未発表戯曲 遠藤周作「善人たち」
アンケート特集 古井由吉の文 三回忌に寄せて
新潮 2022年3月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2022/02/07 |
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JANコード | 4910049010327 |
定価 | 1,200円(税込) |
【新発掘原稿】
◆[戯曲]善人たち/遠藤周作 解説・加藤宗哉
牧師補のトムは日本の留学生を招いた。それは開戦の二年前だった。神の愛に差別や憎しみは救われるのか? 眠り続けた傑作の復活。
◆聖なる濁った川/角田光代
夫に連れられ、奈保美は渋々インドを旅する。ガンジス川に佇む神さまの化身は誰なのか?
◆運動/藤野可織
◆TRY48/中森明夫
[第4章]寺山修司、ももいろクローバーZを論じる
◆プリニウス(八十)/ヤマザキマリ+とり・みき
■■ 連載小説 ■■
◆大使とその妻(七)/水村美苗
◆聖都創造(十七)/天童荒太
◆天使も踏むを畏れるところ(二十)/松家仁之
◆漂流(三十一)/町田 康
◆ヒロヒト(三十四)/高橋源一郎
◆ビッグ・スヌーズ(四十六)/矢作俊彦
第54回《新潮新人賞》応募規定 [ウェブ応募受付中!]
【選考委員】大澤信亮/小山田浩子/鴻巣友季子/田中慎弥/又吉直樹
◆【アンケート特集】古井由吉の文 三回忌に寄せて
石井遊佳/岸 政彦/佐伯一麦/鈴木涼美/諏訪 敦/諏訪哲史/滝澤紀久子/田中慎弥/谷崎由依/中村文則/蓮實重彦/平野啓一郎/日和聡子/古井睿子/堀江敏幸/又吉直樹/町田 康/松浦寿輝/村田喜代子
◆ヴァージル・アブロー 最後のロングインタビュー
少数者としての孤独と葛藤、後世への
◆令和三年のテロリズム(前篇)/磯部 涼 写真・山谷佑介
【新連載・第三回】
◆精神の考古学/中沢新一
◆透明な幽霊たちの複合体――吉本ばなな「ミトンとふびん」を読む/安藤礼二
【新連載リレーコラム】街の気分と思考(3)
◆片道十三時間の街で/近藤聡乃
◆地図のない街の歩き方/小川さやか
◆大楽必易――わたくしの伊福部昭伝(十四)/片山杜秀
◆小林秀雄(八十二)/大澤信亮
◆地上に星座をつくる/石川直樹
第百三回・北へ、巡業の旅
◆見えない音、聴こえない絵/大竹伸朗
第二〇二回・回顧と最新
■■ 新潮 ■■
◆かざるとは何か/橋本麻里
◆(未来の)文豪のための戯曲の書き方入門/山本卓卓
◆トラブルメーカーの系譜/吉野 靫
【私の書棚の現在地】
◆佐伯一麦『アスベストス』/[書評委員]滝口悠生
◆ジョゼ・サラマーゴ『象の旅』/[書評委員]古谷田奈月
■■ 本 ■■
◆國分功一郎・千葉雅也『言語が消滅する前に』/星野 太
◆乗代雄介『皆のあらばしり』/松家仁之
◆小川洋子『遠慮深いうたた寝』/高瀬隼子
◆羽田圭介『滅私』/吉川浩満
この号の誌面
立ち読み
編集長から
新発掘
遠藤周作「善人たち」
遠藤周作氏(1923〜1996)の新発掘戯曲「善人たち」を発表する。『沈黙』に代表される氏の生涯の主題、キリスト教=信仰を前面化しつつ、戦争や人種差別問題まで含みながら、人間ドラマとしての魅力を持つ作品である。始まりは大戦中の南洋の小島。米軍の従軍牧師トムが日本兵に投降を呼びかけている。トムの説得は懸命だ。なぜなら開戦前、その日本兵は米国の神学校に留学し、トムの実家(そこには黒人の「召使い」もいた)に下宿していたのだから……。物語は主にトムの実家を舞台に進む。信仰に篤い人たちだけではない。都会に出て退廃に身をやつす者、有色人種への差別意識を隠せない者。だが、彼らもまた「善人たち」なのだ。それぞれに懸命に生きながら、おのが世界観に支配され、他者の存在を否定してしまう悲しい善人たち――。それは、新しい社会の格差や分断に翻弄される私たちの姿に重なるように思えてならない。2022年の今、本作を発表する意義を疑わない。
