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今月の表紙の筆蹟/絵は、矢部太郎さん。

波 2021年7月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2021/06/29

発売日 2021/06/29
JANコード 4910068230713
定価 100円(税込)
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【筒井康隆掌篇小説館】
筒井康隆/お咲の人生
【短篇小説】
北村 薫/〇 まる
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第46回
【矢部太郎『ぼくのお父さん』刊行記念特集】
ジェーン・スー/普通のお父さん、そうではないお父さん。
[対談]矢部太郎×萩尾望都/萩尾望都さんと僕
矢部太郎/萩尾望都さんと僕〈漫画篇〉
【小池真理子『神よ憐れみたまえ』刊行記念】
[特別エッセイ]小池真理子/喪失と創作

加藤秀俊『九十歳のラブレター』
古市憲寿/代表的知識人が描く極私的ラブストーリー

「新潮」編集部 編『パンデミック日記』
武田 徹/ジャーナリズムの初志

三国美千子『骨を撫でる』
東 直子/自己を縛るものはなにか

佐藤厚志『象の皮膚』
小出和代/脱ぎ捨てられない理不尽との対峙

森 美樹『母親病』
三浦天紗子/母や妻である前に

エムカク『明石家さんまヒストリー2 1982~1985 生きてるだけで丸もうけ』
高田文夫/〈笑芸〉チャンピオン誕生の記録

日々野鮎美、信濃川日出雄 イラスト・漫画『『山と食欲と私』公式 鮎美ちゃんとはじめる山登り―気軽に登れる全国名山27選ガイド―』
イモトアヤコ/『山と食欲と私』と私

岩井圭也『水よ踊れ』
北上次郎/自由であることの、強さと心地よさ

清水克行『室町は今日もハードボイルド―日本中世のアナーキーな世界―』
清水克行/だらだら、チンタラ、室町人にまなぶ仕事術
【松田美智子『仁義なき戦い 菅原文太伝』刊行記念特集】
堀川惠子/人生を二度生きた男 菅原文太の意外な実像
松田美智子/菅原文太が演じる『老人と海』を観たかった
【『クイーンズ・ギャンビット』(新潮文庫)刊行記念特集】
ウォルター・テヴィス、小澤身和子 訳/クイーンズ・ギャンビット(抄
〈チェス解説〉渡辺 暁/三十七年の孤独――『クイーンズ・ギャンビット』とチェス描写
【私の好きな新潮文庫】
佐橋佳幸/RockとBookに首ったけ
 O・ヘンリー、小川高義 訳『最後のひと葉―O・ヘンリー傑作選II―
 ジョン・アーヴィング、筒井正明 訳『ガープの世界〔上・下〕
 ポール・オースター、柴田元幸 訳『幽霊たち
【今月の新潮文庫】
谷川俊太郎『さよならは仮のことば―谷川俊太郎詩集―』
尾崎真理子/循環し、再生することばたち
【コラム】
[とんぼの本]編集室だより

久里建人『その病気、市販薬で治せます』(新潮新書)
久里建人/買った薬の成分、言えますか?

三枝昂之・小澤 實/掌のうた
【新連載】
大木 毅/指揮官たちの第二次世界大戦 将星の横顔をみる
【連載】
ジェーン・スー/マイ・フェア・ダディ! 介護未満の父に娘ができること 第10回
南沢奈央 イラスト・黒田硫黄/今日も寄席に行きたくなって 第19回
二宮敦人/ぼくらは人間修行中 第8回
小松 貴/にっぽん怪虫記 第19回
川本三郎/荷風の昭和 第38回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟/絵は、矢部太郎さん。

◎先月号の阿川佐和子さんの頁に夏目家の糠床の話が出てきました。故半藤一利さんの奥様・末利子さんが祖母(夏目鏡子、漱石夫人ですね)、母と受け継いできた糠床を大事にしている。東京農大の調べでは、日本最古の植物性乳酸菌も検出された等々。
◎一利さんを偲ぶ対談でお会いしたため、阿川さんは「少し分けていただけませんか」と言えなかったそうですが、実は十五年程前、この糠味噌がわが家へ来たことがあります。漱石好きのある作家が半藤家よりお裾分けに与り、その方からこっそり分けてもらったもの。チョコレート色をした大きな足の親指くらいの糠味噌をわが糠床へ混ぜ込むと、これが強かな実力者で、瞬く間に全漬物を自分の味に染め直していきました。濃厚艶冶で、どこか鉄火な味。末利子さんの表現を先月号から孫引きすれば「フルーティーな甘い香と頗るつきの美味」。惜しいことに子供が生まれたバタバタで糠床は早々とダメにしてしまったのですが……。
◎今年一月十日消印、「半藤一利・代」の署名で、「」の定期送本を止めてくれろという葉書を貰いました。雑誌と編集長名以外は印刷の文面に「毎号愉しみとして参りましたが(略)もはや目通しも片付けも億劫になって参りました」云々。弱られているのかなと思う間もなく、十二日に訃報が届きます。何ときれいな死支度、と雑誌編集の遥かな後輩として声を呑みました。
◎半藤さんの代表作『日本のいちばん長い日』の映画は、岡本喜八監督版が好きなため、リメイク版は未見ですが、「松坂桃李は喜八版を凌駕してますよ」と後輩が熱弁を振るうので今夏観るつもり。あれもまた、さまざまな死支度が出てくる物語でした。
▽次号の刊行は七月二十七日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。