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今月の表紙の筆蹟は、村上春樹さん。

波 2023年9月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2023/08/29

発売日 2023/08/29
JANコード 4910068230935
定価 100円(税込)
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筒井康隆/幾たびも美食日記 第7回
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第72回
トルーマン・カポーティ、村上春樹 訳『遠い声、遠い部屋』
村上春樹/トルーマン・カポーティ あるいは育ちすぎた少年

宮城谷昌光『公孫龍 巻三 白龍篇』
澤田瞳子/まったく新しい貴種流離譚

篠田節子『ドゥルガーの島』
佐藤 究/インドネシアの神話的な混沌の海

村岡俊也『穏やかなゴースト 画家・中園孔二を追って』
最相葉月/瀬戸内の海に消えた若き画家の魂

寺地はるな『わたしたちに翼はいらない』
前田敦子/わたしたちを助けてくれる小説

泉 ゆたか『おばちゃんに言うてみ?』
藤田香織/「うち、平気やで」に秘められた大切なこと

芹澤健介、小林久隆 医学監修『がんの消滅―天才医師が挑む光免疫療法―』(新潮新書)
竹内 薫/「革命期の科学」とがん

デイヴィッド・バックマスター、桐谷知未 訳『給料―あなたの価値はまだ上がる―
櫻井よしこ『異形の敵 中国
淡波 薫/現実が本を追いかける「給料」と「日本」の未来
【特集 新潮クレスト・ブックス 創刊25周年フェア】
ジュンパ・ラヒリ、中嶋浩郎 訳『思い出すこと』
マーサ・ナカムラ/宿命の紛失と再生

[インタビュー]西 加奈子/私を支え続けてくれた、クレスト・ブックスの作家たち。

ただいま翻訳中!
【新連載】
坪木和久/天気のからくり
【短篇小説】
北村 薫/蜂から時計 前篇
【私の好きな新潮文庫】
岩崎う大/だから短編集はやめられない
 小川洋子『まぶた
 宇能鴻一郎『姫君を喰う話―宇能鴻一郎傑作短編集―
 つげ義春『義男の青春・別離
【今月の新潮文庫】
ジョセフ・ノックス、池田真紀子 訳『トゥルー・クライム・ストーリー』
池上冬樹/驚くほど見事なストーリーテラー
【コラム】
三枝昴之・小澤 實/掌のうた

[とんぼの本]編集室だより

三宅香帆/物語のふちでおしゃべり 第18回

松原実穂子『ウクライナのサイバー戦争』(新潮新書)
松原実穂子/ウクライナのサイバー防御の秘密

崎山蒼志/ふと、新世界と繋がって 第12回
【連載】
橋本 直(銀シャリ)/細かいところが気になりすぎて 第11回
エリイ(Chim↑Pom from Smappa!Group)/生時記 第13回
近藤ようこ 原作・梨木香歩/家守綺譚 第12回
高嶋政伸/おつむの良い子は長居しない 第11回
大木 毅/指揮官と参謀たちの太平洋戦争 第10回
伊与原 新/翠雨の人 第20回
川本三郎/荷風の昭和 第64回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、村上春樹さん。

◎卒業した大学はOBも図書館が使えるので時々籠りに行きます。嬉しいのは古い雑誌のバックナンバーが開架になっていて自由に読めること。ここが明治期の雑誌を埼玉の分館へ移した時は坪内祐三さんが激怒していましたが、僕の興味は狭く浅いので十分楽しい。例の西垣文庫も勿論健在です。
◎先日この図書館で読んだのは、「海」の草野進連載の後、「キネ旬」の「仁義なき戦い」関連ページが切りとられているのに舌打ちしてから、「文藝春秋」1975年11月号の「ドン・キホーテをもう読みましたか」。これは「あなたのまだお読みになっていない必読書は何でしょうか」という嫌がらせみたいなアンケート企画で、例えば遠藤周作の回答は『源氏物語』『日本書紀』、阿川弘之は『旧約聖書』『戦争と平和』『マルクス・レーニン全集』、吉行淳之介は『源氏物語』『資本論』『聖書』。それぞれ言い訳つきなのが可笑しく、宮城音弥は『味の生理学』『ジュスティーヌ』『神経系研究』を挙げ、「われわれのように科学の領域の人間は、一冊の本を始めから終りまで完全に読了することはありません」(本当?)。良心を毎度痛めながらも読んだフリをしてきた本が山程ある編集者としては、あれこれ身につまされます。
◎今夏「怪人マブゼ博士」を初めて観ました。この映画のリメイク版に狂喜して、マンボウ・マブゼ共和国まで作ったのが北杜夫さん。博士配下の悪漢共が「脅してカネもとれるのに狂わせるだけでいいってボスが止めるんだ」とボヤくのが殆どギャグで、そんな実利を無視して混乱だけを望む怪人はいかにも北さん好みです。一度だけお会いできましたが、あの時は「マブゼ」を観たことがあるフリをした方がよかったかなあ。
▽次号の刊行は九月二十七日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。