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今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

見た目の誤解の話

人は見た目が9割』(竹内一郎・著)が新潮新書の一冊として刊行されたのは、2005年のことでした。発売直後からベストセラーとなり、現在115万部を突破しています。その後、何冊も「〇〇が9割」というタイトルの本が出るのですが、元祖はこちらです。
 タイトルにある「見た目」は単純なルックスのことではなく、「ルックスも含む非言語情報全般」のことでした。言葉の意味以外、と言ってもよいでしょう。人間で言えば、声色、匂い、仕草、服装、姿勢等々。
 ところが、タイトルから「人を外見で判断するのか」といった反発をする方もいたようです。私は知人に「すごいタイトルつけるね」と言われたこともありました。
 誤解と言えば誤解。しかし正直に言えば、そういう誤解をする方が一定数いるであろうことも予想はできていたのですが。
 幸いなことに、きちんと読んでくださった方には真意が伝わったようで、同書はしばしば入試問題などにも使われています。

 1月新刊『あなたはなぜ誤解されるのか―「私」を演出する技術―』は、同じ著者が「自己プロデュースの極意」を伝える一冊。
「言っていることは正しくても、何だか不快。聞く気にならない」
 他人に対してそう感じた経験がある方は少なくないでしょう。しかし自分が他人にそう感じているということは、どこかで誰かが自分のことをそう感じている可能性も大。
 どのようにすれば誤解、曲解されず、余計なストレスを抱えずに済むか。演出家でもある著者が、その知見も盛り込んだうえで、心構えから具体的なポイントまでアドバイスしてくれます。私は読みながら何度も反省しました。

 他の新刊3点もご紹介します。

 医師である著者が最新論文などを踏まえたうえでの健康の秘訣を教えてくれるのが『最新研究が示す 病気にならない新常識』(古川哲史・著)。何となくコロナが病気のすべてであるかのような言説が特にメディアでは見られますが、言うまでもなくそれ以外の病気も予防の必要があるわけです。しかも、免疫力をつけることは、コロナにも有効なのは言うまでもありません。認知症を予防する食事とは? コーヒーを飲む時に気を付けることは? 等々、身近な話題、すぐ実行できる健康法が満載です。

うんちの行方』(神舘和典西川清史・著)は、タイトル通り、その行方を徹底的に取材したレポート。個人的には、ずっと気になっていた「電車からのソレはどうなっているのか」ということの答えが得られたのがとても嬉しかったです。何となく「線路に落とす」というイメージが強かったのですが、それが決して間違いではなく、意外と最近までそのシステムが生きていたことに驚きました。また「タワマン全戸で一斉に流すと大惨事」という衝撃情報も。なぜそうなるのか。詳細は本書で。

兜町の風雲児―中江滋樹 最後の告白―』(比嘉満広・著)は、「投資ジャーナル事件」で知られる中江氏が亡くなる10年程前から親交があったジャーナリストが、その告白をまとめたノンフィクション。中江氏については、事件で逮捕されたこともあって、何となく「他人のお金で詐欺的なことをやっていた悪い人」程度のイメージしかない方が多いかと思います。私もそうでした。
 しかし、この本での告白を読むと、そんな見方は一変します。とにかく語り口にとても愛嬌があります。田中角栄はじめ、様々な大物と交流があったことも頷けます。
 長髪に髭顔という風貌も手伝って、様々な「誤解」がつきまとった人生でしたが、この本をきっかけに印象が変わるといいのではないかと思いました。

 2021年も新潮新書をよろしくお願いします。
2021/01