新連作 本谷有希子「パンケーキ2.0」 久栖博季「ウミガメを砕く」(180枚)
【特集】七つの視座で読む村上春樹新作
新潮 2023年6月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2023/05/06 |
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JANコード | 4910049010631 |
定価 | 1,200円(税込) |
【新連作第一回】
◆パンケーキ2.0/本谷有希子
どうしてこの世界は私にフォロワーが増えないように作られているんだろう。独創独走の会心作!
【新潮新人賞受賞第一作】
◆ウミガメを砕く/久栖博季
北海道が全停電した夜、わたしは剥製のウミガメを抱え、まっすぐな迷宮と化した公園を彷徨う――。孤独な魂を描く気鋭渾身の一作。
◆あなたたちはわたしたちを夢みる[連作第三回]/川上弘美
記憶が更新され、彼女はぼくへの愛を失った。そして母もかつて――重層する記憶・夢・魂。
◆だい三の月/黒田夏子
交錯し続ける、踊りの教え手と習い手の思惑。舞台上に不意に満月が昇り、関係が動き出す。
■■ 連載小説 ■■
◆墳墓記(十)/高村 薫
◆大使とその妻(二十一)/水村美苗
◆天使も踏むを畏れるところ(三十三)/松家仁之
◆漂流(四十三)/町田 康
◆チェロ湖(四十五)/いしいしんじ
第47回 川端康成文学賞発表
◆反対方向行き/滝口悠生
【選評】荒川洋治/角田光代/辻原 登/堀江敏幸/村田喜代子
第36回《三島由紀夫賞》候補作品発表
第56回《新潮新人賞》応募規定 [ウェブ応募受付中!]
【選考委員】上田岳弘/大澤信亮/小山田浩子/金原ひとみ/又吉直樹
【特集】七つの視座で読む村上春樹新作――『街とその不確かな壁』
◆心のなかの、いまだ何処にも存在しない場所/安藤礼二
◆「集大成」なのか、「再生産」なのか/小川 哲
◆垂直移動に耐える/小川洋子
◆Name the fallen human./小沢健二
◆恋できみが死なない理由/最果タヒ
◆本当の君はどこにいるのか、あるいは街、図書館、幽霊、壁抜け/沼野充義
◆吉本ばななの影から、村上春樹さんへ/吉本ばなな
◆天皇と分人――平野啓一郎『三島由紀夫論』を読む/井上隆史
【追悼・富岡多惠子】
◆ひとりで立つ覚悟/黒川 創
◆胸にイチモツ、背に荷物/佐々木幹郎
【リレーコラム】街の気分と思考(17)
◆角館/川上弘美
◆豊島で学んだこと/塩田千春
◆嫉妬と階級の『源氏物語』(六)/大塚ひかり
◆小林秀雄(九十六)/大澤信亮
◆地上に星座をつくる/石川直樹
第百十七回・執念のアンナプルナ
◆見えない音、聴こえない絵(二一六)/大竹伸朗
【私の書棚の現在地】
◆阿部万里江「ちんどん屋の響き」/【書評委員】滝口悠生
◆ベルンハルト・シュリンク『別れの色彩』/【書評委員】古谷田奈月
■■ 本 ■■
◆津村記久子『水車小屋のネネ』/片山亜紀
◆平山周吉『小津安二郎』/河野有理
◆岡田利規『掃除機』/松原俊太郎
■■ 新潮 ■■
◆その村の酒/内田洋子
◆そろそろ山椒/野々井 透
◆普通の隣人/室橋裕和
◆「善の凡庸さ」の時代/山内朋樹
この号の誌面
立ち読み
編集長から
本谷有希子「パンケーキ2.0」
特集・七つの視座で読む村上春樹新作
