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谷崎由依「藁の王」(200枚)
高村薫「小説の現在地とこれから」
第44回 川端康成文学賞発表

新潮 2018年6月号

(毎月7日発行)

特別定価998円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2018/05/07

発売日 2018/05/07
JANコード 4910049010686
定価 特別定価998円(税込)

藁の王[二〇〇枚]/谷崎由依
わたしは小説を書く。教える。その行為それ自体を訝りながら――講義は執筆を脅かし、やがて文学の深淵を覗かせる。作家の飛翔作!
ともだち日和聡子
一人きりの女の子の、お人形遊びに秘められた引力。期待と怖れが濃密に交錯する幻想譚。
ニューオーリンズの幽霊たち柴崎友香
作家は第二次世界大戦博物館で亡き父を思う。
アメリカと日本を架ける、歴史=物語への旅。
ヒロヒト[第二回]/高橋源一郎

■■ 連載小説 ■■
◆キュー(九)【最終回】/上田岳弘
◆ビッグ・スヌーズ(五)/矢作俊彦
◆格闘(十六)/高樹のぶ子
◆野の春(二十)/宮本 輝
◆荒れ野にて(三十六)/重松 清

◆第44回〈第二期第十九回〉川端康成文学賞発表
こことよそ保坂和志
【選評】■荒川洋治 ■角田光代 ■辻原 登 ■堀江敏幸 ■村田喜代子
◆第51回《新潮新人賞》応募規定
【選考委員】●大澤信亮 ●川上未映子 ●鴻巣友季子 ●田中慎弥 ●中村文則
◆第31回《三島由紀夫賞》候補作品発表

小説の現在地とこれから高村 薫
純文学はなぜエンターテインメントに引き寄せられていくのか。2018年文学状況論。
〈映像演劇〉宣言岡田利規
演劇は現象としてのフィクションである――チェルフィッチュが問う、新たな表現の形。
映画から動画へ――「スター・ウォーズ」の40年史/池田純一
映画は今、映画をやめ始めている。ソーシャルメディアの時代にSWはいかに変容したか?
愚者たちの希望――新しい宮沢賢治(5)/今福龍太
これは小説ではない(二)/佐々木 敦
小林秀雄[第五十五回]/大澤信亮
地上に星座をつくる石川直樹
第六十三回・湖を歩いて渡る
見えない音、聴こえない絵(一六三)/大竹伸朗

■■ 新潮 ■■
◆波の音やら海の音/上間陽子
◆アピチャッポンの森にわけ入る/金子 遊
◆文化の所有者/嶋崎聡子
◆約束ごとと記号のドラマ/高山羽根子
◆お風呂はライオンと一緒に/田中秀臣
◆不在との踊り方/ハラサオリ
■■ 本 ■■
◆グレアム・スウィフト『マザリング・サンデー』/古谷田奈月
◆諏訪哲史『紋章と時間――諏訪哲史文学芸術論集』/高柳 誠
◆堀江敏幸『曇天記』/星野 太
◆ウラジーミル・ナボコフ『処刑への誘い/事件/ワルツの発明』/三浦 基
◆松本卓也『享楽社会論――現代ラカン派の展開』宮崎裕助

この号の誌面

立ち読み

編集長から

谷崎由依「藁の王」と小説の現在地

谷崎由依「藁の王」(二〇〇枚)は、その難関突破ブレイクスルーにおいて、飛翔作になるのではないか――そう予感したのは、主人公が大学創作科で教鞭をとる女性小説家であり、書く者として、教える者として、解決し難い苦悩に引き裂かれていたからだ。主人公は学生たちに書くことを課す。だが、そもそも創作とは教えられることなのか? 若くナイーブで、時に精神を壊すほど切実に生きる学生たちによって、この永遠の問いに貫かれるのは、むしろ主人公だ。真夜中の大学構内で、小説家は自らの精神の暗い場所へと深く下降する。安易な出口はない。だが、この下降こそが小説の飛翔なのだ◎高村薫「小説の現在地とこれから」(講演原稿)は、文学環境の変容と衰退を巡る、驚くほど根底的な考察であり、文学観の真摯な吐露だ。インターネットによる情報の濁流が精神を押し流し、人類史規模で身体性とそれに根ざす「文体」が希薄化する二〇一八年の今、文学に何が起きているのか。

新潮編集長 矢野 優

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。

■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。

■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。

■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。

雑誌主催・共催・発表誌の文学賞