通訳ダニエル・シュタイン(上)
2,200円(税込)
発売日:2009/08/31
- 書籍
「必要なのは論争じゃなくて、理解なんだ」20世紀の過酷な戦場に刻まれた奇跡の足跡。
ポーランドのユダヤ人一家に生まれ、奇跡的にホロコーストを逃れてゲシュタポでナチの通訳をしながらユダヤ人脱走計画を成功させた男は、戦後カトリック神父になりエルサレムへと渡った。――ナチズムの東欧からパレスチナ問題のイスラエルへ。心から人を愛し、共存の理想を胸に戦い続けた、魂の通訳ダニエル・シュタインの波乱の生涯。
エヴァ・マヌキャン
2 一九八六年一月、ボストン
エステル・ハントマン
3 一九五九-八三年、ボストン
イサーク・ハントマンの手記より
4 一九四六年一月、ヴロツワフ
エフライム・ツヴィクより、アヴィグドル・シュタイン宛書簡
5 一九五九年、ナポリ、メルジェリーナ港
ダニエル・シュタインより、ヴワディスワフ・クレフ宛書簡
6 一九五九年、ナポリ
ダニエル・シュタインより、アヴィグドル・シュタイン宛電報
7 旅行パンフ「ようこそハイファへ」
8 一九九六年、ガリラヤ、モシャブ〈ノフ・ア・ハリル〉
エヴァ・マヌキャンとアヴィグドル・シュタインの会話より
9 一九八一年、ハイファ
ダニエルより、アーロン宛書簡
一九八三年、ハイファ
ダニエルより、アーロン宛書簡
一九八三年、ネゲヴ
アーロンよりダニエルへ
一九八三年
ダニエルよりアーロンへ
10 一九九〇年十一月
ダニエル・シュタイン神父とフライブルク市の小学生たちとの対話より
11 一九八六年、パリ
パヴェル・コチンスキより、エヴァ・マヌキャン宛書簡
12 一九八六年、ボストン
エヴァ・マヌキャンの日記より
13 一九八六年一月、ハイファ
リタ・コヴァチより、パヴェル・コチンスキ宛書簡
14 一九八六年六月、パリ
パヴェル・コチンスキより、エヴァ・マヌキャン宛書簡
15 一九八六年、サントリーニ
エヴァ・マヌキャンより、エステル・ハントマン宛書簡
16 一九六〇年、アッコ
ジュリアン・ソミエの日記より
17 一九六三年、ハイファ
ダニエル・シュタインより、ヴワディスワフ・クレフ宛書簡
18 一九五九-八三年、ボストン
イサーク・ハントマンの手記より
19 一九六四年二月、エルサレム
ヒルダ・エンゲルより、ダニエル・シュタイン司祭宛書簡
一九六四年三月、ハイファ
ダニエル・シュタインより、ヒルダ・エンゲル宛書簡
一九六四年五月、エルサレム
ヒルダ・エンゲルより、ダニエル・シュタイン宛書簡
一九六四年六月、ハイファ
ダニエル・シュタインより、ヒルダ・エンゲル宛書簡
20 一九九〇年十一月、フライブルク
ダニエル・シュタイン神父と小学生たちとの対話より
21 一九六五年六月、ハイファ
ハイファのアラブ・カトリック聖母マリア昇天教会入口の掲示板
22 一九六四年、ハイファ
ダニエル・シュタインより、ヴワディスワフ・クレフ宛書簡
23 一九六四年一月
イスラエルの新聞記事から
24 一九六四年七月、ハイファ
カルメル山の聖母マリア男子跣足修道会レバノン地区主任司祭宛書簡
一九六四年八月
カルメル山の聖母マリア男子跣足修道会レバノン地区主任司祭より、カルメル会総長宛書簡
25 一九九六年、ガリラヤ、モシャブ〈ノフ・ア・ハリル〉
エヴァ・マヌキャンとアヴィグドル・シュタインの会話の録音より
26 一九六五年八月、ハイファ
ダニエル・シュタインより、ヴワディスワフ・クレフ宛書簡
二〇〇六年三月一日、モスクワ
リュドミラ・ウリツカヤより、エレーナ・コスチュコヴィチ宛書簡
ヒルダ・エンゲルより、母親宛書簡
2 一九六一年、クファル・タボル
グラジナより、ヴィクトリア宛書簡
一九六五年三月、クファル・タボル
グラジナより、ヴィクトリア宛書簡
3 一九六五年四月、ハイファ
ダニエル・シュタインより、ヴワディスワフ・クレフ宛書簡
4 一九六五年十二月、クラクフ
ヴワディスワフ・クレフより、ダニエル・シュタイン宛書簡
5 一九六六年九月、ハイファ
ヒルダ・エンゲルより、母親宛書簡
6 一九六六年九月、ハイファ
その晩、ヒルダが自分のバッグの中に見つけたメモ