編集長・矢野 優
松家仁之「天使も踏むを畏れるところ」 主要参考文献
- 『建設省二十年史』建設省二十年史編集委員会(社団法人建設広報協議会)
- 『現代建築をつくる人々』浜口隆一・村松貞次郎(KK世界書院)
- 『皇居造営 宮殿・桂・伊勢などの思い出』小幡祥一郎
- 『昭和天皇と田島道治と吉田茂 初代宮内庁長官の「日記」と「文書」から』加藤恭子(人文書館)
- 『ワシントンハイツ ―GHQが東京に刻んだ戦後―』秋尾沙戸子(新潮文庫)
- 「工芸ニュース」1949年6月号 商工省工芸指導所(技術資料刊行会)
- 『皇室建築 内匠寮の人と作品』監修 鈴木裕之(建築画報社)
- 『日本の建築 その芸術的本質について I』吉田鉄郎 薬師寺厚訳(東海大学文化選書)
- 『日本の建築 その芸術的本質について II』吉田鉄郎 薬師寺厚訳(東海大学文化選書)
- 『侍従長の遺言 昭和天皇との50年』徳川義寛 聞き書き・解説 岩井克己(朝日新聞社)
- 『日本軍兵士──アジア・太平洋戦争の現実』吉田裕(中公新書)
- 『私のなかの東京』野口冨士男(文藝春秋)
- 『完本 皇居前広場』原武史(文春学藝ライブラリー)
- 『東京都市計画物語』越澤明(ちくま学芸文庫)
- 『関東大震災 大東京圏の揺れを知る』武村雅之(鹿島出版会)
- 『外濠 江戸東京の水回廊』法政大学エコ地域デザイン研究所編(鹿島出版会)
- 『建築の心と技 村松貞次郎対談集――1』(新建築社)
- 『建築をめぐる回想と思索 キサデコールセミナーシリーズ2』聞き手・長谷川堯(新建築社)
- 『硫黄島クロニクル 島民の運命』全国硫黄島島民の会
- 『建築探偵の冒険』藤森照信(ちくま文庫)
- 『昭和天皇実録 第十一』宮内庁(東京書籍)
- 『秩父宮 昭和天皇弟宮の生涯』保阪正康(中公文庫)
- 「新建築 1982年7月臨時増刊 桂離宮」(新建築社)
- 『宮殿をつくる』高尾亮一(求龍堂)
- 『皇居』入江相政(保育社)
- 『入江相政日記 第五巻』入江為年監修(朝日文庫)
- 『侍従とパイプ』入江相政(中公文庫)
- 『こんなに面白い東京国立博物館』新潮社編 東京国立博物館監修
- 『探検! 東京国立博物館』藤森照信・山口晃(淡交社)
- 『カイコの病気とたたかう』鮎沢啓夫(岩波科学の本)
- 『皇后陛下傘寿記念 皇后さまとご養蚕』宮内庁協力(扶桑社)
- 『フランク・ロイド・ライトの帝国ホテル』明石信道 文・実測図面 村井修 写真(建築資料研究社)
- 『日本鉄道旅行地図帳 歴史編成 満洲樺太』監修 今尾恵介・原武史(新潮社)
- 「芸術新潮」2008年8月号「大特集 北京」(新潮社)
- 『完訳紫禁城の黄昏』上・下 R.F.ジョンストン 中山理 訳 渡部昇一 監修(祥伝社)
- 『漱石紀行文集』藤井淑禎 編(岩波文庫)
- 『吉田謙吉が撮った戦前の東アジア 1934年満洲/1939年南支・朝鮮南部』塩沢珠江=著 松重充浩=監修(草思社)
- 『日本鉄道旅行地図帳 歴史編成 朝鮮台湾』監修 今尾恵介・原武史(新潮社)
- 『満洲朝鮮復刻時刻表 附台湾・樺太復刻時刻表』日本鉄道旅行地図帳編集部[編](新潮社)
- 『火と水と木の詩 私はなぜ建築家になったか』吉村順三(新潮社)
- 『日本の近代をデザインした先駆者 生誕150周年記念後藤新平展図録』(財団法人東京市政調査会)
- 「芸術新潮」2006年8月号「全一冊 韓国 未知の美と出会う旅」(新潮社)
- 『図説 満鉄 「満洲」の巨人』西澤泰彦(河出書房新社)
