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今月の1冊

 わたしが妊娠しなかったら、この物語が書かれることはなかっただろう――
 このほど完結した全7部(全14巻)、総頁数およそ5000頁におよぶ大河小説「 クリフトン年代記」の書き出しの1行です。「わたし」というのは、イギリスの港町に暮らす貧しい労働者階級の女性です。 同じ境遇の男性との結婚を間近に控えた彼女が、ふとした気まぐれである男と一夜の関係を結んだために、波瀾万丈の物語の幕が開いてしまいます。
 相手の男性は海運会社の社長、すなわち富裕な上流階級の紳士でした。やがて彼女は結婚して、運命の子ハリー・クリフトンが誕生します。 成長したハリーはまるで何かに導かれたように、海運会社の社長の娘エマ・バリントンと出会い、恋に落ちてプロポーズします。 しかし、実は兄妹かもしれないという事実が二人を残酷に引き裂いてしまいます。そして、それでも愛を貫こうとする二人の強烈な意思が、凄絶なドラマを生み出していくのです。
 1919年に始まった物語は、第二次大戦をはさんで20世紀のイギリス史を背景に展開していきます。その間にハリーとエマの前に様々な人間が現れ、愛憎と欲望にまみれた出来事が次々に起こります。 裏切り、不倫、詐欺、殺人......まるで聖書の十戒のすべてを破戒するかのようです。しかし一方で愛を保ち続ける二人は、信義を固く守り献身をいとわぬ英国古来の騎士道精神的な行動をとり続け、 それが読む者の胸を強く打ちます。

 果たして二人の純愛はどのような結末を迎えるのか。 発売されたばかりの第7部『永遠に残るは』のラストはあまりにも衝撃的で、 しかも感動的です。稀代のストーリー・テラー、J・アーチャーが人間の美醜賢愚を描き抜いたこの大作、読み始めたら頁を繰る手が止まらなくなること請け合いです。 読書の秋に、ぜひ第1巻からお楽しみください。
 

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2017年11月15日   今月の1冊

「"母娘"という切っても切れない絆で、がんじがらめになっている人に読んでほしい」「痛いけれど、慰められた本」――。 30代~50代の読者から、こんな切実な声が寄せられています。発売直後から売れ行き好調で、早々に重版が決定し、 ベストセラーの予感を漂わせている『長女たち』(篠田節子著・新潮文庫)。 他人事とは思えない介護の実情が3つの物語に描かれ、母親の介護に人生を費やす娘たちの言葉にならない思いが胸にせまってきます。
「空々しい救いは書かなかった」と、著者はあるインタビューで語っています。その言葉通り、母を世話する娘の心情は息を呑むほど切実で、ときに憎しみと苦しみが言葉になって噴出します。
 そこまでして私の人生を邪魔したかったの――。恋人と別れ、仕事のキャリアも諦めて介護する直美の抑えがたい心情。孤独死した父への悔恨に苛まれる頼子。 糖尿病の母に腎臓を提供すべきか苦悩する慧子。老親の呪縛から逃れるすべもなく、周囲からも当てにされ、一人重い現実と格闘する我慢強い娘たち。そのつらい日々であっても、著者は微かな希望を描きだしていきます。 みずからも老母を世話しつつ執筆する著者ならではの、真実にあふれた物語です。
 

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2017年10月13日   今月の1冊

 中国の領海侵犯問題、トランプ大統領誕生、迷走する北朝鮮......刊行後、物語の内容を思わせる出来事が次々に起こり「予言の書」と呼ばれた、百田尚樹著『カエルの楽園』。
 刊行から一年半が経った現在、日本をめぐる情勢は不穏さを増しています。危機に瀕するこの国を憂えた著者の決断で、このたび本書を異例の速さで「緊急文庫化」することになりました。
 そして、文庫化を記念し、応援してくださる読者の皆さまにプレゼントをご用意いたしました。