7 一九九六年、ハイファ
ヒルダとエヴァ・マヌキャンとの会話より
8 一九六六年十二月
〈泉のほとりのエリヤ教会〉でのブラザー・ダニエルの談話テープ
9 一九六六年十二月
ブラザー・イリヤより、エルサレム大司教マッタン・アヴァト猊下宛報告書
10 一九六七年六月
ヒルダ・エンゲルの母親宛書簡より
11 一九六七年、エルサレム
ヒルダの記録
12 一九六七年、ハイファ
ダニエル・シュタインより、ヴワディスワフ・クレフ宛書簡
13 一九九〇年十一月、フライブルク
ダニエル・シュタインと小学生たちとの対話より
14 一九八七年、レッドフォード、イギリス
ベアタ・セミョーノヴィチより、マリーシャ・ヴァレヴィチ宛書簡
15 一九八七年十二月、ボストン
エヴァ・マヌキャンの日記より
16 一九八八年四月、ハイファ
エヴァ・マヌキャンより、エステル・ハントマン宛書簡
17 一九八八年四月、ボストン
エステル・ハントマンのエヴァ・マヌキャン宛書簡より
18 一九八八年四月、ハイファ
エヴァ・マヌキャンより、エステル・ハントマン宛書簡
19 一九八八年、ハイファ
リタ・コヴァチからパヴェル・コチンスキに送られたカセットテープ
20 一九八八年、ハイファ
リタ・コヴァチより、パヴェル・コチンスキ宛書簡
21 一九八八年五月
エヴァ・マヌキャンの日記より
22 一九九六年、ガリラヤ
アヴィグドル・シュタインより、エヴァ・マヌキャン宛書簡
一九六九年、ハイファ
ダニエルがノエミに宛てた書簡のコピー
23 一九九〇年、フライブルク
ダニエル・シュタインと小学生たちとの対話より
24 一九六九年、ハイファ
ヒルダの日記より
25 一九六九年五月、ハイファ
ムーサより、ヒルダ宛書簡
26 一九六九年、ハイファ
ヒルダの日記より
27 一九五九-八三年、ボストン
イサーク・ハントマンの手記より
28 一九六九年五月、ゴラン高原
ダニエル・シュタインより、ヴワディスワフ・クレフ宛書簡
29 一九六九年五月、ハイファ
ヒルダより、母親宛書簡
30 一九六九年六月、ハイファ
五旬祭でのブラザー・ダニエルの説教
31 一九九〇年十一月、フライブルク
ダニエル・シュタインと小学生たちとの対話より
32 一九七二年
ヒルダの日記より
33 一九七二年、ドゥブラヴァ強制収容所-モスクワ
ゲルション・シメスと母ジナイーダ・ゲンリホヴナ・シメスの往復書簡より
一九七六年、ウィーン発ロッド行き機内
ゲルション・シメスよりジナイーダ・ゲンリホヴナ・シメス宛書簡
一九七七年、ヘブロン
ゲルション・シメスよりジナイーダ・ゲンリホヴナ・シメス宛書簡
一九七八年、ヘブロン
ゲルションより、ジナイーダ・ゲンリホヴナ宛書簡
一九八一年、ヘブロン
ゲルションより、ジナイーダ・ゲンリホヴナ宛書簡
二〇〇六年六月
リュドミラ・ウリツカヤより、エレーナ・コスチュコヴィチ宛書簡
書誌情報
読み仮名 | ツウヤクダニエルシュタイン1 |
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シリーズ名 | 新潮クレスト・ブックス |
発行形態 | 書籍 |
判型 | 四六判変型 |
頁数 | 320ページ |
ISBN | 978-4-10-590077-9 |
C-CODE | 0397 |
ジャンル | 文芸作品、評論・文学研究、通訳 |
定価 | 2,200円 |
インタビュー/対談/エッセイ
私を支え続けてくれた、クレスト・ブックスの作家たち。
2023年4月、乳がん発覚から治療を終えるまでを綴ったノンフィクション『くもをさがす』(河出書房新社)を刊行した西加奈子さん。そこには辛い治療の日々の中で、新潮クレスト・ブックスを含む、数々の海外文学作品の一節が引用され、心の糧となっていた。
――まずは西さんと新潮クレスト・ブックスとの出会いについて教えていただけますか。
