新潮新書
創刊13周年の話
新潮新書はこの4月で創刊13周年を迎えました。これも皆様のおかげです。ありがとうございます。
この13年で、ミリオンセラーとなったのは『バカの壁』『国家の品格』『人は見た目が9割』の3冊です。いずれもタイトルが流行語になったり、話題になったりしましたが、中でも『人は見た目が9割』は、タイトルについて色々な反応があったように記憶しています。「まったくその通りだ」という声も多かった反面、「なんて酷いことを言うのか」といった意見を持った方もいたようです。著者の竹内一郎さんにも、いろいろな反応が寄せられたようで、随分ご苦労をかけました。
なぜか社内で私に対して「なんて酷いことを」と言う人がいなかったのは、いつもそんなことを平気で口にしている人間だから、言ってもムダだと思われたのかもしれません。
さて、そういう人間でも、「この本は勇気があるなあ」と思うのが、4月新刊の『言ってはいけない―残酷すぎる真実―』(橘玲・著)です。
目次には、「馬鹿は遺伝なのか」「美人とブスでは経済格差3600万円」という刺激的な見出しが並んでいます。
もちろん、こういう思いきったことを何の根拠もなく書いているはずはなく、著者は欧米のさまざまな学術論文をもとに、普段語られない事実を次々と突き付けてきます。「これは不愉快な本だ。だから、気分よく一日を終りたい人は読むのをやめたほうがいい」と著者は書いていますが、私は現代人必読の書ではないかと思いました。
他の4点をご紹介します(今月は5点刊行です)。
『組織の掟』(佐藤優・著)は、外務省で政治家や上司相手に生き抜いてきた著者が伝授する「組織で生き抜く極意」。無理な命令が下されたときにどうするか、無能な上司とはどうつきあうか等々、組織人なら誰もが知りたい「極意」が満載です。外務省裏話としても楽しめます。
『パリピ経済―パーティーピープルが市場を動かす―』(原田曜平・著)は、「さとり世代」「マイルドヤンキー」など常に流行語を世に出してきた著者の最新作。今回注目したのは、「パリピ(パーティーピープル)」と呼ばれる若者たち。ハロウィン、EDM系の野外フェス、オクトーバーフェストなど「いつの間にこんなに盛り上がったの」といった最近のブームの背景にはパリピがいた! という衝撃の事実が明らかになります。目からウロコ、という決まり文句はあまり使いたくないのですが、本当にウロコがボロボロ落ちました。
『韓国は裏切る』(室谷克実・著)は、ベストセラー『悪韓論』の著者による韓国論。室谷氏の強みは、必ず韓国での報道をベースに論じていく点でしょう。今回、私たちにはなかなか理解できない、韓国政治の複雑さを浮かび上がらせています。もちろんタイトルのように事態が進まないことを祈るばかりです。
『戦国夜話』(本郷和人・著)は、最新の資料などを交えて描く「関ヶ原異聞」とでもいうべき読み物。著者の本郷さんは、「バイキング」「世界一受けたい授業」などテレビ番組でもお馴染みの東京大学史料編纂所教授。面白く、かつわかりやすく歴史を語る才能は抜群ですから、歴史マニアも歴女も初心者も、誰が読んでも楽しめる内容です。
この『戦国夜話』は新潮新書の666冊目になります。
これからも新潮新書をよろしくお願いいたします。