偏差値35から東大合格を果たしたことでも注目される、西岡壱誠さんによる「東大シリーズ」から、話題の一作目が文庫に登場しました。
西岡さんは、高校までは勉強しても成績が上がらず、学年ビリ。そんななか、元担任に背中を押されたのを機に、東大受験を目指すことになったのです。偏差値35からの受験は途轍もないことであり、二浪の経験で試行錯誤を重ねました。まず、東大の入試問題を分析してみると、「知識の量を増やす」勉強では合格できない、「考える力」を身につける必要があると気づいたのです。そのために、教科書や参考書の読み方から変え、本と徹底的に議論し、受動的な読み方から能動的に「どうしてこうなるのだろう?」「本当にそうなんだろうか?」と、本と会話するつもりで読むようにしてみたのです。すると、読み込む力が付き、得た知識を運用する地頭も鍛えられ、浪人中に偏差値は70に、東大模試で全国第4位となり、ついに東大合格を果たしました。
そして、入学してみると、東大生たちの多くは、同じような本との向き合い方をしていたことを知ることになったのです。東大生の読書は、大量に読む、難しい本を読む、速く読むというイメージがありますが、まったく違っていました。すべてを丁寧に読むのではなく、わからないところは飛ばし、必要ないと思った部分は切り捨てることもあるのです。一方で、大事だと思うところには異常なほど粘るのです。それは、テクニックというよりも、「読書との距離の取り方」だと気づいたのです。
例えば、まず本を読むときに、ふつうは冒頭から読むことが多いのですが、東大生はタイトルやカバー、帯の情報などにヒントを得て読み進めます。あるときは、記者になったつもりで、疑問を抱きながら読んだり、2冊同時にパラレル読みをしているのです。これは、別の切り口から新たな情報を得ることも可能になるのです。
東大生は元々頭が良いのではなく、向き合うものに対して、いかに時間を有効に使うか、どうように距離を取るかに大きな違いがある。それは、勉強にも仕事にも効果的であると気づいた著者が、「読書」をテーマにまとめたのが本書『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書』です。PART1では5つのSTEP、PART2では6つのMETHODにより、実践的で簡潔に解説されています。
そして、あとがきでは、「本の良し悪しって、読み手によって変わるんだ」と語っています。1冊の本から10を得る人もいれば、逆に何も得ることができない人もいる。変わらなければならないのは「読み手」のほうであり、同じ本でも「読書術」が変われば、あなたが読む本は、きっと「いい本」になるはずです、と記しています。
これまで誰も指摘しなかった画期的な「読み方」で、知的好奇心が高まるヒントが満載されています。難関受験を目指す人ばかりではなく、社会人や親世代にも、是非読んでいただきたい一冊です。AIやスマホの活用が拡大し、長文を読んだり、読書が苦手な人も増えています。そんな方にも、マネするだけで本を読むのがラクになるポイントが詰まっています。
累計50万部突破の大人気「東大シリーズ」から、1作目が満を持しての文庫化です。この本を通して、あなたの「いい本」と出会ってみませんか。
『このホラーがすごい! 2024年版』(宝島社)国内編の第1位を獲得した、小田雅久仁さんの『禍』が文庫になりました。目、耳、鼻、口など、身体のパーツをモチーフにした7つの短編が収録されています。怪奇小説の新しい領域に踏み込んだ傑作です。
小田雅久仁さんは2009年、『増大派に告ぐ』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。2013年、『本にだって雄と雌があります』でTwitter文学賞国内編第1位に輝きました。2022年に『残月記』で吉川英治文学新人賞、翌年に日本SF大賞を受賞。『禍』はそれらに続く4冊目の単著となり、2024年『このホラーがすごい! 2024年版』国内編で第1位を獲得しました(同点1位は背筋さんの『近畿地方のある場所について』)。寡作ながらすべてが傑作で、どれもが高い評価を得ています。文庫版の巻末に収録されている大森望さんの解説も、以下のように始まります。
まったく、寡作にもほどがある。
たいていの小田雅久仁ファンは、ためいきと一緒にそうつぶやいているのではないか。日本ファンタジーノベル大賞を受賞したデビュー作『増大派に告ぐ』の刊行は二〇〇九年十一月。それから十六年以上も経つというのに、単著の数はわずかに四冊。いくらなんでも少なすぎる。現役の日本人作家でトップレベルのヴィジョナリーであり、圧倒的な文章力を誇るファンタジストである以上、その才能をもうちょっと世間に知らしめる努力をしてもバチは当たらないんじゃないか。
......と愚痴を言いたくなるほど本が出ないにもかかわらず、小田雅久仁の名が忘れられることなくいまも熱心に読まれつづけ、新刊が出るたびになんらかの賞に輝いていることを思うと、日本の出版界もまだまだ捨てたもんじゃないと言うべきかもしれない。(『禍』解説より)
『禍』は、1編ごとに異なる身体のパーツをモチーフにした怪奇小説集です。
「食書」では口、「耳もぐり」では耳、「喪色記」では目、「柔らかなところへ帰る」では肉(贅肉)、「農場」では鼻、「髪禍」では髪の毛、「裸婦と裸夫」では肌。人体の部位から驚くような奇想が生み出され、まだ見ぬ世界へと読者をいざないます。
怖く、恐ろしいのはもちろんのこと、人生を踏み外し、どこにも行き場がなくなってしまった人物が、新しい世界へと旅立っていく、それは身震いするような恐怖であると同時に、恍惚でもある。恐るべき奥行きを備えています。小田さんが見い出し、そして完璧な形で描き出した、怪奇小説の未踏領域に、ぜひご来臨ください。