私は17歳の時にトニ・モリスンの『青い眼がほしい』(早川書房)を読んで強い感銘を受けて、それ以来、海外文学の棚によく行くようになったんです。それで、確か『来たるべき作家たち』(1998年刊)というムック本でクレストが創刊することを知ったんだと思います。最初に読んだのは、ゼイディー・スミス『ホワイト・ティース』(2001年刊・品切れ)で、とても衝撃を受けました。今は中公文庫に入っていて、その帯推薦文を書くときに再読しましたが、衝撃が薄れていなくて。本が出た当時はまだ9・11も起きておらず、宗教や人種の違いによる分断を今ほどは意識せずに済んだ時代でしたが、どんな宗教、人種であっても人間であることに変わりはないという著者のスタンスに心を掴まれました。
次に夢中になったのは、ジュンパ・ラヒリでした。『停電の夜に』(2000年刊)を読んで、それ以降の作品はすべて読んでいます。とりわけ、『その名にちなんで』(2004年刊・品切れ)、『低地』(2014年刊)は素晴らしく、私の中でクレスト・ブックスへの絶対的な信頼感が生まれたのもラヒリのおかげです。
彼女はカルカッタ出身の親世代と、アメリカで育った世代との違いをベースに描いていて、それは移民ならではという面もありますが、考えてみれば私たち日本人にだって世代間のギャップはあるじゃないですか。翻訳小説が好きというと、「日本とは違う遠い世界を知ることができるからですか」とよく訊かれますが、もちろんそういう面もありますけど、ベンガル出身の登場人物の中に、自分と同じ感情を見ることがある。私はそこに希望を感じるんです。スミスのように、ラヒリの筆にも静かなユーモアがあるので、悲劇も残酷なことも、人間の愚かさとして、とても身近に感じられる。
――彼女は世界中の古典文学をすごく勉強されていて、文学的な土壌が豊かで、翻訳がいかに大切かを常におっしゃっていますよね。
彼女はロンドン生まれ、アメリカ育ちで、ずっと英語で教育されてきたんですよね。海外の本を読むことがすごく大きな経験だったんだろうなと想像します。でも少し前までのアメリカでは一般的にはあまり海外文学を読む習慣がなかったと聞きました。ナイジェリア出身の作家アディーチェは、大学留学で渡米したときにクラスメイトに「ナイジェリアの小説を読んだけど、夫が妻にDVする話で、とても残念な国なのね」ということを言われたそうなんですね。でも彼女は茶目っ気たっぷりに「私は『アメリカン・サイコ』を読んだけど、アメリカ人が全員サイコパスとは思わなかったわ」と返したそうです。一冊の本がその国の文化を代表できるわけもなく、私もいろんな国の翻訳小説をもっともっとたくさん読みたいと思います。
――クレスト創刊20周年の小冊子アンケートでは、ナム・リー『ボート』(2010年刊・品切れ)を「わたしの3冊」に挙げられていました。
オーシャン・ヴオン『地上で僕らはつかの間きらめく』(2021年刊)では推薦文を書かせていただきましたし、移民文学で強烈な印象が残っているのは、どちらもベトナム系ですね。ナム・リーは「難民」をアイデンティティにして作品を描くことを冒頭では避けて、アイオワ、テヘラン、ヒロシマと、できるだけ違う世界を書いていますよね。それは逆に言うと、彼がどれだけ難民であることをアイデンティティにさせられてきたかの証左ではないかと思います。でもオーシャン・ヴオンは、難民という自分のアイデンティティを書くことに惑いがないように感じます。それは彼の母、祖母がストーリーの骨子であることを隠さない。自分について書く、ということはヴオンが詩人であることも大きいのかもしれませんが、とにかくパーソナルな事柄が、アーティスティックな世界へと跳躍することに繋がっている作家だと思います。同じベトナム系でも、時代の変化を感じますね。
――では、この近年ではどのような作品をお読みになっていますか。
最近はアリ・スミスに夢中です。最初に『両方になる』(2018年刊)を読んだとき、「なんやこれ?」と驚きました。手当たり次第友人に「アリ・スミス読んだ?」と聞きまくるぐらいの衝撃でした。ゼイディー・スミスとおなじスミスで、どこか作風にも共通するところがあって、ユーモアと皮肉と優しさを感じます。登場人物を絶対に駒として扱っていないし、とても驚いたのは、実在する15世紀の画家の存在を描き直す、そのやり方です。時代を再考証する作品は過去にもあったと思うのですが、それが全く新しいものとして、現実とリンクしているのが本当に衝撃的でした。