 作中に登場する、変わり者のカエル、「ハンドレッド」(本書をお読みになった方にはすぐ、彼のモデルが誰かおわかりになると思います)。ひねた表情のなかに、ユーモアを湛えた愛すべきこのキャラクターが、フィギュアの老舗、海洋堂製作の根付になりました。
 精緻かつ表情豊かな、木彫り風の根付ストラップは、さすが海洋堂ならではのクオリティの高さ。こちらを『カエルの楽園』をお買い求めいただいた読者の中から、抽選で1000名様にプレゼントいたします!! 詳しくは、文庫版『カエルの楽園』のオビをご覧くださいませ。

 文庫化に際した加筆や、櫻井よしこさんの文庫解説も読みどころです。老若男女、誰もが夢中になれる寓話にして、読者の意識を揺さぶる「警世の書」、ぜひこの機にお読みください。
 

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2017年09月15日   今月の1冊

 佐々木譲さんの「警官の血」二部作、今野敏さん「隠蔽捜査」シリーズ安東能明さん「撃てない警官」シリーズ......。精鋭揃いの新潮文庫に、また強力な警察小説が加わりました。『ドッグ・メーカー―警視庁人事一課監察係 黒滝誠治―』。
 著者の深町秋生さんは、 「このミステリーがすごい!」大賞を受賞して、2005年作家デビュー。 2011年スタートの「組織犯罪対策課八神瑛子」シリーズは40万部超のベストセラーとなっています。 キャラクター造形とアクション・シーンに定評のある、いま最も注目されている、ミステリ作家です。

 今作の主人公は、事件関係者の首に縄をつけ情報収集を行わせるという強引な手法から、 ドッグ・メーカーと呼ばれる男、黒滝誠治。刑事ではなく、「警察の中の警察」として警察官の犯罪に目を光らせる、 監察です。希代の"寝業師"白幡警務部長、美しくも根性のすわったキャリア相馬美貴警視と共に、 黒滝は警視庁内に巣食う凶悪な人物と対決します。600頁を超える大作ながら、 一気読み必至。ダーク・ヒーロー・黒滝誠治が巻き起こす物語の激流に身を任せてください。

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2017年08月15日   お知らせ / 今月の1冊

1、最初の奇跡
 本書は出版から160年後に不死鳥のように蘇った、まさに奇跡の一冊です。
 執筆当時、存命だった関係者の安全のため「リンダ・ブレント」なる偽名で執筆された本書は、読み書きを禁じられていた奴隷のそれとは思えないほど知的な文体で綴られていること、また主人による強姦の横行という非常にショッキングな内容から、「フィクション」とみなされ、忘れ去られてしまいました。
 それから約100年後、アメリカの歴史学者イエリン教授が一通の書簡を見つけたことが、この本にとって第一の奇跡でした。
 その文体に強い既視感を感じたイエリン教授は本書の著者「リンダ」という女性について歴史公証を重ね、彼女が「ジェイコブズ」という実在の奴隷であったことを証明したのです。出版から160年後、1987年のことでした。以後、本書は大きな話題をよび、アメリカで大ベストセラーとなりました。

2、二度目の奇跡
 しかし小さな少女の快進撃はとどまることを知らず、2011年の夏、二度目の奇跡が起きました。サラリーマンである訳者・堀越ゆき氏が偶然、amazonランキングで本書を発見し「これは誰かが翻訳しなくてはいけない、私たちのための本である」そう感じたそうです。
 強い使命感にかられた堀越氏は、翻訳のプロでない自身が訳すことの正統性に悩みながらも、仕事の傍ら夢中で翻訳を続けました。そして2013年、ついに日本でに単行本が刊行されて以降、翻訳ノンフィクションでは異例の売れ行きを記録し、啓文堂大賞を受賞する快挙を成し遂げました。
 黒柳徹子さん推薦、解説は佐藤優さん。全くバックグラウンドの異なるお二方にも共鳴する強い普遍性、そして出会った人すべてに感動を起こさせる強い熱量をもつ本書をぜひご一読ください。

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2017年07月14日   今月の1冊