◎本谷有希子・新連作第一回「パンケーキ2.0」の主人公は友人とともに「パンケーキと自撮りする」という「人として最も愚かさが凝縮した行為」に熱中する女性だ。「人間自撮り棒」を自称する彼女の〈私〉をSNSに公開することへの執念は凄まじく、本谷氏の加速する想像力は「承認欲求」という言葉を破壊するほどにパワフルだ。本谷作品の登場人物が抱く世界への敵意、自己嫌悪、向けられた悪意への感受性は、なぜ読む者を深々と励ますのか? その魅力的な謎は本作でさらに深まっている◎特集「七つの視座で読む村上春樹新作」では、村上文学の集大成と呼ぶべき『街とその不確かな壁』を安藤礼二・小川哲・小川洋子・小沢健二・最果タヒ・沼野充義・吉本ばななの各氏に読み解いていただいた。読むことの根源にある精神の自由が誌面から見えてくる◎新鋭・久栖博季「ウミガメを砕く」(180枚)にもご注目を。北海道が全停電した一夜を魔術的想像力で描く。
編集長・矢野 優
松家仁之「天使も踏むを畏れるところ」 主要参考文献
- 『建設省二十年史』建設省二十年史編集委員会(社団法人建設広報協議会)
- 『現代建築をつくる人々』浜口隆一・村松貞次郎(KK世界書院)
- 『皇居造営 宮殿・桂・伊勢などの思い出』小幡祥一郎
- 『昭和天皇と田島道治と吉田茂 初代宮内庁長官の「日記」と「文書」から』加藤恭子(人文書館)
- 『ワシントンハイツ ―GHQが東京に刻んだ戦後―』秋尾沙戸子(新潮文庫)
- 「工芸ニュース」1949年6月号 商工省工芸指導所(技術資料刊行会)
- 『皇室建築 内匠寮の人と作品』監修 鈴木裕之(建築画報社)
- 『日本の建築 その芸術的本質について I』吉田鉄郎 薬師寺厚訳(東海大学文化選書)
- 『日本の建築 その芸術的本質について II』吉田鉄郎 薬師寺厚訳(東海大学文化選書)
- 『侍従長の遺言 昭和天皇との50年』徳川義寛 聞き書き・解説 岩井克己(朝日新聞社)
- 『日本軍兵士──アジア・太平洋戦争の現実』吉田裕(中公新書)
- 『私のなかの東京』野口冨士男(文藝春秋)
- 『完本 皇居前広場』原武史(文春学藝ライブラリー)
- 『東京都市計画物語』越澤明(ちくま学芸文庫)
- 『関東大震災 大東京圏の揺れを知る』武村雅之(鹿島出版会)
- 『外濠 江戸東京の水回廊』法政大学エコ地域デザイン研究所編(鹿島出版会)
- 『建築の心と技 村松貞次郎対談集――1』(新建築社)
- 『建築をめぐる回想と思索 キサデコールセミナーシリーズ2』聞き手・長谷川堯(新建築社)
- 『硫黄島クロニクル 島民の運命』全国硫黄島島民の会
- 『建築探偵の冒険』藤森照信(ちくま文庫)
- 『昭和天皇実録 第十一』宮内庁(東京書籍)
- 『秩父宮 昭和天皇弟宮の生涯』保阪正康(中公文庫)
- 「新建築 1982年7月臨時増刊 桂離宮」(新建築社)
- 『宮殿をつくる』高尾亮一(求龍堂)
- 『皇居』入江相政(保育社)
- 『入江相政日記 第五巻』入江為年監修(朝日文庫)
- 『侍従とパイプ』入江相政(中公文庫)
- 『こんなに面白い東京国立博物館』新潮社編 東京国立博物館監修
- 『探検! 東京国立博物館』藤森照信・山口晃(淡交社)
- 『カイコの病気とたたかう』鮎沢啓夫(岩波科学の本)
- 『皇后陛下傘寿記念 皇后さまとご養蚕』宮内庁協力(扶桑社)
- 『フランク・ロイド・ライトの帝国ホテル』明石信道 文・実測図面 村井修 写真(建築資料研究社)
- 『日本鉄道旅行地図帳 歴史編成 満洲樺太』監修 今尾恵介・原武史(新潮社)
- 「芸術新潮」2008年8月号「大特集 北京」(新潮社)
- 『完訳紫禁城の黄昏』上・下 R.F.ジョンストン 中山理 訳 渡部昇一 監修(祥伝社)
