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今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

平成生まれの話

 韓国戦で劇的な逆転勝利を見せてくれた、サッカー日本代表U23チームの選手たちは当然のことながら、全員平成生まれです。
 社内やスポーツ界の若手が平成生まれになって久しい気がします。以前ならば「うーん、平成生まれかあ」といった感慨もあったのですが、今はもう驚きません。
 しかし、最近ふと思ったのは、私もすでに生きている期間で比較すれば、昭和よりも平成の方が長くなっているということです。気づけば、もう何年も前に、体内の「平成度」が「昭和度」を上回っていました。人間の細胞は何年かで入れ替わるそうですから、私はほぼ平成生まれといってもいい身体を持っていることになります。
 自分が「平成の子」だと思うと、少し若返った気になれました。
 そんなことを考えたのは、2月新刊の『情報の強者』(伊藤洋一・著)の影響もあったのかもしれません。ラジオやテレビのコメンテーターとしてもお馴染みの伊藤さんは、「昭和度」が上回っている年齢。それでも情報への感度が高く、常に新しい情報ツールを駆使しており、その若々しさにはいつも驚かされています。
『情報の強者』は、世に氾濫する情報をどのように処理しているのか、どのように取捨選択しているのか、伊藤さん流の方法を惜しげもなく明かした一冊です。「大事件が起きたらテレビから離れよ」といった具体的なアドバイスにはなるほどと思いました。

 他の3点もご紹介します。

学者は平気でウソをつく』(和田秀樹・著)は、医学、心理学等々、さまざまな学問のいかがわしさを次々メッタ斬りする痛快な内容の社会論。「やっぱりあの細胞はありまーす」と言わんばかりの本がベストセラーになっている今、タイムリーなタイトルではないかと思います。
がん哲学外来へようこそ』(樋野興夫・著)は、がん患者のさまざまな悩みに向き合ってきた著者の診療の記録。告知を受けて、心に大きなダメージを受けた患者や家族との対話を読むうちに、病気について「そうか、こう考えればいいのか」ということがわかってきます。「患者と家族のためのこころの処方箋」というコピーに偽りなしです。
個人を幸福にしない日本の組織』(太田肇・著)は、会社や大学、PTA、地方自治体といったさまざまな組織の問題点を炙り出したうえで、改善策も提案した1冊。ともすれば「みなが一致団結するのが日本の強み」と思いがちなところを、著者は「組織は適度にバラバラなほうが望ましい」と述べています。自分の所属する組織の人事が上手くいっていない、と思う方は読んでみると、新しい視点を得られることでしょう。

 以上4点、著者も担当編集者も昭和生まれではありますが、新鮮な内容であることは保証いたします。
 今月も新潮新書をよろしくお願いします。

2016/02