今月の表紙の筆蹟は、ポール・オースターさん。
波 2024年12月号
(毎月27日発売)
発売日 | 2024/11/27 |
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JANコード | 4910068231246 |
定価 | 100円(税込) |
筒井康隆/少し腰を据えるか シリーズ 第17回
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第87回
ポール・オースター、柴田元幸 訳『4 3 2 1』
小野正嗣/企みの壮大さ、人間愛の揺るぎなさ
石田夏穂『ミスター・チームリーダー』
羽田圭介/正しい道を歩めているか確証をもてない中で
角幡唯介『地図なき山―日高山脈49日漂泊行―』
松永K三蔵/“野放図”の山行、探検家の誠実
橋本 直『細かいところが気になりすぎて』
齋藤 孝/そのツッコミはフロイトに通ず
ダーチャ・マライーニ、望月紀子 訳『わたしの人生』(新潮クレスト・ブックス)
望月紀子/日本のお巡りさんになる
岡野 民『あの時のわたし―自分らしい人生に、ほんとうに大切なこと―』
松浦弥太郎/人生を大きく変える「覚悟」と「即答」
内村薫風『ボートと鏡』
マライ・メントライン/人の「納得感」の落としどころとは
黒川 創『この星のソウル』
斎藤真理子/一人でいるときに読みたい本
高山裕二『ロベスピエール―民主主義を信じた「独裁者」―』(新潮選書)
鹿島 茂/ロベスピエール、あるいは美徳の不幸
本の要約サービスflier編集部『必読ベストセラーを超要約! ビジネス書大全―一生モノの仕事力が身につく名著100冊を1冊にまとめてみた―』
栗下直也/ビジネスマンが手元に置くべきガイドブック
【朝比奈 秋『サンショウウオの四十九日』芥川賞受賞記念】
[対談]朝比奈 秋×萩尾望都/小説と漫画、二組の結合双生児をめぐる双数対話
【特別企画】
南陀楼綾繁/「編集者かく戦へり」展にみる新潮社編集者銘々伝
【特別エッセイ】
南沢奈央/見知らぬ土地で、舞台をつくる 「可児日記」後篇
【SHUN『歌集 月は綺麗で死んでもいいわ』刊行記念】
[公開トークイベント]俵 万智×小佐野 彈×上坂あゆ美×國兼秀二×手塚マキ×SHUN/沢山の薔薇を咲かせて
【私の好きな新潮文庫】
窪塚洋介/遠藤周作は到達している
遠藤周作『沈黙』
遠藤周作『海と毒薬』
遠藤周作『死海のほとり』
【今月の新潮文庫】
玖月晞『少年の君』
小橋めぐみ/孤独な二人の愛を描いた青春ミステリー
【C・S・ルイス『ナルニア国物語』全7巻刊行開始】
C・S・ルイス、小澤身和子 訳『ナルニア国物語1 ライオンと魔女』 小谷真理/その冒険は、かつてと同じものではなく
【コラム】
石戸 諭『「嫌われ者」の正体―日本のトリックスター―』(新潮新書)
石戸 諭/「思慮深さ」を失っていないか
三枝昴之・小澤 實/掌のうた
[とんぼの本]編集室だより
【連載】
杏/杏のパリ細うで繁盛記 第11回
中村うさぎ/老後破産の女王 第9回
エリイ(Chim↑Pom from Smappa!Group)/生時記 第28回
近藤ようこ 原作・梨木香歩/家守綺譚 第27回
梨木香歩/猫ヤナギ芽ぶく 第17回
古市憲寿/絶対に挫折しない世界史 第8回
三谷幸喜×ペリー荻野/もうひとつ、いいですか? 第8回
坪木和久/天気のからくり 第16回
椎名 誠/こんな友だちがいた 第12回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から
立ち読み
編集長から
今月の表紙の筆蹟は、ポール・オースターさん。
◎船橋洋一氏の新刊『宿命の子』は安倍政権でのさまざまな政策決定の裏面史が、その場にいたかのような迫真力のある文体で描かれて、正に巻措く能わざる人間喜劇の書。
◎この手の調査報道の先蹤にはボブ・ウッドワードの一連の米国歴代大統領ものがあって、クリントン、ブッシュ、オバマ、トランプ等の権力中枢をめぐる著作はいずれも退屈しのぎに絶好の面白本です。ウッドワードは、カール・バーンスタインと共に『大統領の陰謀』でニクソンのウォーターゲート事件を暴いた凄腕ジャーナリスト。
◎『~陰謀』は映画版もあって、それによるとウッドワードは情報を取って来るのは優れているけれど、文章はバーンスタインの方が上手いんですね。昔、小社週刊誌にもこれに似た二人組がいて、片方(某業界に滅法強い)が取材をして戻ってくると、もう片方が彼から根掘り葉掘り聞いて原稿に向い、多くのスクープ記事を書いていました。稗田阿礼と太安万侶みたいな名コンビ。
◎『~陰謀』の原題はAll the President’s Menで、『すべての王の臣(オール・ザ・キングスメン)』(やはり記者が腐敗した政治家に抗う物語で、小説も映画も有名)を踏まえています。元々はマザー・グース(ハンプティ・ダンプティ)の〈王様の家来みんな(オール・ザ・キングスメン)が頑張っても割れた卵は元に戻せない〉という詞から。権力の崩壊を暗示している訳です。
◎学生の頃Public Affairsという米国製成人映画を観たら、TV記者が上院議員候補の悪を暴く話で、思わず感動しました。記者が権力と戦う米国的物語の伝統の力で感動したと考えてきましたが、やっぱりアネット・ヘブンという主演スタアに惹かれてたのかなあ。この女優、先日読んだ辻原登さんの小説に出てきてドキッとしました。
▽次号の刊行は十二月二十六日です。
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雑誌から生まれた本
波とは?
1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。
創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。
創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。
現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。