- 『漱石紀行文集』藤井淑禎 編(岩波文庫)
- 『吉田謙吉が撮った戦前の東アジア 1934年満洲/1939年南支・朝鮮南部』塩沢珠江=著 松重充浩=監修(草思社)
- 『日本鉄道旅行地図帳 歴史編成 朝鮮台湾』監修 今尾恵介・原武史(新潮社)
- 『満洲朝鮮復刻時刻表 附台湾・樺太復刻時刻表』日本鉄道旅行地図帳編集部[編](新潮社)
- 『火と水と木の詩 私はなぜ建築家になったか』吉村順三(新潮社)
- 『日本の近代をデザインした先駆者 生誕150周年記念後藤新平展図録』(財団法人東京市政調査会)
- 「芸術新潮」2006年8月号「全一冊 韓国 未知の美と出会う旅」(新潮社)
- 『図説 満鉄 「満洲」の巨人』西澤泰彦(河出書房新社)
- 『満洲鉄道まぼろし旅行』案内人・川村湊(ネスコ 文藝春秋)
- 『韓国の民家』張 保雄著 佐々木史郎訳(古今書院)
- 『建築の前夜 前川國男論』松隈洋(みすず書房)
- 『前川國男 賊軍の将』宮内嘉久(晶文社)
- 『一建築家の信條』前川國男 宮内嘉久編(晶文社)
- 『日本建築宣言文集』藤井正一郎・山口廣編著(彰国社)
- 『皇居に生きる武蔵野』毎日新聞社社会部写真部編(毎日新聞社)
- 『天皇と侍従長』岸田英夫(朝日文庫)
- 『スウェーデンの建築家』吉田鉄郎(彰国社)
- 「野村東宮大夫の思い出」入江相政(「文藝春秋」1957年10月号)
- 『ドキュメント皇室典範』高尾栄司(幻冬舎新書)
- 『僕の留学時代』東山魁夷(日本経済新聞社)
- 「芸術新潮」2008年5月号「生誕100年記念特集 東山魁夷 国民画家の素顔」(新潮社)
- 「皇居新宮殿における宮内庁試案の意図」小畑俊介 山崎鯛介(日本建築学会計画系論文集 第85巻 第768号)
- 『宮中歳時記』入江相政編(小学館文庫)
- 『十番目の女神』高尾亮一(求龍堂)
- 『小泉信三 天皇の師として、自由主義者として』小川原正道(中公新書)
- 『東宮御所 建築 美術 庭園』設計・谷口吉郎 撮影・渡辺義雄(毎日新聞社)
- 『現代日本建築家全集6 谷口吉郎』栗田勇監修(三一書房)
- 『ふたりの山小屋だより』岸田衿子 岸田今日子(文春文庫)
- 『大学村七十年誌』北軽井沢大学村組合編(北軽井沢大学村組合事務所)
- 「週刊朝日」1958年12月14日号(朝日新聞社)
- 「週刊文春」創刊60周年記念特別号「秘話とスクープ証言で綴る 美智子さまの60年」(文藝春秋)
- 「芸術新潮」1960年6月号(新潮社)
- 『千鳥ヶ淵戦没者墓苑 創建50年史』(財団法人千鳥ヶ淵戦没者墓苑奉仕会編)
- 『谷口吉郎著作集』第四巻(淡交社)
- 『谷口吉郎著作集』第五巻(淡交社)
- 「赤坂御用地と常盤松御用邸の変遷」阿部宗広(国立科博専報(39)2005年3月25日)
- 『鶴見俊輔著作集5 時論・エッセイ』(筑摩書房)
- 『続 羊の歌』加藤周一(岩波新書)
- 『昭和天皇実録 第十二』(東京書籍)
- 『昭和天皇実録 第十三』(東京書籍)
- 『入江相政日記 第六巻』(朝日文庫)
- 『宮殿造営記録 解説編』(宮内庁)
- 『「暮しの手帖」とわたし』大橋鎭子(暮しの手帖社)
- 「皇居新宮殿の実施案に反映された高尾亮一と吉村順三の設計思想」小畑俊介(日本建築学会計画系論文集 第85巻 第772号)
- 『風流夢譚』深沢七郎(志木電子書籍)
- 『一九六一年冬「風流夢譚」事件』京谷秀夫(志木電子書籍)
- 『決定版 三島由紀夫全集 30 評論5』(新潮社)
- 『感情天皇論』大塚英志(ちくま新書)