『秋』(2020年刊)から始まる四季四部作(『冬』2021年刊、『春』『夏』2022年刊)は、「思想信条の違いがあるなかで、どうやって人びとが共に生きていくか」ということがテーマになっていると思います。いま世界中で分断が起きていて、自分は作家としてその分断を止めようとする側にいるつもりですけれど、と同時に一読者の立場からすれば、「アリ・スミスがいてくれるから大丈夫、希望はある」と思うぐらいの頼もしい存在です。彼女が出演するチェルトナム文学祭を観に行ったことがあるのですが、本当に素敵な方でした。正直私はあまり聞き取れていなかったのですが、通訳してくれていた方が感激して涙を流していました。言葉はわからなくても、愛にあふれる人だということが伝わってきて、忘れられません。
――シェイクスピアの妻を新しい視点で描いた、マギー・オファーレル『ハムネット』(2021年刊)もお読みくださっていますよね。
もし、『両方になる』を読んでいなかったら、『ハムネット』はもっと驚いたと思いますけど、本当に素敵な小説ですよね。小説は、人間の尊厳をこんな鮮やかなやり方で取り戻すこともできるんですよね。歴史は正しいものだと鵜呑みにされがちですが、誰がどう語るかによって歴史上の人物の見え方はいくらでも変わります。悪妻と呼ばれたシェイクスピアの妻しかり、アリ・スミスが描く女性アーティストしかり、歴史というものがいかに男性によって都合よく伝えられてきたかに、改めて気付かされました。
――リュドミラ・ウリツカヤもお読みいただいているようですね。
はい。ウリツカヤも大好きな作家で、私はとくに『通訳ダニエル・シュタイン』(2009年刊・品切れ)が好きです。昨年、ウクライナ戦争が始まって、ロシアのことを知りたいという気持ちになりましたが、戦場からのルポルタージュや、プーチンについて書かれた本を読めば、それなりの情報は知ることができるのかもしれません。でも私は、そこで物語という形式を選びたいんです。
ソナーリ・デラニヤガラ『波』(2019年刊)は、2004年のスマトラ沖大地震による津波で家族を失った女性の回想録です。スリランカで津波が起きて、私たちはニュースで何人の方が亡くなったという事実を知ることはできますが、日々の中でその事実はつい忘れてしまうんですよね。でもこうやって、『波』の場合は小説ではなく回想録ですが、被害に遭われた個々の生活の話にしてくれることで、100人亡くなれば、100人それぞれの人生があったことを、具体的にイメージすることができます。
ロシアに話を戻すと、ウリツカヤの大作『緑の天幕』(2021年刊)は、ソビエト連邦で生まれた3人の主人公を軸に、厳しい抑圧の中で生きるロシア人の姿を描いています。彼らの心情に寄り添うことで、ニュースだけではわからないことが見えてくるし、遠いロシアの話だと思っていたことが、自分の人生でも「ありえたかもしれない」と思えるようになる。それが物語の果たす大きな役割の一つではないかと思うのです。
――最後に、西さんにとって小説を読むということは、どのような意味を持つとお考えですか。
自分がピンチになったとき、寂しいとき、しんどいときに、「待てよ、この感情はなんか知っているな」と思うことがよくあります。それはだいたい、どこかの小説で読んだ、主人公や登場人物が感じたことであることが多いんです。
例えば私は以前がんを宣告されて、このまま死んでしまうかもしれないと思ったのですが、これまで数限りない小説の中で、「死ぬかも」「怖い」という気持ちをすでに疑似体験してきたんですよね。逆もそうです。シーグリッド・ヌーネス『友だち』(2020年刊)は、初老の主人公女性が親しくしていた男友だちを喪う話ですが、この本の中で、彼女はいわば私よりも先に孤独になってくれていた。死んだ人にもう会えないことのつらさ寂しさを、私よりも先に「体験してくれて」いたんです。
他にも、自分が意地悪な気持ちになったときや、知らず知らずのうちに人を傷つけてしまったときにも、「ああ、これはジュリアン・バーンズ『終わりの感覚』(2012年刊・品切れ)に出てきた、あの感じかな」とか。ものすごく単純な言い方をすると、「私はひとりじゃない」と思えることが、私にとって小説を読むことの意味の一つにはなっています。
