新潮新書

番記者の話

相撲やアメフトやボクシングなどの問題が起きて、新聞やテレビがいろいろと問題点を伝えるのを見て不思議に思うのが「これまで番記者や担当者は何やっていたの?」ということです。
協会あるいは監督や会長にいろいろと問題があるということは、インサイダーならば絶対知っていたはずで、それなのに何か大きな事件が起きるまではそれを伝えない。それでは何のための記者なんだろうか、と思ってしまうのです。
いくらなんでも、あの会長はまずいだろう、となぜ発信しなかったんでしょうか。
8月新刊『黙ってられるか』の著者は、元Jリーグチェアマンの川淵三郎氏。川淵氏は常に言いたいことを言って、物事を動かしてきた、といいます。この本の中でも、「ここまで言って大丈夫?」と思うようなところが多々あります。執筆中にはまだ解任されていなかったハリルホジッチ元日本代表監督についてもかなり厳しい評価を下していますが、その理由を読めばなるほど、と納得しました。選手をフェアに扱っていなかったことが、具体的なエピソードと共に指摘されています。
この件に限らず、結構きついことも書いているのに、読んでいて嫌な感じがまったくせず、むしろ爽やかな感じすらしてしまうのは、著者に私心がないことや、陽性のキャラクターの賜物なのだろう、と思います。
他の新刊3点もご紹介します。
『甲子園という病』(氏原英明・著)も、番記者や関係者がなかなか口にしないタブーに斬りこんだ内容です。なぜ猛暑の中、何百球も連投しなければならないのか。野球しかできない「野球バカ」をつくってしまっていいのか。勝利至上主義の問題点を次々指摘していきます。監督や選手らへの膨大な取材をもとにしているだけに、説得力は抜群。
これこそが担当記者のやるべき仕事なのだと強く思います。
『神社崩壊』(島田裕巳・著)は、宗教界のタブーに深く切り込んだ1冊。富岡八幡宮での殺人事件の背景には何があるのか。そもそも神社って儲かるのか。「日本会議」との関係はどうなっているのか。宗教についてわかりやすく語ることにおいて第一人者の著者が、あらゆる疑問に丁寧に答えてくれます。
『日本人とドイツ人―比べてみたらどっちもどっち―』(雨宮紫苑・著)は、新潮新書史上最年少、26歳の日本人女性による等身大の比較文化論。ドイツで4年ほど暮らしながら感じた「日本とのちがい」「ドイツのよさ」「日本のよさ」を綴っていきます。私たちが勝手に思っている「ドイツ人と日本人は似ている」といったシンパシーが単なる思い込みであること、「ドイツの働き方に学べ」といった論調が危ないことなど、新しい発見が多くあるはずです。
『黙ってられるか』のオビには「忖度、タブー一切なし!」とあります。すべての本がそうであるように心がけたいと思います。
今月も新潮新書をよろしくお願いします。
協会あるいは監督や会長にいろいろと問題があるということは、インサイダーならば絶対知っていたはずで、それなのに何か大きな事件が起きるまではそれを伝えない。それでは何のための記者なんだろうか、と思ってしまうのです。
いくらなんでも、あの会長はまずいだろう、となぜ発信しなかったんでしょうか。
8月新刊『黙ってられるか』の著者は、元Jリーグチェアマンの川淵三郎氏。川淵氏は常に言いたいことを言って、物事を動かしてきた、といいます。この本の中でも、「ここまで言って大丈夫?」と思うようなところが多々あります。執筆中にはまだ解任されていなかったハリルホジッチ元日本代表監督についてもかなり厳しい評価を下していますが、その理由を読めばなるほど、と納得しました。選手をフェアに扱っていなかったことが、具体的なエピソードと共に指摘されています。
この件に限らず、結構きついことも書いているのに、読んでいて嫌な感じがまったくせず、むしろ爽やかな感じすらしてしまうのは、著者に私心がないことや、陽性のキャラクターの賜物なのだろう、と思います。
他の新刊3点もご紹介します。
『甲子園という病』(氏原英明・著)も、番記者や関係者がなかなか口にしないタブーに斬りこんだ内容です。なぜ猛暑の中、何百球も連投しなければならないのか。野球しかできない「野球バカ」をつくってしまっていいのか。勝利至上主義の問題点を次々指摘していきます。監督や選手らへの膨大な取材をもとにしているだけに、説得力は抜群。
これこそが担当記者のやるべき仕事なのだと強く思います。
『神社崩壊』(島田裕巳・著)は、宗教界のタブーに深く切り込んだ1冊。富岡八幡宮での殺人事件の背景には何があるのか。そもそも神社って儲かるのか。「日本会議」との関係はどうなっているのか。宗教についてわかりやすく語ることにおいて第一人者の著者が、あらゆる疑問に丁寧に答えてくれます。
『日本人とドイツ人―比べてみたらどっちもどっち―』(雨宮紫苑・著)は、新潮新書史上最年少、26歳の日本人女性による等身大の比較文化論。ドイツで4年ほど暮らしながら感じた「日本とのちがい」「ドイツのよさ」「日本のよさ」を綴っていきます。私たちが勝手に思っている「ドイツ人と日本人は似ている」といったシンパシーが単なる思い込みであること、「ドイツの働き方に学べ」といった論調が危ないことなど、新しい発見が多くあるはずです。
『黙ってられるか』のオビには「忖度、タブー一切なし!」とあります。すべての本がそうであるように心がけたいと思います。
今月も新潮新書をよろしくお願いします。
2018/08
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