アンガールズ結成から25年余、芸人として八面六臂の活躍を見せる田中卓志さん。そんな田中さんの初エッセイ『ちょっと不運なほうが生活は楽しい』が、このたび、新潮文庫より発売となりました。
田中さんの人柄を表すエピソードとして有名なのが、お母さんのお弁当の話ではないでしょうか。バラエティの収録で、お母さんの作ったお弁当を「冷凍食品が入っていて愛情を感じられない」と言われた田中さんが、「おい! お母さん落ち込んでるだろ! 冷凍食品がダメとか言うけどな、うちのお母さんは共働きで看護師をやっていて忙しかったんだよ! 3交代で忙しい中、弁当も作ったから、冷凍食品くらい入るんだよ! でもな、身長を一番伸ばしたのはこの弁当だ!」と反論した一幕。
そのエピソードを綴ったエッセイ「最高の食事」は、林真理子さんや角田光代さんらが選考委員をつとめる「ベスト・エッセイ2022」に選出され、本書にも収録されています。
ほかにも、お笑いをはじめて意識した「いじめっ子とお笑いと」、相方である山根良顕さんとの出会いを描いた「相方か友達か」、ぐだぐだになってしまったプロポーズの一部始終を語った「結婚相手の条件」など、笑いあり感動ありの、悲喜こもごもが綴られます。
さらに今回は、単行本未収録の文庫特典も充実しています。
まず、最新エッセイ「建築士になる」を書き下ろしていただきました。2025年12月に二級建築士試験合格を発表されたばかりの田中さんですが、その裏には苦労も、涙も、笑いもあって......。試験に向けて奮闘する田中さんの姿がユーモラスに描かれています。
また、歌人・穂村弘さんとの対談「「ジャンガジャンガ」という魔法」も特別収録。おふたりの出会い、お互いの印象、エッセイを書くテクニックなど、それぞれの分野で活躍するおふたりが縦横無尽に話をくりひろげます。
大真面目に生きているだけなのに、なぜか歩けば「ちょっと不運」なことにあたってしまう田中さん、お笑いファンも、そうでない人も、「エッセイスト・田中卓志」が大好きになってしまうこと間違いなしの1冊。ぜひこの機会に手に取ってみてはいかがでしょうか。
『あの日、君は何をした』から始まる「三ツ矢&田所刑事シリーズ」が累計50万部を突破しロングセラーとなっている、まさきとしかさん。まさきさんの新潮文庫初の作品が文庫オリジナルにて登場しました。
舞台は北海道のY市。10年前に解散した男性アイドルグループ「ファンキーカラーズ」の元メンバー・南田蒼太が刺殺体となって発見されます。一体だれが、なぜ──。芸能界を引退し、一般人として生活していた南田でしたが、元アイドル殺害事件としてメディアはセンセーショナルに報道し、ふたたび脚光を浴びることに。
南田と同じ職場のパート女性や、グループの元メンバー、元マネージャー、事件を追う週刊誌記者、かつて南田と一緒に暮らしていた伯母とその娘など、彼をめぐるさまざまな人物たちの視点で事件や南田が語られます。
プロローグとエピローグ、そしてその間に六編が収録された、連作短編ミステリです。
巻末の解説は読書系YouTube「ほんタメ」MCとしても活躍中の女優・齋藤明里さん。
「本作は、南田蒼太が誰に殺されたのか、なぜ殺されたのかという、ミステリーらしいフーダニット、ホワイダニットの謎に翻弄され、ページをめくる手が止められなくなります。しかし、それだけでは終わりません」と、本作の魅力を綴っています。
新潮社のPR誌「波」では、書評家の大矢博子さんが寄稿してくださいました。
「時にはじわじわと、時には一撃で、読者を搦めとる。これぞまさきとしかの真骨頂と言っていい」とこちらも大絶賛です。
発売5日目で早くも重版が決まった本作。札幌在住の著者が描く、身も心も凍り付くような衝撃のラストをぜひ体験してください。
庵原かのんは、横浜家庭裁判所川崎中央支部に赴任してきたばかりの家裁調査官。離婚や相続など家庭内のさまざまな「家事事件」を担当しています。
彼女のもとに持ち込まれるのは、記憶喪失の男の身元確認や行方不明者の居場所探し、奇妙な離婚調停など一筋縄ではいかない案件ばかり。それぞれの家庭にはさまざまな「謎」が隠され、それが解き明かされた先には──。
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本作は、家裁調査官である庵原かのんを主人公としたシリーズの2作目です。前作『家裁調査官・庵原かのん』では、福岡家裁北九州支部で少年事件を扱っていたかのんですが、今作では勤務地が川崎に変わり、家事事件の担当になりました。シリーズ作品ではありますが、2作目である本作から読んでも楽しめます。川崎のソウルフードであるというニュータンタンメンなど、川崎ならではの料理も見逃せません。
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本作の著者である乃南さんは、2014年から東京家庭裁判所の家裁委員会の委員を務めました。そして「裁判所という普通は行きたいとは思わない場所に、とても人間臭く働いている、実に『人間らしい』人たちがいることを知って欲しいという思い」が、本作を書くきっかけになったといいます。
乃南さんが描いた家裁調査官たちには、どんなドラマが待っていたのか? ミステリー、お仕事小説、令和の日本社会の縮図としてなど、さまざまな読み方、楽しみ方ができる本作。発売即重版となり、大きな注目を集めている物語を、この機会にぜひご一読ください。

































