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今月の表紙の筆蹟は、北村薫さん。

波 2022年12月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2022/11/28

発売日 2022/11/28
JANコード 4910068231222
定価 100円(税込)
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阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第63回
北村 薫『水 本の小説』
江國香織/豊かな水脈

リチャード・パワーズ、木原善彦 訳『惑う星』
上田岳弘/地球文明の陰画

ふかわりょう『ひとりで生きると決めたんだ』
鈴木涼美/共感の時代のソリチュード

アダム・ファーガソン、黒輪篤嗣 訳、桐谷知未 訳、池上彰 解説『ハイパーインフレの悪夢―ドイツ「国家破綻の歴史」は警告する―』
川田晴一/物価高と通貨安の先に何があるのか

近衛龍春『御家の大事』
末國善己/戦国を生き抜いた勇者たちのサバイバル術

成田名璃子『世はすべて美しい織物』
藤田香織/私が私であるために生きること

宮崎哲弥『教養としての上級語彙―知的人生のための500語―』(新潮選書)
読書猿/知的営為の舞台裏

橋本陽介『中国語は不思議―「近くて遠い言語」の謎を解く―』(新潮選書)
高野秀行/言語の達人が押しまくる中国語のツボ
【モーテン・H・クリスチャンセン、ニック・チェイター、塩原通緒 訳『言語はこうして生まれる―「即興する脳」とジェスチャーゲーム―』刊行記念特集】
仲野 徹/言語の起源はジェスチャーだった?
竹内 薫/納得から確信へ――新たな言語学の誕生
【特別寄稿】
末盛千枝子/あのほほえみ――天に一人を増しぬ 後編

【短篇小説】
北村 薫/ブランデーから授業 後篇
【私の好きな新潮文庫】
西岡壱誠/地頭がよくなる3冊
 上橋菜穂子『精霊の守り人
 恩田 陸『夜のピクニック
 伊坂幸太郎『オー!ファーザー
【今月の新潮文庫】
大森 望/日本ファンタジーノベル大賞の作家たち
 畠中 恵『いちねんかん
 遠田潤子『月桃夜
 堀川アサコ『悪い麗人―帝都マユズミ探偵研究所―
 高丘哲次『約束の果て―黒と紫の国―
【コラム】
三枝昴之・小澤 實/掌のうた

三宅香帆/物語のふちでおしゃべり 第9回

物江 潤『デマ・陰謀論・カルト―スマホ教という宗教―』(新潮新書)
物江 潤/実家の母が陰謀論者になってしまったら

[とんぼの本]編集室だより

崎山蒼志/ふと、新世界と繋がって 第3回
【新連載】
大木 毅/指揮官と参謀たちの太平洋戦争
【連載】
南沢奈央 イラスト・黒田硫黄/今日も寄席に行きたくなって 最終回
エリイ(Chim↑Pom from Smappa!Group)/生時記 第4回
近藤ようこ 原作・梨木香歩/家守綺譚 第3回
梨木香歩/猫ヤナギ芽ぶく 第5回
橋本 直(銀シャリ)/細かいところが気になりすぎて 第2回
伊与原 新/翠雨の人 第12回
内田 樹/カミュ論 第16回
春画ール/春画の穴 最終回
川本三郎/荷風の昭和 第55回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、北村薫さん。

◎「新潮社クラブ(社の近くのカンヅメ施設)に川端三島開高健たち文豪の幽霊が出る」という噂がありますが、前二者はクラブと縁薄く恐らく泊ったこともない筈で、残念乍ら出そうにありません。開高さんはクラブに半年も籠ったのに『花終る闇』を三十七枚しか書けなかったり、そのくせ自宅にクラブの部屋と似た書斎を作ったりで情念が残っていそうですが、さて。
◎僕がこの作家の盟友、谷沢永一さんに「クラブに開高さんの幽霊が出るんですが、派手なセーターの太った紳士が大声の大阪弁で『哀れな開高です』と挨拶して一口噺ジョークを始めるから全然怖くないんですって」と実に適当極まる話をしたら、嬉しそうに「彼はクラブが好きでしたね。新潮社おたくのQ重役が焦れて『半年で三十七枚とは何事だ。三島さんなら疾うに一冊書き終ってるぞ』。この一言で開高はパンッと出て行ったんです」。茅ヶ崎の自宅、つまりクラブの部屋に似た書斎が作られるのは飛び出た直後のこと。
◎この時(1974年)カンヅメ仲間だった井上ひさしさんに向って、開高さん曰く「原稿用紙のお化けが出ると言って、家に帰ってしまった作家もおりますぞ」、「クラブの壁という壁が夜になると、にわかにじっとりと濡れてくる(略)。これは原稿が書けなくて七転八倒した老若男女の作家や評論家たちの行方知れない念力が転移したものなんですな」(『開高健全集』第22巻月報「こんな生活」)。
◎クラブ連泊中の開高さんが度々出前させたのは某蕎麦屋の鍋焼ウドン。作家はその凡庸さを連綿と描写し、だが「ここの鍋焼ウドンに独立排除的なセンチメンタル・ヴァリューを感じている」(「励む」『白いページ』所収)。志ん朝(矢来町)師匠もここの出前のもりを冷蔵庫に入れ、翌朝酒でほぐし、ツユをかけてたぐるのが好きでした。この至極普通の町蕎麦屋、今なお健在です。
▽次号の刊行は十二月二十七日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。