- 『吉村順三建築図集 別巻 補遺』(同朋舎出版)
- 「明治宮殿の建設経緯に見る表宮殿の設計経緯」山崎鯛介(日本建築学会計画系論文集 第572号)
- 『天皇の料理番』上・下 杉森久英(集英社文庫)
- 『味 天皇の料理番が語る昭和』秋山徳蔵(中公文庫)
- 『味の散歩』秋山徳蔵(中公文庫)
- 『料理のコツ』秋山徳蔵(中公文庫)
- 『昭和天皇と鰻茶漬』谷部金次郎(文春文庫)
- 『昭和天皇のお食事』渡辺誠(文春文庫)
- 『天皇陛下が愛した洋のレシピ』窪田好直(河出書房新社)
- 『天皇陛下料理番の和のレシピ』谷部金次郎(幻冬舎)
- 『天皇さまお脈拝見』杉村昌雄(新潮社)
- 『余丁町停留所』入江相政(人文書院)
- 『日本名建築写真選集18 京都御所・仙洞御所』撮影 西川孟(新潮社)
- 『《京都》御所と離宮の栞 其の二十五』(宮内庁)
- 『宮内庁京都事務所 年報2』令和2年度(宮内庁)
- 『世界の花 その花のふるさと』飯田深雪・村田ユリ(講談社)
- 『磯崎新と藤森照信のモダニズム建築談義』(六耀社)
- 『国立代々木競技場と丹下健三』豊川斎赫(TOTO建築叢書)
- 『本瓦葺の技術』太田博太郎・監修 井上新太郎・著(彰国社)
- 『天皇さまの還暦』入江相政(朝日新聞社)
- 『天皇陛下 科学を語る』朝日新聞出版編 宮内庁侍従職協力(朝日新聞出版)
- 『皇后美智子さま 全御歌』釈 秦 澄美枝(新潮社)
- 『首都高物語』一般財団法人 首都高速道路協会(青草書房)
- 「わが国の広域地盤沈下対策と地下水の適正利用について」上田健二(地下水学会誌 第57巻第1号3〜7)
- 「赤坂御用地と常盤松御用邸の変遷」阿部宗広(国立科博専報 [39]2005年3月25日)
- 『日本三大洋食考』山本嘉次郎(昭文社出版部)
- 『三谷隆正──人・思想・信仰──』南原繁・高木八尺・鈴木俊郎編(岩波書店)
- 『佐佐木象堂』高尾亮一(白玉書房)
- 『象徴天皇制の成立 昭和天皇と宮中の「葛藤」』茶谷誠一(NHKブックス)
- 『民衆の芸術』ウィリアム・モリス著 中橋一夫訳(岩波文庫)
- 『イタリア・ルネサンスの文化』(上・下)ブルクハルト 柴田治三郎訳(中公文庫)
- 「『宮中・府中の別』の解体過程──宮内省から宮内府、宮内庁へ──」瀬畑源(一橋社会科学 第5巻 2013年7月)
- 「GHQ憲法草案第八二条の皇室財政規定と『世襲財産』」山田亮介(日本法学 第七十九巻第一号 二〇一三年六月)
- 『人類と建築の歴史』藤森照信(ちくまプリマー新書)
- 『フジモリ式建築入門』藤森照信(ちくまプリマー新書)
- 『磯崎新と藤森照信の茶席建築談義』磯崎新・藤森照信(六耀社)
- 『皇后陛下古希記念 皇后さまの御親蚕 皇后さまが育てられた蚕が正倉院宝物をよみがえらせた』(扶桑社)
- 『宮殿造営記録 図面編』(宮内庁)
- 『黒田辰秋 木工の先達に学ぶ』早川謙之輔(新潮社)
- 『濠端随筆』入江相政(中公文庫)
- 『宮殿造営の記録/第1巻総括編・事務編』編纂兼発行・宮殿造営工事共同企業体工事事務所
- 『宮殿造営の記録/第2巻建築編(1)』編纂兼発行・宮殿造営工事共同企業体工事事務所
バックナンバー
雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。
雑誌から生まれた本
新潮とは?
文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。