- 『満洲鉄道まぼろし旅行』案内人・川村湊(ネスコ 文藝春秋)
- 『韓国の民家』張 保雄著 佐々木史郎訳(古今書院)
- 『建築の前夜 前川國男論』松隈洋(みすず書房)
- 『前川國男 賊軍の将』宮内嘉久(晶文社)
- 『一建築家の信條』前川國男 宮内嘉久編(晶文社)
- 『日本建築宣言文集』藤井正一郎・山口廣編著(彰国社)
- 『皇居に生きる武蔵野』毎日新聞社社会部写真部編(毎日新聞社)
- 『天皇と侍従長』岸田英夫(朝日文庫)
- 『スウェーデンの建築家』吉田鉄郎(彰国社)
- 「野村東宮大夫の思い出」入江相政(「文藝春秋」1957年10月号)
- 『ドキュメント皇室典範』高尾栄司(幻冬舎新書)
- 『僕の留学時代』東山魁夷(日本経済新聞社)
- 「芸術新潮」2008年5月号「生誕100年記念特集 東山魁夷 国民画家の素顔」(新潮社)
- 「皇居新宮殿における宮内庁試案の意図」小畑俊介 山崎鯛介(日本建築学会計画系論文集 第85巻 第768号)
- 『宮中歳時記』入江相政編(小学館文庫)
- 『十番目の女神』高尾亮一(求龍堂)
- 『小泉信三 天皇の師として、自由主義者として』小川原正道(中公新書)
- 『東宮御所 建築 美術 庭園』設計・谷口吉郎 撮影・渡辺義雄(毎日新聞社)
- 『現代日本建築家全集6 谷口吉郎』栗田勇監修(三一書房)
- 『ふたりの山小屋だより』岸田衿子 岸田今日子(文春文庫)
- 『大学村七十年誌』北軽井沢大学村組合編(北軽井沢大学村組合事務所)
- 「週刊朝日」1958年12月14日号(朝日新聞社)
- 「週刊文春」創刊60周年記念特別号「秘話とスクープ証言で綴る 美智子さまの60年」(文藝春秋)
- 「芸術新潮」1960年6月号(新潮社)
- 『千鳥ヶ淵戦没者墓苑 創建50年史』(財団法人千鳥ヶ淵戦没者墓苑奉仕会編)
- 『谷口吉郎著作集』第四巻(淡交社)
- 『谷口吉郎著作集』第五巻(淡交社)
- 「赤坂御用地と常盤松御用邸の変遷」阿部宗広(国立科博専報(39)2005年3月25日)
- 『鶴見俊輔著作集5 時論・エッセイ』(筑摩書房)
- 『続 羊の歌』加藤周一(岩波新書)
- 『昭和天皇実録 第十二』(東京書籍)
- 『昭和天皇実録 第十三』(東京書籍)
- 『入江相政日記 第六巻』(朝日文庫)
- 『宮殿造営記録 解説編』(宮内庁)
- 『「暮しの手帖」とわたし』大橋鎭子(暮しの手帖社)
- 「皇居新宮殿の実施案に反映された高尾亮一と吉村順三の設計思想」小畑俊介(日本建築学会計画系論文集 第85巻 第772号)
- 『風流夢譚』深沢七郎(志木電子書籍)
- 『一九六一年冬「風流夢譚」事件』京谷秀夫(志木電子書籍)
- 『決定版 三島由紀夫全集 30 評論5』(新潮社)
- 『感情天皇論』大塚英志(ちくま新書)
- 『吉村順三建築図集 別巻 補遺』(同朋舎出版)
- 「明治宮殿の建設経緯に見る表宮殿の設計経緯」山崎鯛介(日本建築学会計画系論文集 第572号)
- 『天皇の料理番』上・下 杉森久英(集英社文庫)
- 『味 天皇の料理番が語る昭和』秋山徳蔵(中公文庫)
- 『味の散歩』秋山徳蔵(中公文庫)
- 『料理のコツ』秋山徳蔵(中公文庫)
- 『昭和天皇と鰻茶漬』谷部金次郎(文春文庫)
- 『昭和天皇のお食事』渡辺誠(文春文庫)
- 『天皇陛下が愛した洋のレシピ』窪田好直(河出書房新社)
- 『天皇陛下料理番の和のレシピ』谷部金次郎(幻冬舎)
バックナンバー
雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。
雑誌から生まれた本
新潮とは?
文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。