(ヤヤコシイ法律話になるので説明は省きます)、本文に拠らない100%ORANGEさんの絵と、阿川佐和子さんによる訳で『ウィニー・ザ・プー』(新潮文庫)を刊行しています。ユーモアと詩情、感傷と郷愁、言葉遊びと間抜けな冒険に満ちたあの傑作を、石井桃子さんの古典的名訳以外でも読める喜びは大きいです。有名な「トオリヌケ・キ」(石井訳)を、阿川さんは「ハイッテハ・ダ」と訳し、森さんは……。
◇平岩弓枝さんは休載。ジェーン・スーさんの傑作(!)連載は最終回です。
◇神楽坂ブック倶楽部は会員募集をしています。詳細は89ページの広告、そしてHP、http://kagubookclub.com/を。
お知らせ
バックナンバー
雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。
雑誌から生まれた本
波とは?

1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。
創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。
創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。
現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。