小説は法律ではなく、拘束力も命令する力もない。ただ誰かに選ばれるのを待っている一冊の本に過ぎない。そして選ばれ、読まれたとしても、そこから何を得るかは読者に圧倒的にゆだねられている。小説があることで生きてゆける、という私の気持ちも、私が小説から「得たもの」で、小説が「与えてくれた」ものではない。この、小説との距離感というか関係性を、私はとても信頼しています。
(2023.6.28)
(にし・かなこ)
波 2023年9月号より
単行本刊行時掲載
短評
- ▼Matsunaga Miho 松永美穂
-
ダニエル・シュタインのような人が、この地上に生きていたと思うだけでも嬉しい。ホロコーストの悲劇をくぐり抜け、非難や憎悪にさらされながら、神の愛を伝え続けることができたその生涯は、まさに奇跡の連続から成り立っている。著者のウリツカヤはこの作品で、ホロコーストのことだけでなく、イスラエルとパレスチナの問題も含めた非常に大きなテーマに取り組んでいる。奥が深い重厚な作品だが、読み物としてもドラマティックで面白く、一作で小説十冊分の価値がある。世界はこんなに広く複雑で多様なんだと感じさせてくれると同時に、それに絶望しない前向きな気持ちにもなる、素晴らしい小説である。
- ▼Московский комсомолец モスコフスキー・コムソモレツ紙
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リュドミラ・ウリツカヤの新しい小説が誕生してまだ数日だが、早くも熱狂が燃え盛っている。〔中略〕これは男性のための本でも女性のための本でもない。これは人間のための本だ。ここにはゲットーや共産主義者、ラーゲリ、ユダヤ人、ポーランド人、ユダヤ教、キリスト教etc.のことが書いてある。読者は、これは自分とは関係ない話だと思うかもしれない。だが中程まで進むと、もう読むのを止められなくなり、登場人物たちと別れがたくなっているのを感じる。
- ▼Интерфакс インテルファクス通信
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ウリツカヤのこの小説は、真に才能ある文学作品が常にそうであるように、複雑かつ様々な読み方が可能である。〔中略〕これは開かれた結末の物語である。
- ▼Monsters and Critics モンスターズ・アンド・クリティクス
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様々な民族と宗教を持つ人々の間に橋をかけたこの人物の物語には、二十世紀という時代もまた映し出されている。
著者プロフィール
リュドミラ・ウリツカヤ
Ulitskaya,Ludmila
1943年生れ。モスクワ大学(遺伝学専攻)卒業。『ソーネチカ』で一躍脚光を浴び、1996年、フランスのメディシス賞とイタリアのジュゼッペ・アツェルビ賞を受賞、2001年には『クコツキイの症例』でロシア・ブッカー賞、『通訳ダニエル・シュタイン』でボリシャヤ・クニーガ賞(2007年)とドイツのアレクサンドル・メーニ賞(2008年)を受賞。他に『子供時代』『それぞれの少女時代』『女が嘘をつくとき』など。2011年、シモーヌ・ド・ボーヴォワール賞を受賞し、ロシアで最も活躍する人気作家である。
前田和泉
マエダ・イズミ
1969年神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部ロシア語学科卒業。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。2021年12月現在、東京外国語大学教授。著書に『マリーナ・ツヴェターエワ』、訳書にリュドミラ・ウリツカヤ『通訳ダニエル・シュタイン(上・下)』、アンドレイ・クルコフ『大統領の最後の恋』、アンドレイ・タルコフスキー『ホフマニアーナ』などがある。